私はロックなどの歌にはあまり詳しくはありませんが、私の見るところでは歌でもnativeはth音をs音で代用しているようには思えません。
1つだけ最近たまたま見た例をご紹介いたします。先ごろNHKテレビの『ジュークボックス英会話』(教育、3ヶ月トピック英会話、2月22日(木))でDavid Bowieの”Heroes”が取り上げられていました。その歌詞にはthが何箇所か含まれていますが、番組で取り上げられた次の箇所ではBowieの顔の映像が斜めからとられていて、思いがけず彼の口(舌)構えを非常にクリアーに観察することができました。
I, I wish you could swim
Like the dolphins
Like dolphins can swim
Though nothing,
Nothing will keep us together
We can beat them
Forever and ever
Oh, we can be heroes
Just for one day
この部分の歌詞には順に以下の5個のth音が現れます。
1. the 2. nothing 3. though 4. together 5. them
この中で2、3、および4の箇所では舌が上下の歯の間から外に出ているのが明瞭に見えました。(ある高名な英語音声学者は、上下の歯の間から舌先を出してth音を発音するのは一般に米国人であって英国人ではないと言っていますが、この箇所では英国人のBowieの舌先は歯の間からしっかり出ていました。)一方、1と5では舌は見えませんでした。きっと、英語の強弱リズムの関係から1と5では弱化されるために、この2箇所は明瞭なth音の口(舌)構えにならないのだろうと思われますが、かといってこれらの部分でも私の耳にはs音に聞こえることはありませんでした。
この番組は人気がありますので、録画されている方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。英語の歌をご自分でお歌いになる方でしたら、一度この部分をぜひご覧になられることをお勧めいたします(Seeing is believing!)。
英語の発音学習用にBowieは発音しているわけではないにもかかわらずあまりにも発音教本どおりなのに私は驚いてしまいました。