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選択的夫婦別姓で日本はどう変わるのか?「子どもの約50%が反対」専門家が“杜撰な法案”の危険性と指摘するワケ

選択的夫婦別姓で日本はどう変わるのか?

選択的夫婦別姓というと、2025年3月8日の「国際女性デー」に合わせ、市民団体が9日に都内で開催した集会で「男は黙れ 男は黙れ 男が産めるのうんこだけ」のコールで物議をかもしたのが記憶に新しい。集会には社民党首の福島瑞穂氏や前東京都武蔵野市長で立憲民主党の松下玲子氏、共産党の吉良佳子氏ら現職の国会議員も参加した。 立憲民主党の野田佳彦代表は、「国際女性デー」の前日7日に東京都内で街頭演説し、選択的夫婦別姓制度について「この国会中に実現していくことを誓う」と訴えている。賛成派は、個人の自由と自己同一性(アイデンティティ)の侵害、ジェンダー平等の観点からも、法案の成立を目指している。世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数(2024年版)で、日本が146カ国中118位と低迷している背景には、夫婦同姓義務化のような制度が影響していると賛成派は指摘する。

東京あかつき法律事務所 岩本拓也弁護士(56歳)

この問題に詳しい、東京都豊島区南大塚にある東京あかつき法律事務所の岩本拓也弁護士(56歳)に話を聞いた。

「別姓を導入すべき」と考える国民は26%

令和6(2024)年7月7日のJNNの夫婦別姓に関する調査結果 (別姓導入賛成は26%)

 令和6(2024)年7月7日のJNN(日本の民放テレビ局のニュースネットワーク)の夫婦別姓に関する調査結果では、「同じ名字を維持すべき」が21%、「同姓を維持し通称(旧姓使用)を法制化」が47%、「別姓を導入すべき」は26%に留まった。朝日新聞の2024年7月調査だと、「賛成」が73%とかなりの差があるものの、JNNニュースがネットワーク各局の共同制作であることを踏まえると、国民の大半は反対と考えられる。 「たたき台となる法務省案は、平成8(1996)年 に出ています。立憲民主党案では、婚姻時か妊娠時に子どもの氏を決めることになっていますが、夫婦の話し合いで決まらない時は、家庭裁判所で決めることになります。婚姻時や妊娠時など、幸せで絶頂の時に、なぜなくていい対立を生み出すのだろうと思います。家裁の調査官は、どちらの姓がいいかなんて、どういう基準で決めるのでしょうか?」 日本の場合、姓は遡れば、出自の問題にまで行きつく。双方の親も含め、揉める・差別問題にまで発展する可能性は大いにある。 岩本氏は、立憲民主党が推し進める夫婦別姓の問題点は以下にあるという。 1 氏は名字としての役割を喪失し、個人を示すものに変わる 2 子どもの氏を出生時に夫婦で協議して決めるため、子の氏が出生から14日以内に決まらない場合、無戸籍児となる可能性がある。「親子別姓」「兄弟別姓」となる 3 令和3(2021)年の政府世論調査 では、国民の7割が子どもへの悪影響を心配している。具体例としては、「友人から指摘され嫌な思いをする」が79%、「親との関係で違和感や不安を覚える」が60%、「家族の一体感の喪失」が23% 4 別姓導入後、2年に渡り、既に結婚している同姓夫婦も別姓を選択する経過措置が用意されるが、別姓を選択した夫婦は、子をどちらの姓にするかが迫られる 「旧姓使用の法制化をすれば、同姓であることの不便・不利益は、全て解消します。パスポート・マイナンバーカード・運転免許証・各種国家資格などは、旧姓使用の拡大で解消できます。旧姓を併記すれば済む話です。金融機関での口座開設や旧姓での不動産登記・研究論文などの業績が旧姓のまま引き継ぎできないと懸念されますが、政府・自治体・業界団体の統一対応が可能になります」
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子どもの約50%が夫婦別姓に反対
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立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1

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