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狙撃銃

登録日:2009/05/27(水) 19:31:45
更新日:2023/12/02 Sat 01:09:55
所要時間:約 9 分で読めます




狙撃銃とは、銃器の一種である。


概要

文字通りモノを狙撃するために使用する銃器。
基本的にどんな鉄砲も「狙って、撃つ」ものだが、軍事・警察的に狙撃と呼ぶ場合、後述するように「特別遠い所を狙うために特別の精度に整えられた銃」という相対的な意味合いがある。

現実で歩兵さんが持つ銃というのは、しっかり狙っても遠くを撃ち抜くのは難しい。
機械的にどうしても「ターゲットがこれ以上遠い場合、照準線通りに弾が飛ぶとは保証できない」という距離があるからだ。
それ以上の「命中精度」を要求すれば、整備は厳しくなり故障も増え、大勢が持つ武器としては適さない。
なので、主な歩兵さんが持つ銃より遠くを狙い撃てる銃と、それの扱いに(くわ)しく通じた優秀な射手と、「それを何に使うか」という戦術が別個に生まれた。
狙撃(スナイピング)狙撃手(スナイパー)、そして狙撃銃(スナイパーライフル)の誕生である。

狙撃銃はスナイパーライフルと呼ばれることもあるがこの『ライフル(Rifle)』という言葉は銃身内に螺旋状に刻まれる溝(腔旋)、またはこの溝が施された銃(ライフル銃)のことを指す。←→滑腔銃
もともと火縄銃やフリントロック等の前装式銃の装填時に銃身内の掃除を省くために考案されたが、意外にも弾丸にジャイロ回転がかかり命中精度が高くなることから普及した技術である。
ライフリングされていれば拳銃もライフル銃と言えなくもない。


戦争ものや戦闘もののゲームにはほとんど決まって登場し、高い射程や攻撃力を誇る代わりに、スコープを覗かないとまともに当てられない、連射が遅い、弾数が少ないといった特性が与えられる場合がほとんど。
射程は無限の場合が多く、スコープを覗いてきっちり狙えば精度は高い。

有名なメーカーとして、ウィンチェスター、レミントン、スプリングフィールド、バレットなどがあげられ、
狙撃銃として名を馳せたものに、M1873、M1ガーランド、M700、ドラグノフ、PSG1、M82(正確には狙撃銃でないものも含む)などがある。
アニヲタ的にはソードアート・オンライン第3話「ファントム・バレット」で活躍したウルティマラティオ "ヘカートⅡ"や、L115A3『サイレント・アサシン』も有名どころだろう。

後述の選抜射手向けライフルなどは、量産されたアサルトライフルやバトルライフルから選抜した個体を使う場合がある。
歩兵向けライフルは何百何千と作られる量産品であるからして、その加工・仕上がりにはバラツキというものがある。
その結果、突発的に非常に高精度に狙える個体が生まれる事があるのだ(俗に「1000にひとつ(one in a thousand)」と呼ばれる)。
そういう銃を改修して狙撃用に仕立てるのである。
アメリカのM14、ドイツのH&K G3にそういうバリアントがメーカー純正として存在する。実は前述のPSG1もこの部類。
かの超A級狙撃手が使っているM16も、こういう「大当たり個体」をさらにチューンしているのだと思われる。


種別

狙撃銃はボルトアクション(単発式)が主流だが、セミオート(半自動)も存在する。

【ボルトアクション】

一発を撃つごとに排狭、再装填、撃発準備を全て手動で行う。
詳しく記載すると、まず(既に装填された)一発目を撃つ。
このままでは排狭もされず、ただ薬室に空薬莢が残るだけ。そこで銃右側に設置されているボルトレバーを起こし、そのまま手前に引く。
するとボルトが開放され、排狭と同時にファイアリングピンがコックされる。
今度はそれを押し、ボルトを閉鎖させると同時に次弾が装填され(次弾がないとボルト閉鎖ができないものもある)、
ボルトレバーを元の位置へ戻すことでボルトが完全閉鎖されて引き金を引けるようになる。

つまり一発撃つごとに
  1. ボルトを起こす
  2. ボルトを引く
  3. ボルトを戻す
  4. ボルトを閉鎖する
という作業で排莢・次弾装填作業を手動でしなければならない。
だが銃身から撃発装置までが一本の筒と構造がシンプルであるため、機械面からの誤差や動作不良が起こりづらく高精度を期待できる。
また、ボルトを操作しない限り薬莢を現場に落とさないですむのでその点でも暗殺に有利。
火薬量を増やして破壊力を高めることも可能。

全体の部品が少なく安価で製造することができ信頼性と簡易性を持ち合わせるが、装弾数の低さと速射性能の低さがネック。
もっとも、詳細は後述するが、速射性能に関しては単純に狙撃手の技量ないし経験不足ではないか、という意見も存在する。


歴史的には19世紀に開発された由緒ある方式である。
同時期に生まれたレバーアクションと共に、それまでの前装式(先込め式)の銃から後装式(元込め式)連発銃への転換を促した。
その後はボルトアクションが主流となっていき、第二次世界大戦期までは狙撃用に限らず大半の歩兵用小銃がこの形式であった。
戦後になると一般歩兵用としては突撃銃に追いやられていったが、狙撃銃としてはいまだ非常に優秀で堅牢な方式であり、現在でも警察や特殊部隊において使われている。
白い死神が使っていたのもこっち。

レミントンM700、モシンナガン、スプリングフィールドM1903A4などが有名。




【セミオート】

排莢と次弾装填を機械仕掛けで自動的に行う銃。速射性に優れ、装弾数も大抵はボルトアクションより多い。
だが機構の複雑化や精密部品の多さのため信頼性がボルトアクションより劣り、メンテナンスの手間や扱いの悪さから来る精度の低下を否めない。
狙撃銃としての精密さを欠かないために部品を選別し、熟練の技士につくらせると今度はコストパフォーマンスの悪さが露呈する。
PSG1のように高精度を誇る狙撃銃もあれば、ドラグノフのように近距離での狙撃を目的として内部構造を若干ラフにしたものもある。
大抵は正確さを上げるために重く設計されており、運搬が面倒である。

また、そもそもセミオート狙撃銃は対テロ等のある程度近い距離での速射を重視する環境で重要視されてきた機構である。
が、ある程度熟練してきても長距離からセミオートの速射性能を活かせるだけの連射でポンポン狙撃し続けるなんてほぼ不可能であり、速射という観点から言えば宝の持ち腐れになり易い。
ここぞという時にいちいち排莢作業をしないで済むという心のゆとりも極めて重要なのだが、
「結局訓練積めばボルトアクションのが良いんじゃね?」
という突っ込みは常に付いて回る。

とはいえ、現実に大惨事(ミュンヘンオリンピック事件)が起きてしまった以上こういう狙撃銃とその使い手がいないとマズイ状況は有り得るというのも厳然たる事実。その分狙撃手を増員するってのも現実的な話ではないし。

H&K PSG-1、ドラグノフ、バレットM82A1M(M107)などが有名。

  • マークスマンライフル(DMR)
DMRはDesignated Marksman Rifleの略で、その名の通り選抜射手(マークスマン)と呼ばれる兵士向けの銃。
選抜射手は他に歩兵と共に行動し、歩兵の主力であるアサルトライフルの射程外の敵を排除する役割を担う。つまり中距離から速射でポンポン狙撃することを求められた兵士である。
マークスマンライフルは歩兵とともに行動する選抜射手が扱う以上、歩兵とある程度弾丸を合わせた上で多数の目標に対しても対応できるようにある程度の連射性を持つことが要求されている為、
アサルトライフル用の弾丸を使用し、800m程度までは有効な射程&精度を確保しながら、セミオートで連射性を確保する、謂わばアサルトライフルと狙撃銃の中間に位置する銃となっている。

M14ベースのM21狙撃銃、M14 DMRやAR10ベースのSR-25などのバトルライフルベースのものや、M16ベースのSDM-RやM16A2E3といったアサルトライフルベースのものも存在する。
上述のドラグノフもコンセプト的にはこちらに近い。
また、前述のようにSCAR-Hのようなアサルトライフルの精度の良い個体にロングバレルやスコープを付けてマークスマンライフルとして運用することもある。


狙撃に関して

狙撃は大抵、狙撃手と観測手(スポッター)の2人がチームを組み行う。これに護衛が付く場合もある。

狙撃の際に注意することは、
  • スコープの点検
  • 弾道上の湿度
  • 風速
  • 気温
  • 状態

等である。
これらをまったく考慮せずにレティクルをそのまま信用するとこちらの位置を晒すだけである。
有効射程は基本的な狙撃銃(7.62mm弾)では300mから800mである。この幅は銃の精密さで上下するためである。
例えばドラグノフは近接狙撃を主に速射性を重視したため、精密さはそれほどでもない(だが慣れた兵士ならば600m狙撃などもこなすらしい)。
確実なヘッドショットを狙うなら500m程度が限界だろう。
敵に相応のダメージを与えるだけなら1km向こうからでも充分である(ただできる人間はそうそういない)。

大体の狙撃銃の弾丸は7.62mm弾などの一般的なライフル弾なのだが、大口径の12.7mmを利用する銃はアンチマテリアルライフル(対物狙撃銃)と称される者も存在する。
重い大口径弾の方が風等に影響されにくく基本的には弾道特性が優秀であり、長距離での命中率を見込めるからだ。
アンチマテリアルライフルは戦車に閉じ籠っている敵兵を戦車ごと撃ち抜けばいいという概念から作り出され、ハイジャック犯に対する遠距離狙撃にも用いられ、
航空機の分厚いガラスをぶち抜いてなお人間をミンチにする威力を保有している。

傑作重機関銃M2は12.7㎜弾を使用するが、これにスコープを載せて2㎞を超える狙撃成功例がある(普通のライフルは700m程度)。
M2は本体がとても重く反動の軽減を見込めることなどが要因。
もっとも個人で運用できる兵器ではないので、あくまで現場レベルで狙撃もできるという程度のようだ。

ビッグフィフティと呼ばれる50口径対物ライフル(アンチマテリアル)では800m狙撃となるとオーバーキルとなり得る。
これは2km向こうからでも人体をまっぷたつにできる程度の破壊力があるからである。
航空機の窓を数百m向こうからぶち抜いてなお人間を殺せることからハイジャック犯を撃つ際にも使われる。
たまに対物ライフルを人間に撃つことはハーグ陸戦条約違反という意見もあるが、俗説の域を出ない。
「不必要な苦痛を与えない」という条項にひっかかるという説だが、前述通り人間に向かって撃ったら苦痛を与える前に即死する。

ライフルの弾は音速を超えるが、周囲の状態によっては発射から着弾までを肉眼で確認できる。
ちなみに音速を超えても500ヤード(≒460m)も離れると着弾までに一秒弱のタイムラグがある。



狙撃に際しては銃上部に倍率スコープを取り付ける。
倍率自体は十倍や五十倍など高倍率なものもあるが、任務によって使い分けたり好みがあり、倍率はこれがいい、という明確な基準は存在しない。
(かの有名なシモ・ヘイヘはオープンサイトで狙撃していた。レンズの光の反射は自然には存在しないものなので、それで敵にバレるのが嫌だという理由なのだが…。)

ゲームに見られる低倍率、高倍率の切り替えスコープもあるが、これは好まれない。
高倍率にしたとき、レティクル(スコープに表示される十字線)が太くなり、それによって狙いが定まりにくくなるためだ。
なおゲームでは引き金を引くと、ほぼノータイムでレティクル中央を攻撃できる。
しかし現実では重力、手振れ、風、湿度、気圧、火薬の種類や劣化、空気抵抗、気温などの影響で直進どころかまともな放物線すら描かないことがザラであり、
射手は経験や推測でそれらを考慮してレティクルをずらさねばならない。
そのため、遠距離狙撃では銃の性能のみでなく、射手の技量も含まれてくる。
そのあとの目標の沈黙などの確認もしなければならないため、単独での狙撃はごくまれであり、普通であれば観測手が同行する。
護衛として、アサルトライフルを持った兵士がいることも。


狙撃手は耳が潰れてしまう恐れがあるため耳栓、もしくはフラッシュハイダー(滅炎器)を装着する。
雪原や見晴らしのいい場所で狙撃を行う場合、フラッシュハイダーは必需品とも言える。
なぜなら、そのような場所で狙撃をするとマズルフラッシュ(発光)が目立ち、敵に居場所を教えるに近い行為だからだ。
このマズルフラッシュは狙撃手の目に対しても負担になるため、その保護のためスコープも接眼レンズ側の方が太くなっていた。
しかし近年の対策が施されたものは逆に対物レンズ側の方が太くなっている。

ちなみにスコープは一度取り外すだけで大幅に照準が狂ってしまう。
そのため、零点補正(何mでレティクル中央を狙撃できる、という上下調整)をその都度行う必要性がある。


ディスカバリーチャンネル(CS265・266)で放映されている『フューチャーウェポン 21世紀戦争の真実』によると、
今日ではあだ名が13の方が欲しがるであろう、アサルトライフルの速射性と狙撃銃の精密性を兼ね備えた銃も開発されているらしい(名前を忘れてしまった)。



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最終更新:2023年12月02日 01:09