FL Studioのメリットとデメリット
FL Studioを使用することで得られるメリットと、他のDAWと比較した際のデメリットについての説明をするページです。
初心者から見たFL Studioを使う10のメリット
DTM初心者がFL Studioを使うことで得られる10のメリットをまとめました。
メリット |
補足 |
無料版でも機能制限が少ない |
FL Studioを開いたままにすれば、無期限でほぼすべての機能を試して完成まで持っていくこともできます |
アップデート費用がゼロ |
他のDAWでは「必要としない機能のアップデートに数万円の高い費用を支払う」必要がありますが、FL Stduioのアップデート費用は生涯無料です。 これは「ユーザーにお金の支払いを要求するのは、ユーザーがその機能を欲しいと思ったときだけにする」という企業理念があるためです |
PCの性能が低くても動く |
FL Studioは低性能のPCでも動作することを想定して設計されているため、比較的軽快に動作します |
付属プラグインが多い |
高品質なシンセやエフェクター、ピッチ補正ソフトが標準で数多く搭載されています |
デモソングが多数付属している |
デモソングのプロジェクトを解析して作曲やFL Studioの使い方を勉強できます。 また無償・有償のプロジェクトファイルが数多く配布・販売されており、それらを解析して勉強することもできます |
チュートリアル動画が多数ある |
特にEDM系になりますが、FL Studioは世界中で使われているため海外のチュートリアル動画が多数存在して無限にスキルアップできます |
キーボード・マウスだけでも作曲できる |
マウスとショートカットキーを使った作曲に最適化された操作性となっています |
サンプル素材を無限に使える FL Cloudが1ヶ月間無料 |
大量の素材が付属してくるのと同じで、これらの素材だけでも無限に曲作りしたり、音楽ジャンルの分析ができます |
耳コピをやりやすくする機能が多数存在する |
Stem分離でパートごとに音を分離したり、ピッチ補正ソフトでピッチを解析できるので、耳コピがやりやすいです。 これらの機能は楽曲分析にも役立ちます |
UIのアニメーションが心地よい |
ゲームのように使っていて楽しくなるUIのアニメーションが入っています。 これに慣れてしまうと他のDAWやプラグインを使ったときに物足りなく感じるほどです |
1. 「無料」でプロジェクトを保存する以外のすべての機能が「無期限」で使える
FL Studioは有償のソフトウェアですが、体験版でも
「プロジェクトを保存する」以外のすべての機能を「無期限」試用することができます。 (
※一部例外あり。詳しくは「
体験版でできないこと」を参照)
つまり無料でも自分に合うかどうか好きなだけ試すことができます。またFL Studioを開いたままであれば曲を完成するまで作り込んで、MP3などのオーディオデータへの出力までできます。保存ができないため大きなプロジェクトは作れませんが、無料で一通りの曲作りができるため、最初に大きなお金をかけられない初心者にこのメリットは大きいです。
2. 低価格帯のDAW + ライフタイムフリーアップデート
FL Studioはいくつかエディションがありますが、たいていの場合は 3万円程度の "Signature Edition" で事足りるため、競合する DAW よりも比較的安い部類に入ります。そして、
バージョンアップによる定期的なアップデートに対する費用が "0円" となる「
ライフタイムフリーアップデート」を採用しているため、余計な追加コストを基本的に必要としないのが特徴です。
またライセンスに対する考えも比較的ゆるく、購入者が個人で使用するなら複数台のPCに入れても基本的に問題ありません。例えば自宅PCと持ち運び用のノートPCにインストールすることも可能です。
3. 起動が速い。低スペックのPCでも動く
普通のDAWは起動までに色々な初期化(プラグインの読み込みなど)を行うため起動に時間がかかるのですが、FL Studioは瞬時に起動するため創作意欲を奪うことがありません。
2023.10.19時点の動作環境は以下の通りです。
OS |
Windows 10(64ビット), Windows 11 |
macOS 10.13.6 High Sierra 以降 |
CPU |
(Windows) Intel もしくは AMD をサポートします。ARM ベースのCPUとの互換性はありません |
(Mac) Intel もしくは Apple Silicon をサポートします |
メモリ |
4GB 以上のRAM |
他のDAWがメモリ8GB以上やマルチコアを要求するのに対して、FL Studioは比較的低めの動作環境であるため「作曲するためにPCを新しくしなきゃ…」というケースも少ないと思います。(「◯◯というDAWは動作が重いから FL Studioにしたら快適で良かった」というユーザーの声もたまに聞きます)
もちろん同時に重たいプラグインを多く使用する場合は動作が不安定になるのは、どのDAWでも同じです。その場合は性能の良いPCに買い替える必要があります。
4. 付属シンセが多い + 付属エフェクターの質が良い
FL Studioに付属するシンセは多くプリセットも充実しています。例えば
Sytrusというシンセはとても良い音で
愛用しているユーザーも多いのですが、標準のプリセット数が1000以上存在します。「
FLEX」も人気の高いシンセで今どきの音が出るプリセットが1000以上あって、普通に買うと1~2万円ぐらいするのでは…と思うほど高品質なシンセです。
- ※有料プリセットを600ほど買っているので画像では数字が大きいですが、無料プリセットだけでも1000以上あります。
そしてサンプル音源も数多く付属していて、使い始めてすぐに曲作りできるようになっています。
また付属のエフェクターもユーザーから「質が良くて視認性が高く、使いやすい」と評判が高く、外部のプラグインをあまり使わず付属のエフェクター中心で曲作りをするユーザーも多いようです。例えばSignature以降には、
Gross Beatという スタッター、ゲート、スクラッチといったエフェクトを簡単に作れる高機能なエフェクターが付属しています。さらに
Newtoneという高機能なピッチ補正ソフトが付属していて、基本的なピッチ補正であればこのプラグインのみで完結できます。
DTMをしている方は一般的に「外部プラグインを中心とした作曲」を行う傾向が強いですが、FL Studioは優れたプラグインが多数付属していることから「標準プラグインを中心とした作曲」を行う方も一定数見られるのが特徴です。
5. デモソングのプロジェクトが多数付属している
FL Studioにはプロ・セミプロが作成したプロジェクトが付属していて、エフェクトの使い方やMIDIの打ち込みなど、参考になる情報が多く得られます。
- ブラウザから "Demo projects > Demo songs" に 30を超えるデモソングが入っています
そして無償・有償含めて、プロジェクトを公開している方も多いため、それらをダウンロードして楽曲作りの参考にすることもできます。例えば
MK / Shadw氏の「ジャンル別楽曲制作解説」ではプロジェクトファイルを格安で多数配布されていて、音作りやミックスをどのような設定にしているのか直接パラメータを見れるのでオススメです。また、
W.A.Productionからプロが作成したFLPファイルを無料でダウンロードすることもできます。
さらに、プロジェクトのバージョン互換性が高く、古いバージョンのプロジェクトファイルでもたいてい開くことができるのも特徴です。
6. チュートリアル動画が大量にある
25年以上の歴史やEDMで数多く使われている実績などもあり、Youtubeなどにチュートリアル動画が大量にあります。(YoutubeでEDMの作曲動画を検索するとかなりの確率で FL Studioが使われています)
その多くは英語音声ですが、DAW は動画の手順通りに操作するだけで近い音が出せますし、日本語字幕へ翻訳することもできるので、気合さえあれば無限にスキルアップできます。
FL Studio以外を含めた動画の
リンクは以下のページにまとめています。
個人的な観測範囲ですが、Trance, Trap のチュートリアルは FL Studioの使用率が高めな印象です。
動画の探し方は「ジャンル名+FL Studio」というワードの他にも「ジャンル名+Free+FLP」で探すと、プロジェクトファイルが配布されている動画が見つかります。
7. 直感的な操作でPCキーボード・マウスだけの作曲も十分できる
作曲するには楽器が必要と思われがちですが、EDM向きという特性上、楽器は必須ではなく、またFL Studioはピアノロールの操作が快適 (公式によると業界最高峰のピアノロール) なこともあり、マウス操作(+PCのキーボード)だけで作曲を完結させることも十分可能です。
FL Studioの
ピアノロールが優れている点としては、ノートの入力が快適かつ素早くできることです。
例えばFL Studioでは「
左クリックでノート配置、右クリックでノート消去」というように「ツールの持ち替えなしでも演奏データを作れる」という独特の操作性が採用されています(通常のDAWは、消しゴムツールに持ち変えたりなど1ステップ多いです)。
僕がFL Studioを使う一番の理由は、ピアノロールの便利さにあります。
例えば消去したいノートがある場合、右クリック一発でデリートできるので、
作業がサクサク進められます。
ささいな部分かもしれませんが、ここだけを取ってもかなり直感的だと思います。
FLStudioを使って「マウス」と「ヘッドホン」のみで、海外の大手レーベルと契約するような楽曲を作られた方もいます。
Rock oN : ちなみにFL Studioを使う時、MIDIノートの入力は何でやっているんですか?
Pharien : 全部マウスでやってます。MIDIキーボードを使った事がないんですけど、
多分、絶対に苦手だろうなって思うんですよね(笑)。
オーディオインターフェースも使ってないので、パソコンとヘッドホンとマウスだけです。
家で集中出来なくてカフェとか外で作業する事が多いんです。
どうしても身軽な感じになっちゃいます。
またPCのキーボードを鍵盤に見立てて演奏できるモードもあるため、MIDIキーボードがなくてもちょっとした演奏ならできてしまいます。
タイピングピアノモードを有効にすると、このようなレイアウトになります。これは、25鍵のMIDIキーボードを使うよりもPCキーボードの方が広い音域 (32鍵相当) を入力できてしまうこととなります。
そのため、MIDIキーボードは最初はなくても問題なくなるので初期投資が少なくて済みます。(さらに設定を変えると4オクターブ以上にもできるので、ある意味49鍵以上になります)
8. サンプル素材に無限にアクセスできる "FL Cloud" が1ヶ月無料で使える
v21.2から始まったサービス
FL Cloud。これは高品質なループ素材やワンショット素材を無限にダウンロードできるサービスです。
作曲のヒント/作曲の最初の一歩を進める方法にも書きましたが、ループ素材を使うと作曲を圧倒的なスピードで進めることができます。
有料のサービスではありますが、「
1ヶ月お試しで使える」のでループ素材を使った作曲がどれほど効率的であるかを試すことができます。
また、FL Cloudの特徴として、素材が「無制限」にダウンロードできるメリットがあります。これはクレジット数が気になって素材を購入しづらい初心者におすすめのシステムです。
9. 耳コピをやりやすくする機能がいくつかある
作曲能力を向上させるには、耳コピの重要度はかなり高いです。(※耳コピとは、既存の曲を耳で聞いてメロディーやリズムをコピーすること)
FL Studioでは耳コピをしやすくするツールがいくつか付属しています。
初心者にとって難しい「ベース音が聞き取れない」という問題も「
Stem分離」を使うことで独立したオーディオクリップに分割できるので、それ以外をミュートすることで比較的耳コピがやりやすくなります。
もう1つが
Newtoneという標準プラグイン(Signature以降に付属)を使った「
オーディオファイルをMIDIに変換」する機能です。和音やピッチの揺らぎが大きいパートは正確に変換できませんが、主要な音は拾えるので耳コピの時短になります。
10. まるでゲームのようにUIがアニメーションしまくるので使っていて楽しい
ノートの消去エフェクトや項目がスライドしたり、明滅の中間アニメがあるなど、ゲームで使われるようなUIのアニメーションがふんだんに取り入れられているため、使っていてとても気持ちよく操作できます。
SendのルーティングをON/OFFしているだけなのに、やたらとかっこいい光り方をしてくれます。
細かいところでは、ノブのパラメータをリセットするときに緩急のついたアニメーションが入るのも、他のDAWではなかなか見ないような演出です。
設定画面がスライドアニメするDAWは、今後も登場することはないでしょう…
メリット番外編
初心者にはあまり関係ありませんが、中級者以上に向けたFL Studioのメリットを書いていきます。
ライセンスが比較的(かなり)ゆるい
他のDAWでは別のPCに移行するとディアクティベーションが必要だったり、インストール可能なPC台数が制限されていたりとライセンス管理は厳しめです。ですがFL Studioはアカウントでログインするだけで環境を移行できたり、個人で使用するのであれば何台でもインストール可能です(ただし不正利用は当然NG)。
以下、DAWごとのライセンス管理についてです。
DAW |
認証方法 |
インストール可能なPC台数 |
複数PCでの 同時利用 |
ディアクティベート (※1) |
譲渡 (※2) |
FL Studio |
オンライン認証 |
無制限 |
o |
不要 |
x |
Logic Pro |
オンライン認証 (Apple ID) |
「5台」までインストール可能。 |
o |
必要 |
x |
Studio One |
オンライン認証 |
アクティベーションは「3台」まで |
x |
必要 |
o (有料 ※3) |
Cubase |
オンライン認証 |
アクティベーションは「3台」まで |
x |
必要 |
o |
Ableton Live |
オンライン認証 |
「2台」のPCまでインストール可能 |
x |
オーソライズの 解除申請が必要 (※4) |
o |
- (※1) ディアクティベートとは、利用可能な台数を超えたときに使わなくなったPCのアクティベートを解除して利用可能台数を増やすこと
- (※2) ライセンス譲渡可能である場合、そのDAWを使わなくなったときに自分のライセンスを別のユーザーに売却・譲渡できます
- (※3) Studio Oneのライセンス譲渡費用は $25 です (2024.3.31現在)
- (※4) Ableton Liveは利用可能台数が少なく、ディアクティベート手続きを行うのにメールでの申請が必要となります
ライセンス管理の緩さは、
FL Studio >> Logic Pro >>(越えられない壁)>> Studio One = Cubase >> Ableton Live
といった印象です。
ソフトウェア開発において、ライセンスのセキュリティを堅牢にするほど管理コストが上がってDAWの価格に影響します。FL Studioが比較的安い価格に抑えられているのは、ライセンス管理の緩さも影響している気がします。
なお、Cubase, Studio One, Ableton Liveはライセンスの制限が多いですが、そのぶんライセンス譲渡が可能というメリットもあります。
機能追加やアップデートが頻繁に行われるので、アップデートが楽しみになる
FL Studioは長い歴史を持つDAWですが、アップデートが頻繁に行われます。
以下は
Lifetime Free Updatesのページに記載されているアップデートの頻度です。
すべては網羅できていないですが、2014年からのFL Studioの更新の歴史です。
年 |
アップデート回数 |
補足 |
新規プラグイン |
2014年 |
3回 |
64bit対応 |
|
2015年 |
7回 |
v12リリース。ベクターグラフィックスに対応。 タイムマーカー実装。ゴーストチャンネル実装 |
|
2016年 |
4回 |
リアルタイムオーディオストレッチ対応 |
Transister Bass, Transient Processor |
2017年 |
4回 |
|
Fruity Delay 3 |
2018年 |
8回 |
v20リリース。macOSを正式サポート。 変拍子のサポート・アレンジメント機能の追加。 FL初の専用MIDIコン「Akai FIRE」発売開始 |
|
2019年 |
5回 |
SoundCloudへのエクスポート。 SytrusにOlbaidのフリーPreset追加。 複数のプレイリストを一度にレンダリング |
FLEX, Distructor |
2020年 |
8回 |
MIDIスクリプト対応。 FL Studio MobileとCloud同期のサポート |
Newtime, VFX Envelope, Frequncy Spliter, Tuner |
2021年 |
5回 |
Apple Siliconサポート。 Stretch ModeにStretch Proが追加。 FLkey 37, FLkey Miniが発売開始 |
Pitch Shifter, Vintage Chorus |
2022年 |
4回 |
v21リリース。 オーディオの簡易フェード機能。テーマのカスタマイズ。 ブラウザのタグ付け機能。SamplerにStreatch Proが追加 |
Luxeverb, Vintage Phaser, Multiband Delay, VFX Sequencer |
2023年 |
7回 |
波形のカラー表示。ピアノロールでのスケールスナップ。 Stem分離。FL Cloud。 FLkey 48, FLkey 61が発売開始 |
Hyper Chorus, Kepler |
2024年 |
5回? |
日本語対応。バージョン表記が西暦に変更。 コード進行生成ツール。 FL CloudにW.AやUVIのプラグインが追加 |
Kepler Exo, Spreader, Low Lifter, Transporter |
過去10年の年平均アップデート回数は "5.5回" で、おおよそ "2~3ヶ月" ごとに行われています。またバージョンアップ時にはバグFixだけでなく、新機能や新しいプラグインがよく追加されます。
最近の例としては、v21.2.2 のマイナーアップデートにも関わらず、
Keplerという新しいシンセの追加や
Stem分離機能が追加され、
FL Cloudという新しいサービスが開始しました。v24では
コード進行生成ツールが実装されました。
そしてFL Studioはライフタイムフリーアップデートを採用しているので、バージョンアップ料金は無料です。
有料のエフェクターを再現したPatcherのプリセットで用意されている
FL Studioには
Patcherという標準プラグインがあって、これは複数の楽器やエフェクターを自由に組み合わせられるものです。
例えば、以下は音をデチューンしてレイヤーするエフェクターのプリセット (X WiseLabs > 1K Detuner) です。
これを見て「難しそう…」と思うかもしれませんが、実際に使うときにはつまみを回すだけでかかり具合を簡単に調整できるUIが用意されています。
そして、Patcherのプリセットには有料で販売されているエフェクターを再現したものもあり、それら有料エフェクターを買わなくても済むというメリットもあります。
プリセット名 |
説明 |
元ネタ |
元ネタの価格 |
X Xenofish > Disperser |
Gainを変えずにPitchを変えたりできるオールパス・フィルター。 トランジェントシェイパーのようにアタック感を調整したり、 Psytrance特有のPitchの高いKickを作りたいときなどに使えます |
Kilohearts Disperser |
$59 |
X Youlean > Freq Glue – General / Mastering |
耳障りな音 (突出した倍音) を自動でカットしてくれる レゾナンスサプレッサー&ディエッサー |
soothe2 |
€199 |
X Youlean > Humanizer |
ローファイ系でよく使われるピッチと音量に揺らぎを出すエフェクター |
RC-20 Retro Color |
$99.95 |
X Youlean > Vocal Rider |
ボーカルの音質変化なしに、音量を一定に整えることができる |
Vocal Rider |
$249 |
X Youlean > Multiband Sidechain |
特定の帯域でぶつかる音を自動で整理するマルチバンド・サイドチェイン |
Trackspacer |
€39 |
もちろん有料のエフェクターの方が多機能でUIが使いやすいなどメリットはありますが、それなりのクオリティで良いならPatcherのプリセットでもなんとかなります。
他のDAWとの併用に向いている
作曲されている方の中には、複数のDAWを併用していることもあります。そういったときに、FL Studioは他のDAWと組み合わせて使うのに向いています。
以下、併用に向いている理由です。
- 他のDAWからVSTとして呼び出せる
- 「ライフタイムフリーアップデート」なので、他のDAWがメインになっても更新費用を気にしなくて済む
- FLのプロジェクトファイルをそのまま開ける (Bitwig Studioのみ)
一番大きいのが、
他のDAWからVSTとして呼び出せることです。
もし FL Studioから別のDAWに移行した際に、FL Studioの機能を再び使いたいときには、VSTとして呼び出すことができます。
例えば Ableton Liveは FL Studioと比較したときに優れた点がいくつもあり、FL Studioからの移行先として選ばれやすいです。
その一方、FL Studio独自 (唯一無二!) のワークフローを気に入っている方も一定数存在し、移行した後でも FL Studioを併用しているケースもよく見られます。そういったときに VST として機能を呼び出せる FL Studioは DAWの併用に向いていると言えます。
上記の理由から「FL Studio使ってみたけれど合わなかった」という場合でも、ストレスなく別のDAWに移行できます。
公式フォーラムで質問したり不具合報告したり、要望を出したりできる
FL Studioの公式フォーラムは活発に議論が行われていて有益な情報が得られます。(※基本的に英語です)
また不具合報告をしたり要望を出したりもできて、運が良ければ要望を実現してもらえたります。
個人的な話ですが、テキストからコード進行を入力するスクリプトに "sus4" や "add9" が対応されていなかったので、要望したら対応してもらえた…ということもありました。
オートメーションのカーブが描きやすい
昨今の楽曲では
オートメーションを描いてカットオフなどで展開を作ることが基本となっています。
やや操作方法に癖があるものの、使い方を覚えてしまうととても快適にオートメーションを作れます。
例えば標準プラグインの場合は、右クリックして「Create automation clip」で簡単に作成が可能となっています。
ミキサートラックに波形が直接表示される
あるエフェクターの解説動画を見ていたときに「このエフェクターを使うと
ミキサートラックの波形が見れて便利ですね!」という説明がされていて、「??? FLのミキサーには常に波形が表示されているのですけど…」と違和感を感じました。
FL Studioだと、このようにミキサートラック一覧に常に波形が表示されます。これは時間軸に対しての波形の変化が視認しやすく、さらにdBのピークも色分けされていて、とても便利な機能です。
そこで調べてみたところ、他のDAWのミキサーだとトラック一覧に直接波形が表示されているものはなく(トラックの詳細からは見られるものがある)、これも FL Studioの独自性なのでは、と思って紹介しました。
ちなみにミキサーのここをクリックすると見慣れた dBメーターに表示を切り替えられます。
FL Studioの欠点
日本語が未対応 →2024.4.13追記:日本語化対応されました🎉
2024.4.13現在、日本語化対応が正式に行われました。
日本語表示するには、"OPTION > General settings" から "Language" のところを "Japanese" にします。
もし "Japanese" の項目がない場合は "Update languages" を選ぶと言語データがダウンロードされます。
※追記終わり
UIが日本語未対応のため、英語に拒否反応があると厳しいかもしれません。ただUIが英語ということは、英語のチュートリアル動画と同じ表示なので、操作を覚えるときにはメリットとなる可能性があります。
ちなみに昔は「UIデザインの統一性のために日本語対応しない」との方針でしたが、最近は中国語対応されるなど多言語対応も進んでいるので、日本語対応もそのうち行われる可能性があります。
- 追記(2024.3.11): Image-Lineに直接連絡を取った方の情報によると、全く翻訳の進捗がなかったとのことです。そうなると翻訳が行われるのはまだまだ先かもしれません
- 追記(2024.4.3): 日本語翻訳を行った方からの報告によると、翻訳は完了済みで反映待ちの状態とのことです。なので次のアップデート時に日本語が追加される可能性があります
他の DAW での標準機能がない(劣っている)
独自路線を進みすぎたのか、他の DAW で標準機能となっている機能が FL Studioでは存在しなかったり、特殊な操作で使えるようになったりとややこしい部分があります。例えば、楽曲途中での拍やテンポ変更は少し独特でややこしいです。
とはいえ、別のDAWから乗り換えるときはネックになる可能性がありますが、FL Studioが最初のDAWである場合には、それほど気にする必要はないかもしれません。
ただ、以下の機能を期待している場合は別のDAWをおすすめします。
個人的にはこのあたりの機能を使いたい場合は、Studio One との併用がおすすめです。
それと、ボーカル録音・楽器演奏のレコーディングについて、FL Studioでもマルチトラックレコーディングやパンチイン・パンチアウトはできますが、設定や手順がややこしいのでStudio OneやCubaseを使ったほうが間違いが起きにくいです。(※「打ち込み主体」の楽曲作成を行う場合、この問題は気にしなくても問題ないです)
カスタマイズ性が低い
FL Studioは、ショートカットキーや文字サイズやフォントの変更など、細かい部分のカスタマイズ性が低いのが欠点です。(スキンや背景を変えたりといった別な意味でのカスタマイズ性は高いですが…)
例えば Cubase が無限のカスタマイズ性を持っているのに比べると、FL Studioはカスタマイズ性が弱いかなと思います。ただ FLならではショートカットキーも覚えるととても便利という側面もあります。
これはFL Studio全体に言えることですが、FLの設計思想に合わせた楽曲制作をするなら快適ですが、「独自の制作スタイルに合わせたい」と考えるとやや不利なケースがあります。
- 2024.6.29追記
- v24でショートカットのカスタマイズに対応しましたが、現状はかなり限定的なカスタマイズ機能でした。他のDAWのように自由なカスタマイズが可能になるのは、まだまだ先かもしれません…。
日本人ユーザーが少ない
日本ではJ-POPやボカロ、アニソンのような歌モノ主体のバンド系楽曲が人気です。そのため、リズムトラック中心のEDM向けであるFL Studioは日本人ユーザーが少なめです。
以下はSleepFreaksが調査した2019年、2021年、2024年の日本人のDAW使用状況です。
DAW |
順位 |
得票数 |
比率 |
2019年 |
2021年 |
2024年 |
2019年 |
2021年 |
2024年 |
2019年 |
2021年 |
2024年 |
Cubase |
1 |
1 |
1 |
1758 |
2807 |
1538 |
41.6% |
37.3% |
39.8% |
Logic Pro |
2 |
2 |
3 |
1043 |
2069 |
843 |
24.7% |
27.49% |
21.8% |
Studio One |
3 |
3 |
2 |
997 |
1838 |
1029 |
23.6% |
24.42% |
26.6% |
Ableton Live |
5 |
4 |
4 |
504 |
773 |
402 |
11.9% |
10.27% |
10.4% |
FL Studio |
4 |
6 |
5 |
549 |
621 |
282 |
13% |
8.25% |
7.3% |
- 出典
FL Stuidoの日本シェアが右肩下がりとなっていますが、個人的には以下の点が原因と考えています。
- 長らくメニュー項目が日本語対応していなかった (リリースから26年経過した「2024年」にようやく対応した)
- 日本の楽曲は打ち込み曲よりも生演奏系(バンド系)楽曲が人気なので、打ち込み主体のFL Studioは不利
- 他のDAWのシェアが拡大している
- 例えば、Ableton Liveは日本法人があり日本のシェア拡大に力を入れている
- Studio Oneは日本人ユーザーを取り込むために ARA対応などをしっかり行っている
- DTM初心者セット (ボカロやオーディオインターフェースなどがセットになった商品) にはたいてい Cubase や Studio Oneが付属している
というように、日本での認知度や日本語の情報が他のDAWよりも比較的少ないです。ただEDMを作る場合は結局英語のサイトや動画を見ることになるので、どのDAWにも言えることですが、英語に抵抗感がない方がやはり有利です。
ちなみにFL Studioを使用している日本人アーティストは以下のページにまとめています。TranceやTrap、海外アーティストの影響やJ-CORE、音ゲー曲を作っているアーティストが多い印象です。
なお FL StudioでJ-POPやボカロ曲が作れないというわけではなく、FL歴10年以上のCapchii氏はインタビューで FLが気軽にポップスを作れるという感想を述べています。
──とりあえずパターンを作って貯めておけば、いつか何かが出来そうですよね。
本当にズボラに曲を作り始められるところが一番いいですね。普段はエレクトロミュージックを作っていますが、ポップスとかもそうやって作れます。
実際エレクトロの要素がかけらもない、ギター+ベース+ドラムみたいな普通のポップスを作ったんですけど、FL で全然行けました。
トラックが散らかりやすい
FL Studioの設計思想上、柔軟にパターンやトラックを組み合わせることができるため、無計画に作業を進めるとトラックがごちゃごちゃになりがちです。そのためプロジェクトの初期段階では問題となりませんが、プロジェクトデータが複雑化していくと意図しないエフェクトやオートメーションが適用されたりして、問題の原因究明に時間がかかってしまうことがあります。
それに対して、例えばミニマルな設計思想である Ableton Live や Studio Oneなどでは、このような問題は起きづらいです。
ただこの問題は、Capchii氏が「FL Studioはズボラに作曲が始められる」と発言しているように、柔軟に作業を行えるメリットの裏返しと言えますので、どちらが良いかのは使う人次第なところもあります。
波形の扱いに弱い部分がある
演奏データをオーディオファイルにレンダリングしたり波形データを編集するときに、Ableton Live や Bitwig Studio などと比べるとやや編集の柔軟性に欠けるところがあります。
例えばFL Studioでは、レンダリングするのに Edison を通さなければならない上、Edisonの操作にやや癖があります。Edisonを使わないトラック単位のレンダリングもできますが、wavデータの存在を意識しなければならずシームレスな編集ではないという点も、やや時代遅れの印象を受けます。
ミキサートラックの上限が125
たびたびフォーラムやSNSで話題となる、ミキサートラック上限 "125"問題。
FLは、複数の楽器を1つのトラックにまとめたり、Sendのルーティングの自由度が高い、Patcherでトラック数を減らせるのですが、デメリットとしてたびたび話題に上がります。(FLの特性を理解した使い方をすれば、この制限が問題となることは基本的にありません)
Image-Line公式の回答としては、「高い優先度で対応を進めているが、すぐに対応できるものではない」といったもので、しばらくはこの制限がなくなることはなさそうです。
2023.12.29追記:ミキサートラック上限 "125" 問題についての対応状況
ミキサートラックの上限 "125" について、FLチームは決してこの問題を軽視しているわけではありません。その証拠として、Image-Lineのテクニカルサポートを行っているHevy氏のコメントを引用しておきます。
■「125を超えるトラック数を必要としている人は多くはない」という意見についての回答
トラック数の上限125を超える曲をアピールする必要はありません。
その問題が発生するのはジャンルに依存するもので、例えばhip-hopであれば10トラック以上を必要としませんが、私が取り組んでいるnuero-dnbプロジェクトでは40のミキサートラックと65のプレイリストトラックを必要としています。
これがorchestral, trance または psyであれば、かなり多くのトラックを消費するのは容易に想像できます。
ですので...、FLチームはその問題に取り組んでいます。
125トラック以上がほとんどの人に必要とされ、歓迎されていることは明らかです。
そして、あなたが125トラック以上を必要としない場合でも、トラックに余裕があることは「トラック数が足りなくなるかも…」という余計な心配に気を取られず作曲に集中できる大きなメリットであると思います。
上記スレッドのそれ以外のやり取りも読んでいたのですが、「最近のバージョンアップによるプレイリストやミキサー周りの新機能追加は少なく抑えている。その意味は分かるよな…?」という思わせぶりな発言もしていました。
プラグインのネーミングが独特のセンス
プラグイン名に "Toxic Biohazard" やら ”Autogun”、"Fruity Blood Overdrive"、"Hardcore" など、やたらと中二病が考えた必殺技のようなカッコいい名前が採用されているので、気になる人は気になるかもしれません。
ただ、最近登場するプラグインは残念ながら無難な名前になっていることが多いです。
FL Studioと一緒に買ったほうが良いもの
以下、アフィリエイトを含む記事です。
商品リンクをクリックしてお買い物をすると、このサイトを支援することができます。
DAWと一緒に買ったほうが良いものとしては、以下のものがよく挙げられます。
- モニター用ヘッドホン
- MIDIキーボード
- オーディオインターフェース
ただ個人的には、FL Studioで必須なものは「多ボタンマウス」です。というのもFL Studioは「PCキーボード+マウス」に特化した操作ができて、それを覚えると作曲スピードが格段に上がるからです。
各種ショートカットキー(特に CTRL や SPACE) を多ボタンマウスに割り当てると、曲の再生・停止やウィンドウの切り替えなどがDAWの操作の大半がマウスで行えるようになります。
おすすめの多ボタンマウス
「Gシフト」というボタンで左クリックや右クリックを別のボタンに割り当てられるので、実質ボタン数が2倍になります。
6ボタンだと微妙に足りない (SHIFT や ALT に割り当てる余裕がない)ので、8ボタンマウスくらいがちょうど良いのではないかと思っています。
モニターヘッドホン
モニターヘッドホンがないと、音作りやミックス時などに音が聞き取れずに正しく作ることができなくなるためです。(特にベース音はヘッドホンがないと聞き取りにくい)
スピーカー
もちろん良いモニタースピーカーとオーディオインターフェースを揃えると、普段の音楽鑑賞の質も上がるので、予算があれば買うのがオススメです。
最終更新:2024年12月01日 08:42