消費電力30%減・保守管理効率化…三菱電機、業務用エアコンで課題解決
三菱電機は環境に配慮するとともに、人手不足の課題解消に役立つ製品展開に力を入れている。5月12日には消費電力量を最大で従来自社製品より約30%改善した店舗・事務所用エアコンを発売する。寒暖差の大きい季節で冷暖房運転の頻度を減らすなどの機能を搭載した。また、モバイル通信による遠隔監視システムも採用しており、空調機の異常検知や冷媒の漏えいの自動診断などにより、保守管理業務の効率化も期待できる。小規模のビルのほか、コンビニや飲食店などの郊外型店舗向けに普及を目指していく。(編集委員・小川淳)
店舗・事務所用のエアコンの「スリムシリーズ」の新製品として4種類を発売する。
新製品では春先や秋口など1日の寒暖差が大きい季節において、冷暖房運転の切り替え頻度を減らす自動運転「デュアルオートモード」を搭載した。三菱電機静岡製作所のパッケージエアコン営業課の毛利泰紀課長は、地球温暖化などによってこれらの季節の日中の寒暖差が大きくなる中、「冷房や暖房を使用する期間が長くなっている」と指摘する。
新機能では、冷房運転用と暖房運転用で二つの温度設定を個別に行うことを可能にした。室内温度に近い設定温度に合わせた運転を自動で行い、1年を通じて「冷やし過ぎ」や「暖め過ぎ」を防止する。毛利課長は「30%ほどの省エネ効果に加え、快適性も向上している」と強調する。

また、エアコンの室内ユニットである4方向天井カセットには、除湿運転の風速制御を改善する機能も搭載した。梅雨の時期など湿度が高いと同じ室温でも不快感が高まるが、新機能により設定温度よりも室温を下げ過ぎずに長時間の除湿運転を可能にした。これにより、冷房運転と比較して消費電力量を最大約20%削減できるという。
また、人手不足が課題となっている保守管理業務の効率化のため、同社の常時遠隔監視システムに対応しているのも特徴だ。室外機にモバイル通信機器を取り付けており、「クラウド経由でユーザーや管理の委託事業者に情報を発信する」(毛利課長)。
日本では冷媒漏えいの削減のため、業務用の冷凍空調機器に対して、3カ月に1度以上の簡易検査が義務付けられているが、2022年8月からIoT(モノのインターネット)による常時遠隔監視システムで代替可能になっている。遠隔で自動診断することで、冷媒管理の手間を減らす。
また、空調機に異常が起きた際には管理者と施工・メンテナンス業者の双方に連絡するほか、異常発生の直前のデータも確認できるため、原因の予測や事前の準備も可能になる。同社ではこれらの新製品を通じて、省エネ性能の向上と保守管理業務の効率化を実現し、二酸化炭素(CO2)削減や人手不足といった社会課題の解決に貢献していくとしている。