スウェーデン語(Svenska)とは、スウェーデン王国およびフィンランド共和国の公用語である。
概要
スウェーデン語は、インド・ヨーロッパ語族(印欧語族)のゲルマン語派の北ゲルマン語群に属する言語である。スウェーデン王国の唯一の公用語であるほか、フィンランド共和国(フィンランドは長い間スウェーデン王国の一部であった)の公用語でもある。さらに、これらの国が欧州連合(EU)に加盟していることから、欧州連合(EU)公用語の一つでもある。デンマーク語とともに「東スカンジナビア諸語」を形成している。
ニコニコ動画においては、「ウッーウッーウマウマ(゚∀゚)」と「高らかにオナニー」の原詩といったほうが通りが良い(かもしれない)。
なお、スウェーデン語は方言差が大きいが、本記事ではストックホルム方言が基である「標準スウェーデン語」について説明する。
アルファベット
スウェーデン語には次の29のアルファベットが存在する。
A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U V W X Y Z Å Ä Ö
a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z å ä ö
スウェーデン語で母音を表すのに用いられるのは a e i o u y å ä ö の全9文字。残りは子音を表すのに用いられる。
追加字
上述のアルファベットを見てもらえば一目瞭然であるが、最後の3文字は、英語では(発音記号以外には)用いられない追加文字である。
Å å
まるで a と o とをくっつけたような形をしているが、発音は「オ」。短母音では広めの「オ」だが、長母音では逆に狭めの「オー」。フィンランドの自治州 Åland は「オーランド」諸島。
実は上の○は o ではなく a が略されたもので、a 二つ分という意味があり、a の長母音を表していた。その後発音変化で、現在の「オ」のような発音になった。大文字は長さの単位である「オングストローム(Ångström)」の記号に用いられた。
Ä ä
ドイツ語の「アー・ウムラウト」と同じ文字。発音は、短母音の場合日本語の「エ」とほぼ同じで、長母音ではそれより口を広めにする(狭くするわけではない所に注意)。スウェーデンの都市 Västerås なら「ヴェステロース」。r の前で「ア」に近い発音になることがある(後述)。
Ö ö
ドイツ語の「オー・ウムラウト」と同じ文字。難しい学問的知識はさておき、とりあえず「オ」の口で「エ」と言ってみよう。スウェーデン有数の都市 Göteborg は「ヨーテボリ」などとも書かれるが、「イェテボリ」のほうが近いかも。r の前で「オ」により近い発音になることがある(後述)。
特殊な発音
発音は大体ラテン文字読みっぽいが、特殊な読み方をする組み合わせがある。それらの中で頻出するものを以下に挙げてみる。
g
上記のオー・ウムラウトの例 Göteborg(イェテボリ)に見受けられるように、gに前舌母音(ä, i, y, e, ö)が後続すると、硬口蓋化して[ j ]、つまりヤ行の発音となる(基本的にアクセントを持つ音節のみ)。
gör (~する) 「ヨール」
Gävle 「イェーヴレ」(地名)
また語末の-rg, -lgは「リ」のように発音するが、この g も一応ヤ行子音としての「イ」である。
berg (山) 「バリ」
borg (城塞) 「ボリ」
k
kに前舌母音が後続した場合、日本語の「シ」か「ヒ」の子音、つまり[ ɕ ]か[ ç ]となる。
例外 Kiruna 「キールナ」(地名)・・・スウェーデン北部にある都市、元はサーミ語(ラップ語)の地名。
sk
skに前舌母音が後続した場合、skは[ ɧ ]となる。これはスウェーデン語独特の発音で、非常に目立つ。[ ʃ ](英語のsh)、[x](ドイツ語のch)を同時に発音(?)した子音で、それぞれs, kが変化した音である。同じ発音をする綴りに sj, stj, skj などがあるが、これらはskと異なり、後続の母音にかかわらず常に[ ɧ ]で発音する。
発音は英語のsh(少し舌先を持ち上げて言うシャ)と日本語のファを同時に言う…という感じであろうか。口を少し突き出すといい。
日本語で表記するならば「ファ行」が妥当と考えられる。しかし、現代ではこの音は[ ʃ ](英語のsh)と混同されることがあるため、この音で発音したとしても何ら問題はないと思われる。
この子音の正式名称を日本語では「無声後部歯茎軟口蓋摩擦音」というが、実際にこの部位で発音しているかどうか怪しく、調音部位の特定が困難なため、名称含め論争の的となっている。またそのため、英語においては部位を示さず Sj-sound と呼ばれる事が多い。
反り舌音化
r の次に t, d, n, l, s があると、同化して「反り舌音」になる。反り舌音は、舌の先っぽを歯茎の少し後ろまで持ち上げて言う音で、聞こえは少しこもったような印象がある。ちなみにアメリカ英語の r も反り舌音である(舌は付けない)。
björn (クマ) 「ビョーン」
pärla (真珠) 「パーラ」 普通の l では歯の裏に舌を付ける。
färsk (新鮮な) 「ファシュク」
また、反り舌音化した子音の後さらに t, d, n, l, s が来ると、同じく反り舌化する。
surströmming (シュールストレミング、酸っぱいバルトニシン) 「スーシュトレンミング」
この現象は単語内に限らず、文中の単語の語末+語頭でも起こる。
Du köper stolen (あなたはその椅子を買う) 「ドゥーシェーペシュトゥーレン」
r 前の母音の広音化
アクセントのある音節の e, ä, ö に r (および反り舌音)が続くとき、それらの母音は元々より口が開いた発音になる。e, ä の場合、日本語の「エ」を「ア」に聞こえる所まで広くした[æ](英語のapple)になり、ö はその[æ]で口を窄めた[œ̞](オのような聞こえ)になる。
smörgåsbord (スモーガスボード) 「スモルゴスブード」
母音の注意点
長母音・短母音どっちが現れるかの法則は「アクセントのある音節で、かつ後続の子音が一つ以下のときは長母音、それ以外は短母音」である。が、後続の子音が前述の反り舌音だったり、合成語や語形変化ではこの法則が成り立たないこともある。
また o の読み方が不規則である。日本語で「ウ」と表記する音[uː][ʊ]と、「オ」で表記する音[oː][ɔ]のどちらを表すのか字では分からず、単語ごとに覚えなければならない(後者は å が表す音と全く同じ)。そのせいか、日本語表記で「ウ」とすべきところが「オ」になっている事が頻繁にある。例:スウェーデンの通貨 「スウェーデン・クローナ(Svensk krona)」 の「クローナ」は「クルーナ」がより近い。
そして何より厄介なのが、この四種の母音はすべて「オ」と思って聞くと「オ」にしか聞こえないところである。「ウ」の方の音はたまに「ウ」に聞こえるという程度であり、基本的に音質の「狭さ」で聞き分けるしかない。
スウェーデン語の長母音は時折独特な発音をすることがあり、たとえば å では、「オォワ」という w が入ったような発音になる。また e は頻繁に「イエ」や「エア」のように二重母音化[eː]→[eə]する。はっきり言ってカタカナでの「エー」という表記とはかなり違う発音なので、これを考慮したカタカナ表記もしばしば見られる。なお、必ずなるわけではないので注意。
ö : grön (緑色) 「グレーン」→「グレァン、グルァン」
o(uː) & å(oː) : flodvåg (津波) 「フルードヴォーグ」→「フルゥドゥヴォワグ」
e, ö の場合、IKEA(イケーア)のように母音が後続すると起こらない…かも。
単語声調
スウェーデン語には英語などと同様の強勢アクセントに加え、ヨーロッパでは珍しい声調が存在する。声調というのは、ある範囲(音節や単語)で声の高低のパターンを区別する発音で、中国語の音節声調が特に有名だが、スウェーデン語のものは単語声調で範囲が広く、中国語ほど激しくはない。標準スウェーデン語の声調はすべて山なりで、歌っているような独特の語感を生んでいる。
パターンは単語中で一度だけ声を高くするものと、二度高くするものの二種類ある(方言はこの限りではない)。一度目に高くする位置はアクセントのある音節と同じ位置である。
これらの使い分けが重要な同綴の単語があり、例としてand(野鴨)の定複数形のandenと、ande(霊魂)の定複数形のandenの対立がある。野鴨のandenは、aで声を高くしその後は下げるので、アンデン↘となるが、霊魂のandenでは、deでも声を高くし、跳ねるようにアン↘デ↗ン↘と言う。多分音声を聞いたほうが早い。
前者のパターンは様々な音節数の単語で見られるが、後者は複音節語にのみ現れる。
ちなみに現代ノルウェー語も声調を持っている。大昔のデンマーク語にも存在していたが、こちらはその後Stød(ストゥズ)という喉を絞めるような発音に変化した。
簡単な挨拶など
スウェーデン語はカタカナ転写が難しいのであるが、あまり難しく考えずにカタカナも併記してみた。
- God morgon! (グモロン) おはようございます
- God dag! (グダー) こんにちは
- God kväll! (グクヴェッル) こんばんは
- Hej! (ヘイ) やあ、ハロー
- God natt! (グナット) おやすみなさい
- Tack! (タック) ありがとう
- Tack så mycket (タック ソ ミュッケ) とてもありがとう
- Hej då! (ヘイド) さようなら
- Hej hej (ヘイヘイ) さようなら
初級文法
人称代名詞
単数 | 複数 | |
---|---|---|
1人称 | jag (ヤー) 私 | vi (ヴィー) 私たち |
2人称 | du (ドゥー) 君 | ni (ニー) 君たち |
3人称 | han (ハン) 彼 hon (フン) 彼女 den (デン) それ(enの名詞を受ける) det (デー) それ(ettの名詞を受ける) |
de (ドム) 彼ら、彼女ら |
名詞
en名詞とett名詞
多くのヨーロッパの言語で名詞に性別があるように、スウェーデン語ではen名詞とett名詞に分けられる。
前者を共性名詞、後者を中性名詞ともいうが、現代のスウェーデン語の辞書や教科書にはそれぞれen名詞、ett名詞と表記されていることが多いので、ここではそのように統一する。
en名詞は主に動詞から派生したものや生物関係の単語に多い傾向にあり、約80%がこれに属するのに対し、ett名詞は数が少ない。
この二つの名詞は形だけを見て区別することができないので、個々に覚えていく必要がある。
en名詞の例:
ett名詞の例:
名詞の語形変化
単数形から複数形にする方法として、en名詞の場合は語尾に-orを、ett名詞の場合は語尾が母音で終わるもの(例:hjärta)に対しては-nを後ろにつけるなどがある。
ここでいう不定形とは英語の不定冠詞のついた単語に相当し、定形とは決まった形を意味する。
以下はen名詞のflickaと、ett名詞のhjärtaの語形変化であるが、このような変化をしない単語も多いので注意が必要。
名詞の変化 | 単数形 | 複数形 | ||
---|---|---|---|---|
不定形 | 定形 | 不定形 | 定形 | |
en名詞 | en flicka | flickan | flickor | flickorna |
ett名詞 | ett hjärta | hjärtat | hjärtan | hjärtana |
数詞
数 | 綴りと読み |
---|---|
0 | noll ノル |
1 | en / ett エン / エット |
2 | två トゥヴォー |
3 | tre トゥレー |
4 | fyra フューラ |
5 | fem フェム |
6 | sex セクス |
7 | sju フュー |
8 | åtta オッタ |
9 | nio ニーウ、ニーエ |
10 | tio ティーウ、ティーエ |
11 | elva エルヴァ |
12 | tolv トルヴ |
13 | tretton トレットン |
14 | fjorton フュートン |
15 | femton フェムトン |
16 | sexton セクストン |
17 | sjutton フットン |
18 | arton アートン |
19 | nitton ニットン |
20 | tjugo シューグ、シューゲ |
30 | tretti(o) トレッティ(ウ) |
40 | fyrti(o) フォッティ(ウ) |
50 | femti(o) フェムティ(ウ) |
60 | sexti(o) セクスティ(ウ) |
70 | sjutti(o) フッティ(ウ) |
80 | åtti(o) オッティ(ウ) |
90 | nitti(o) ニッティ(ウ) |
100 | hundra フンドラ |
200 | tvåhundra トゥヴォーフンドラ |
1000 | tusen トゥーセン |
10000 | tiotusen ティーウトゥーセン |
※太字は綴りと一致しない発音で、()内は頻繁に脱落する。このように、スウェーデン語の口語では使用頻度の高い単語で綴りと発音の不一致がみられる。
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