6400人超が犠牲となった1995年の阪神・淡路大震災から、1月17日で30年になりました。この間、2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震、昨年の能登半島地震、沖縄県内でも2023年の台風6号、昨年11月の本島北部豪雨など、災害が相次いでいます。「阪神」の教訓は生かされたのでしょうか。全3回のウェブオリジナル連載では、30年前に神戸市で被災し、現在は沖縄を拠点に防災活動に取り組む「災害コミュニティーソーシャルワーカー」で社会福祉士の稲垣暁さん(64)に、県内の課題や被災者としての思いを寄稿してもらいました。初回は「阪神大震災30年 教訓を生かすには(上)」です。沖縄で露呈した、備えと現実の落差について警鐘を鳴らします。

 

<連載・阪神大震災30年>
第1回(今回) 台風と津波警報に直面した沖縄 現実と備えの「ギャップ」があらわに 【教訓を生かすには(上)】
第2回(公開中) 被災者のリアルな視点、訓練に反映を 「未来に寄り添う」防災へ 【教訓を生かすには(下)】
第3回(公開中) がれきの街に芽吹いた優しさ 被災者として伝えたかった神戸の姿 【アーカイブ】

 阪神・淡路大震災以降、30年で7度の「震度7」が発生した。日本の地下が活動期に入ったとみられることに加え、風水害の規模拡大も実感され始めた。沖縄県内のメディアによる地震報道は飛躍的に増え、県民の防災意識も徐々に高まってはいた。

 2023年8月の台風6号で、沖縄は今までに経験のない規模の断水や停電に見舞われた。本島では、2016年に金武ダムが完成して以降は断水がなく、便利さを享受するだけで十分な対策はなかった。県内で稼働できる給水車は自治体の所有が2台、民間分を合わせても6台しかなく(2023年8月13日の沖縄タイムス朝刊による)、高齢者や障がい者が役所まで水を取りに行くことを強いられた。給水車の問題は、私も沖縄タイムスなどと一緒に、7年にわたり指摘していた課題だった。

 大規模停電で熱中症の危機が高まり、観光客は食料も水も行き場も失い、那覇市役所の避難所は満杯で...