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All Plugins Edition を買うべきか問題

多くの人が「必要ない (=コスパ悪い)」と口を揃えて言う、プラグイン全入りエディション「All Plugins Edition」について。



コスパが悪い理由

1. シンセのバージョンが古い
まず含まれるシンセについて。10年近く前のものが数多く含まれている問題があります。
それぞれのプリセットは膨大にあってお得感はありますが、今の時代には使えないようなサウンドのプリセットが多いため、今どきのサウンドを出すにはしっかりと音作りをしなければいけません。
それにも関わらず、UI周りの改善の動きが遅くて(ユーザーからの要望は数多く出されているようです)音作りのストレスがやや大きく、音作りのモチベーションが上がりにくいです。

2. 値段が高い
そして価格設定の問題があります。All Plugins Editionのターゲットは多くは「Producer」または「Signature」を持っているユーザーとなるので、おおよそアップグレード価格は「3万〜4万円」となります。
ただセールにより「1〜2万円」まで下がることがあるようです。2023年の11月にあった Black Fridayセールでは、Signatureからのアップグレードが $150 (約22000円) でした。

結論:外部の最新シンセを買うほうがコスパが良い
以上の問題を踏まえて、世の中で販売されているシンセを見渡すと Xfer Records『Serum』, reFX『NEXUS』, Vengeance Sound『VPS Avenger』, Reveal Sound『Spire』 といった最新のシンセが同等の金額で買えて、しかもお釣りが出るのでそれで拡張パックを買えてしまう…ということと比べると、どうしても見劣りします。

悪い部分ばかり書きましたが、”All Plugins Edition” は FL Studio純正というアドバンテージがあるため、単純に比較できないメリットがあります。

All Plugins Editionを購入するメリット

メリット 説明
ピアノロールでの特殊な制御が可能 ピアノロールから「ノート単位」でピッチ変更、スライドやパンが使えます。(サードパーティ製はVSTの仕様上できない)
またプラグインによっては、ノート番号に特定の機能が割り当てられています (Transistor Bassなど)
FL Studioとのネイティブ連携 例えばオートメーションが組みやすいです。
(パラメータのノブを右クリック > "Create automation clip" で即座に作れます)。
プラグインによりますが、ホイールクリックでパラメータをリセットできます。

またプリセットをブラウザから選びやすいというメリットもあります。
(サードパーティ製だとプラウザから選ぶにはプリセットを個別に保存する手間が発生します)
一部シンセのポテンシャルは高い Harmor, Sakura, Transistor Bassなどは一軍シンセとして戦えるポテンシャルがあります
エフェクト系はどれも良い エフェクト系は使い勝手の良いものが多い
ジャンルによって使えることもある 一軍シンセとしては使えないが二軍シンセとして補助的に使える場合があります
個別に買うよりは安い それぞれを単品で買うよりも安い。有料の拡張プリセットがオマケでついてくる(ことがある)
動作が軽く安定している 古いシンセであるがゆえ、発表当時よりもPCのスペックが格段に向上しているので、基本的に動作が軽いシンセが多いです
PC移行時のセットアップが楽 PCを買い替えたときの再インストールが楽にできます。
(外部プラグインを数多く使っていると、再インストール作業だけで半日〜1日かかることもあります)
FL Studioのヘビーユーザーであればこれらのメリットを享受できる可能性があるので、誰もが不要であるとは言い切れない部分もあります。
個人的なオススメポイントとしては「エフェクト系はどれも使い勝手が良い」です。


All Plugins Editionのみに含まれるプラグインの評価

個人的な評価なのであしからず…。
例えば "Poizone" は個人的にはイマイチでしたが、良い音が出るとの評判もよく見かけるので私が使いこなせていないだけの可能性があります。

シンセの評価

プラグイン 評価 説明
Drumaxx
★★★ 良い点 物理モデリングのためロードが早く、無限ループ再生なのでリズムボックスとしての使い勝手はとても良いです。
また独特のチープなドラム音源(Drumpadを内蔵)がとても良く、Psytranceなど特定のジャンルにピッタリ合う音です
悪い点 音色をプリセットから選ぶときに、ファイルダイアログ経由のため不便です。
またステップシーケンサーはUIが小さくMIDI出力できないなど、使い勝手が少し良くないです
Harmor
★★★★★ 良い点 なんでもできることを目指したモンスターシンセで、音作りの自由が高いことからユーザー評価も高いシンセです。
リセンシスモードでボーカルを自由にテンポ同期して音程を変えることも可能です
悪い点 なんでもできるがゆえにパラメータが多く複雑で習得に時間がかかります。
また発表が10年以上前ということもあり、今どきのシンセ(Serumなど)と比べてしまうと、
UIの使い勝手の良くない部分がいくつかあります
Morphine
★★★ 良い点 4ボイスの加算型シンセサイザー。太いベースにきらびやかなFMサウンドが出せます。
個人的にはベル・パッド系やハープのプリセット音がすごく良くておすすめです
悪い点 検証中...
Ogun
★★ 良い点 BellやCymbalなど金属系の音を作るのに向いたシンセ。
独特の響きが出るのでSFXのインパクト系やちょっと変わった音を出したいときに役立つかも。
パッド系のプリセットは悪くないので、Ambient系の曲に合う可能性があります。
あと不穏な音が多いのでホラーゲームに使えそうです
悪い点 個人的には好きだけれども、普通の作曲にはあまり使い道なさそうなので★2
Polzone V2
★★ 良い点 Tranceなどに向いている減算型シンセ。パラメータも比較的少なくて音作りしやすいです。
80〜90年代のAcid/Techno感のある曲を作りたいとき使えるかもしれません
悪い点 今となっては古くなってしまった音です
Sakura
★★★★★ 良い点 物理モデリングで弦の響きを繊細に再現したシンセ。
ストリングス、バイオリンやハープ、シタールといった弦楽器の独特な響きを表現するのに向いています。
そして物理モデリングならではの "上品で柔らかな太めの音質" が特徴です。
悪い点 検証中...
Sawer
★★★★ 良い点 旧ソ連のアナログ名機 "FORMANTA Polivoks"をモデリングしたポリフォニック・シンセ。
アナログシンセ特有の太いベースやリード、温かみのあるパッドが作れて、HouseやTranceなどにマッチします。
目立たないけれど、輝ける場面が多いいぶし銀的な活躍ができるシンセ。
悪い点 検証中...
Toxic Biohazard
★★★★ 良い点 6オペレーターのFM音源減算型のシンセサイザー。名前に反してFM特有のキレイな音が出ます。
そしてFM音源だけあって、エレピとパッド系はとてもゴージャスで良いです。
Lo-FiやSynthware、Ambientやバラード曲などに使えます。
悪い点 検証中...
Transistor Bass
★★★★ 良い点 アシッドベースとして有名なTB303のクローンです。
実機を高い精度で再現しているので、音はとても良いです
悪い点 独自のステップシーケンサーのUIが小さくて使いにくく、MIDI出力もできません

エフェクターの評価

プラグイン 評価 説明
LuxeVerb
★★★★ 良い点 低負荷で高品質なリバーブ。
あまり使っている人は見ないですが、Fruity Reeveb 2 の高機能版という位置づけで、
エンベロープやサイドチェインによる制御、ピッチシフトなどの機能があります。
FL標準のプラグインだけで完結したい人にはおすすめのリバーブです。
悪い点 Valhalla DSPの各種リバーブ製品と比べると、機能的に見劣する部分があります
Transient Processor
★★★★★ 良い点 AttackとReleaseをお手軽に調整できる 2バンドのトランジェントシェイパーです。
キックを重くしたい場合には ATTACK と RELEASE を増やす、リズムをタイトにしたい場合は RELEASE を減らす…
といったように、発音タイミングの調整が簡単にできて使いやすいです
悪い点 特にありません。良いトランジェントシェイパーを求めている方であれば、満足度は高いと思います
Pitch Shifter
★★★★★ 良い点 声ネタのピッチやフォルマントをキレイに加工しまくれる神プラグイン。
Riser FXも簡単に作れます (ETIA.氏のポスト)
悪い点 特にありません。
これがなくてもSamplerの "Stretch Pro" からフォルマント設定はできますが、
エフェクターでできると処理を1つのミキサーにまとめたりできて便利です

総評

シンセ系は今どきのものと比べると古い音となってしまったものが多くて見劣りしますが、登場当時はそれなりに話題になっていたものもあり、使い方によっては十分活躍できるポテンシャルを持っています。そしてサードパーティ製と比較してFLStudioとの連携がしやすいのが特徴です。

またエフェクター系は少ないですが、どれも使い勝手がよくおすすめできるプラグインです。

なお登場後は大幅な機能追加はないものの、それぞれアップデート時に少しずつ「バグFIX」や「使い勝手の向上」などで修正されたり、「プリセットが追加」されたりしていて、必ずしも古いままの状態で放置されているわけではない…ということに留意する必要があります。

ということで、絶対に必要かというとそうでもないですが、個人的にはそれなりに活躍できるタイミングがあったりしてデメリットよりもメリットの部分が大きかったので、All Plugins Edition は買ってよかったと感じています。

メモ

追記 (2023.10.28): チュートリアル動画がほぼ存在しない

FL Studio関連のチュートリアル動画のリンクをまとめていて気がついたのですが、"All Plugins Edition" のプラグインを使っている動画はほぼありません。そのため、初心者が "All Plugins Edition" を購入するメリットはほぼなさそうです。

ただ例外として、HarmorTransient Processor はまれに見かけます。

それとTransient Processorの仕組みを改めて調べたら便利すぎることがわかったので、トランジェントシェイパーをお持ちでない場合は十分買う価値はあると思います(単体なら5000円くらいで買えます)。

追記 (2023.12.28): Demo Projectsには All Plugins Editionのシンセが多数使われている

FL Studioに含まれる "Demo Projects" には All Plugins Editionのシンセを含めた標準プラグインが多数使われているので、標準プラグインを使いこなしたい人には参考になりそうです。
最終更新:2024年06月13日 23:13