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政府と方針一致、学術会議がまとめたAI提言の全容

政府と方針一致、学術会議がまとめたAI提言の全容

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日本学術会議が生成AI(人工知能)を受容し活用する社会に向けた提言をまとめた。生成AIの技術とリスクを整理し、政府と民間にアジャイル(迅速・反復的)なマルチステークホルダー型ガバナンスを提言した。政府のAI法案と方向性は一致する。ただ現在のアジャイルガバナンスはすでに生じている権利侵害や社会の懸念に応えられるほど迅速ではない。今後は多様なステークホルダー(利害関係者)との提言策定が求められる。(小寺貴之)

生成AIを需要・活用する社会に向けた提言のポイント

「これは出発点であり、この提言をベースとしてわが国での議論が深まることになればと考えている」と国立情報学研究所の黒橋禎夫所長は生成AI提言の位置付けを説明する。学術会議の情報学委員会が中心となり提言をまとめた。生成AIや基盤モデルなどの最新の技術動向を解説し、科学や産業への波及効果を示した。同時に技術的な脅威や法的・倫理的懸念も丁寧に整理し、活用推進とリスク対応の両方に配慮している。AI研究者や法務、運用などに携わる人材が俯瞰(ふかん)的に学べる内容になっている。

そして制度設計として、アジャイルでマルチステークホルダー型のガバナンスを提言している。政府にはオープンなルール形成や情報共有を促すことを求めた。事故に対して責任を糾弾するような法的制裁でなく、システムの改善に向けて協力を促す制度設計や救済制度の整備を求めた。民間には、政府や市民などのステークホルダーへ情報を開示して説明責任を果たしつつ、常にガバナンスを改善するよう求めた。京都大学の羽深宏樹特任教授は「世界的に必要性が認識され、各国政府から国際機関、民間団体、学術界に至るまで具体的な取り組みが進んでいる」と説明する。

これらは政府のAI法案とも一致する。法案では罰則ではなく、国による調査と情報開示で権利侵害事案に対応していく方針だ。学術会議の提言審議メンバーは政府の施策立案に協力しており、提言案は学術会議内部で長い査読プロセスを受ける。方向性は同じで時間がかかるため、結果として政府方針を追認する形になった。

ただ政府がAI法案にAI戦略本部の設置を盛り込むなど、迅速に動くための仕組みを作っている段階だ。まだ迅速ではなく、すでに生じている権利侵害への声に応えられているわけではない。迅速化は進めるべきだが、今の路線で受け止めきれない社会の懸念に対して学術会議が指針を示せたかというと心もとない。

学術会議は法人化への議論を通して、政府の審議会とは異なるナショナルアカデミーの役割を提起した。個別分野の枠を超えて、総合的で俯瞰的な提言をすると表明している。これを実践するには人文社会系の研究者や民間のより広いAIステークホルダーと議論し提言に盛り込んでいく必要がある。これは政策立案に貢献しつつ、それよりも広い知見を整理し、社会に選択肢を示す活動になる。黒橋所長は「提言を下敷きに生成AIと教育や生成AIと医療などの提言や報告が作られていく」という。困難ではあるが、学術会議の存在意義を社会に示す機会になる。

日刊工業新聞 2025年03月06日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
今回は学術会議で査読している間に、法案作成が追い抜いてAI法案が先に出てから提言が発出されました。方向性が同じでほっとしつつ、AI法案で取りおいた領域は同じように拾えていません。日本学術会議のより良い役割発揮に向けてでは政府の各種審議会や総合科学技術・イノベーション会議等と異なる役割があることを明記しています。個別分野の枠を超えた総合的・俯瞰的な視野に立った学術の発展の方向性について提案することを独自の任務としました。これを実践するには審議会での議論よりも幅広い視点から検証し、選択肢を整理し、政治・社会的制約がある中で政府が結局どの選択肢を選んだのか、そこから漏れている視点はなにか、社会としていかに補完していくかを示す必要があるように思います。学術にはAIの技術開発や活用だけでなく、AI是非論によって割れた社会や産業構造の変化も含みます。それができるのが学術会議です。記者は課題を探してわざわざ指摘しますが、提言の内容はとても優れています。企業がコンサルに頼むと数千万円かかるはずです。それが無料で国民に提供されています。AIに要約させてもいいですが、教育や人材育成、経営企画など、提言を使う目線で読んでみてもらえるとありがたいです。ちなみに、そんな提言が何十本と出ているのでAIに興味がない方は自分の関心分野を探してみてください。

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