アメリカ最大のアートフェアで日本の工芸をアート作品として出品
世界トップクラスのギャラリーが出展する、アメリカ最大級のアートフェア、「アートバーゼル・マイアミビーチ2024」が12月に開催された。アート関係者、富裕層やセレブたちが集まり、2023年には2000万ドル(約29億円)もの高額作品を売ったギャラリーもあったという、アートのメガマーケットだ。
世界中からギャラリーが集結するアートバーゼル・マイアミビーチ、そのサテライト会場「SCOPE MIAMI BEACH 2024」に、日本から、アート・工芸のプラットフォーム、B-OWNDが参加した。
出品作品は、若手によるポップな工芸作品だ。招き猫にメタリックなスタッズがつけられたデコラティブな磁器、アスリートをかたどった現代博多人形、ろくろで成形したアートオブジェなど。見た目のインパクトと、海外の日本趣味にもアピールするモチーフ。彩色など手の込んだ細やかな技には、観客から「クール!」と感嘆の声が上がる。
そして、ブースに人だかりができた作品が「“Ichinen”ーThe Life Force Every Moment」というタイトルの「茶会」だった。茶人が点前を行い、観客を招いて「分断を調和に変える」というコンセプトのもと、参加型の作品として披露された。
インスタレーション作品・パフォーマンス作品がアートフェアで販売されることは珍しくないが、ここでの作品は、日本文化の一つである茶会である。B-OWNDが出品した作品は、持ち運びできるオリジナルの茶室、茶器一式と掛け軸、そして購入者が茶人に茶会をしてもらえる権利までの一式。高額な価格でアートコレクターによって購入された。
日本の工芸は、プレゼンテーションに失敗し続けてきた
B-OWND(東京)は2019年に設立され、日本の現代工芸に特化したアートプラットフォームとして現在、オンラインと阪急メンズ館に実店舗がある。「SCOPE MIAMI BEACH」へは2度目の参加となるが、プロデューサーの石上賢さんは出展の動機を「世界有数のコレクターやアート評論家たちの目に留まることで、工芸の評価を高めることはもちろん、日本の工芸の、海外での見られ方を変えたい」と言う。茶会は、そのために必要な装置だった。
「日本の工芸は、技術は素晴らしいのに、プレゼンテーションで失敗し続けていたと思います。やきものなどの工芸品を、美術館やギャラリーのホワイトキューブで展示している。それは西洋のアート向けの空間で、工芸の本来の美しさが見えなくなってしまう。茶の湯から派生してきた茶碗などの日本の工芸品は、場とものと人との“関係性の美学”を伴っている。そうした空間ごと輸出することが大事だと思ったんです」