二歩
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/11 10:00 UTC 版)
第92手 橋本崇載八段の二歩
橋本崇載八段 △持ち駒:なし
9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | |
香 | 桂 | 金 | 一 | ||||||
王 | 銀 | 金 | 香 | 二 | |||||
歩 | 歩 | 歩 | 桂 | 三 | |||||
歩 | 歩 | 金 | 銀 | 飛 | 歩 | 四 | |||
歩 | 桂 | 歩 | 歩 | 歩 | 五 | ||||
歩 | 銀 | 角 | 歩 | 歩 | 六 | ||||
銀 | 歩 | 角 | 歩 | 歩 | 七 | ||||
香 | 玉 | 金 | 八 | ||||||
飛 | 桂 | 香 | 九 |
二歩(にふ)とは、自分の歩兵が配置されている筋に、持ち駒の歩兵を打つ手のこと。将棋の禁じ手の一つである。
概要
既に歩兵が配置されている筋に、持ち駒から歩兵を打つこと、つまり縦の列(筋)に2枚の歩兵を配置することを禁じるルールである。ただし成った歩兵、すなわちと金のある筋に歩兵を打つことは、その筋に別の歩兵がなければ認められており禁じ手ではない。これは盤上のと金が、金将と同じ駒として扱われるためである。同様に、歩兵のある筋にと金を動かすことも認められている。
この二歩のルールによって合法な局面である限り、歩兵は先手・後手のそれぞれのプレイヤーについて同じ筋の中に1枚以下しか存在できない事になる。
初めて成文化したのは二代大橋宗古とされる。二歩が禁止になった理由としては、飛車先の歩の前に別の歩が打てると優劣がはっきりしすぎるために面白くなくなる事が指摘されている[1]。他にも千日手が容易になる、と金攻めの破壊力が落ちる[注釈 1]など、その問題点は掘り起こそうと思えば限りを知らない。
従来は禁じ手(二歩に限らず)を指しても、投了による勝敗が優先となっていた。しかし2019年10月1日に日本将棋連盟の対局規定が改定され[2]、既に終局していた場合であっても、同じ棋戦の次の対局が始まる前に二歩などの反則が判明すれば、遡って反則を犯した側の負けとなることとなった[3][2]。ただし一部の大会等では、未だに投了優先のままな場合もある。[要出典]
初歩的な禁じ手だが、将棋の反則の中では最も起こりやすいものの一つでもあり、プロ高段者の対局においてさえしばしば発生する[注釈 2]。自陣で追いつめられ前の方の歩に気付かずに合駒してしまう、敵陣で相手を攻めるのに夢中になり暫く前に打っていた自陣深くの歩を見落とす、敵陣に打ち込んで不成のまま放置していた歩に気付かない、などの状況でうっかり打ってしまうことが多い。また、盤上の歩を見落とすだけではなく、駒台の他の駒と歩を持ち間違えて二歩を打つこともある。特に持ち時間の少ない早指し戦などでは、十分に注意する必要がある。森内俊之の説によれば、二歩の半数以上に底歩(自陣の最下段の歩)が関係しており、既に底歩を打っておいた筋に別の歩を打ってしまうか、別の歩がある筋に底歩を打ってしまうケースであると述べている[4]。
アマチュアの対局であっても、公式な大会では二歩を打った時点で即時負けとされることが多い。一方で将棋ソフトやネット将棋などでは、禁じ手であることを指摘されるだけで指せないようになっている。
二歩の例
年 | 棋戦 | 二歩を指した 棋士・女流棋士 | 対局相手 | 手番 | 備考 |
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1977年 | 関屋喜代作 | 青野照市 | |||
1980年 | 有吉道夫 | 森安秀光 | |||
1982年 | 米長邦雄 | 島朗 | |||
山口千嶺 | 関根茂 | 5七歩の上に5六歩を重ね打ち | |||
1985年 | 淡路仁茂 | 島朗 | |||
1986年 | 順位戦 | 淡路仁茂 | 石田和雄 | 145手目 7二歩 | |
1988年 | 二上達也 | 西村一義 | |||
1992年 | 順位戦 | 所司和晴 | 石川陽生 | 131手目 8二歩 | |
1997年 | 淡路仁茂 | 矢倉規広 | |||
1998年 | 銀河戦 | 山崎隆之 | 佐伯昌優 | 94手目 4一歩 | |
2004年 | NHK杯 | 豊川孝弘 | 田村康介 | 109手目 2九歩 | 第54回1回戦第12局(6月20日) |
順位戦 | 田中寅彦 | 中村修 | 142手目 5三歩 | ||
棋聖戦 | 山崎隆之 | 小林裕士 | 87手目 3三歩 | 先手83手目に3九歩[5] | |
2005年 | NHK杯 | 松尾歩 | 先崎学 | 98手目 3六歩 | 第55回1回戦第4局(4月24日) |
2006年 | 棋聖戦 | 室岡克彦 | 瀬川晶司 | 54手目 7一歩 | |
順位戦 | 小林健二 | 小倉久史 | 149手目 9二歩 | ||
2007年 | JT将棋 | 郷田真隆 | 佐藤康光 | 117手目 9六歩[6] | |
2015年 | NHK杯 | 橋本崇載 | 行方尚史 | [7] | 92手目 6三歩第64回準決勝第2局(3月8日) |
銀河戦 | 高橋道雄 | 安用寺孝功 | [8] 3五歩[9] | 95手目第23期本戦Fブロック8回戦(2月13日収録、5月7日放送) 両対局者が二歩に気付かずさらに13手指し続けた[9][8] | |
2016年 | JT将棋 | 郷田真隆 | 佐藤天彦 | 105手目 6三歩[10] | 二回戦第一局(9月3日) |
2018年 | 女流王位戦 | 武富礼衣[11] | 石本さくら | 第30期予選2回戦(10月19日) | |
順位戦 | 青野照市[11] | 都成竜馬 | 54手目 7七歩 | 第77期順位戦C級1組6回戦(10月23日) | |
銀河戦 | 長沼洋 | 木村孝太郎アマ | 118手目 6六歩 | 第27期Gブロック4回戦(10月25日収録、2019年1月15日放送)[12] | |
2019年 | 叡王戦 | 先崎学 | 島朗 | 184手目 5三歩 | 第5期九段予選Cブロック1回戦(2019年8月12日)[13] |
2020年 | 銀河戦 | 増田康宏 | 野月浩貴 | 69手目 2二歩 | 第28期Gブロック8回戦(2月21日収録、6月9日放送) |
2021年 | 女流ABEMA | 内山あや | 香川愛生 | 133手目 7六歩 | (非公式戦)第2回予選Bリーグ第1試合第4局(10月30日放送)[14] |
女流順位戦 | 大島綾華 | 貞升南 | 65手目 7二歩 | 第2期女流順位戦D級2回戦(11月8日)[15] | |
2022年 | マイナビ | 長沢千和子 | 加藤結李愛 | 第16期マイナビ女子オープン予備予選(5月28日)[16] | |
ABEMA | 木村一基 | 黒沢怜生 | 117手目 6九歩 | (非公式戦)第5回本戦2回戦第3試合第1局(8月27日放送) | |
2023年 | 順位戦 | 中村修 | 村山慈明 | 137手目 1二歩 | 第81期順位戦B級2組8回戦(2023年1月11日) |
女流ABEMA | 山根ことみ | 上田初美 | 103手目 5八歩 | (非公式戦)2023年度1回戦第一試合第5局(3月11日放送)[17] | |
銀河戦 | 森下卓 | 野月浩貴 | 77手目 4八歩 | 第31期銀河戦Hブロック5回戦(2023年2月15日対局)[18] | |
2024年 | ABEMA 地域対抗戦 | 増田康宏 | 佐藤天彦 | 74手目 8三歩 | (非公式戦)予選Bリーグ 2位決定戦(2024年3月23日放送) |
詰将棋における二歩
詰将棋では二歩を主題とする問題がある。禁じ手であるため手順中に二歩が現れることはないが、将来の二歩を予防するために歩を捨てる、相手方に二歩の制約を与えるために取れる歩をわざと取らない、などが解答の鍵となっている問題である。
いわゆる「フェアリー」(通常や一般のルールセットとは異なるルールによる問題)としては、「禁じられているのは二歩を『打つ』ことであって、二歩が『存在する』ことは禁じられていない」という論理のもと、問題図が二歩の作品もある[19]。
例題
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図1-Aは▲1四香、△2四玉、▲2五歩、△1五玉、▲2六金、△同飛、▲1六歩(図1-B)、△同飛、▲2七桂までの9手詰。1手目で▲1四歩とすると7手目の▲1六歩が二歩になるため、▲1四香の不利先打で解決する。
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図2-Aは▲3五角、△2六桂、▲同角、△同玉、▲1八桂(図2-B)、△2五玉、▲2七龍、△1四玉、▲3二角、△1三玉、▲2三龍(角成)までの11手詰。2手目の合駒が歩ならば取られても詰まないが、その場合▲3九角(図2-C)とすれば2八に歩で合駒ができず(桂も行き所のない駒であるため合駒に使えず、金銀香のどれかを打つことになる)、△2八香▲同角△1八玉▲1九香で早く詰む。逆に2手目の合駒が歩でない場合に▲3九角と打つと△2八歩(図2-D)と合駒され、▲2八同角△1八玉で詰まない(▲1九歩は打ち歩詰め)。
歴史
二歩を主題とする詰将棋を初めて作ったのも二代大橋宗古であり、「象戯図式」(1636年 俗称「将棋智実」)第1番が1号局である。
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図3-Aから進めて図3-Bのとき、▲2六歩、△2四玉、▲2五歩、△同玉として2七の歩を取り除き、将来の二歩を予防する。以下▲1七桂、△2四玉、▲1五馬、△同歩、▲2五歩(図3-C)となり、歩を取り除いた効果が現れる。
(図3-Aは▲2一金、△1三玉、▲2二銀、△2四玉、▲2五金、△同玉(図3-B)、▲2六歩、△2四玉、▲2五歩、△同玉、▲1七桂、△2四玉、▲1五馬、△同歩、▲2五歩(図3-C)、△1四玉、▲2六桂まで17手詰)
なお、二歩禁の規則自体はこれ以前の詰将棋にも適用されており、例えば初代大橋宗桂の「象戯造物」(1602年 伝慶長版)の第45番は、玉方が二歩の合駒をすれば詰まない。
類似のゲームにおける事例
- チェスでは将棋の歩兵に相当するポーンが、敵の駒を取るときのみ正面ではなく斜め前方に進むため、必然的に二歩のような形になる場合がある(ダブルポーン)。ルール上は問題ないが、縦に並んでいると正面のポーンが守りにくくなるので通常は不利な形とされている。
- マークルックのビアもポーンと同じく駒を取るときに斜め前方へ進むため、縦に二つ並んだ形になる場合がある。こちらもルール上は問題ない。
- どうぶつしょうぎでは、将棋の歩兵に相当する「ひよこ」を同じ縦の列に打つこと(二ひよこ)が許されている。ただし二ひよこが好手になる場面は少なく、主に敗勢時の手数稼ぎに用いられる。
- 中将棋・大将棋などの多くの古将棋は持ち駒のない取り捨てルールのため、二歩の状態は発生し得ず規定もない。禽将棋は持駒ルールだが、歩に当たる燕の駒は初形から縦に2つ並んでおり、同じ縦筋の燕は2つまでは可で3つは禁止という、いわば「三歩」のルールになっている。現代に考案された鯨将棋も歩に相当するイルカについて同様の「三歩」ルールを採用している。
脚注
注釈
出典
- ^ 谷川浩司『将棋新理論』(河出書房新社)、1999年6月、ISBN 9784309721835、p.9
- ^ a b 「将棋、500手で引き分けに 日本将棋連盟が規定改定」『朝日新聞東京夕刊』2019年10月7日、4面。
- ^ 対局規定(抄録):日本将棋連盟
- ^ 原田泰夫 (監修)、荒木一郎 (プロデュース)、森内俊之ら(編)、2004、『日本将棋用語事典』、東京堂出版 ISBN 4-490-10660-2 pp. p.59
- ^ “076kisei_yosen010.kif(「第76期棋聖戦」1次予選特選局 山崎隆之五段×小林裕士五段(87手目▲3三歩で二歩反則負け)”. www.sankei.co.jp. 2005年4月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2005年4月23日閲覧。
- ^ “郷田、まさかの「二歩」 七尾でJT将棋 佐藤が準決勝進出”. 47NEWS. 北國新聞 (2007年9月3日). 2015年7月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月17日閲覧。
- ^ “将棋NHK杯まさかの二歩決着 橋本八段痛恨「あっ」頭抱える”. スポーツニッポン (2015年3月8日). 2016年9月4日閲覧。
- ^ a b “【将棋】また二歩で反則負け、今度は高橋道雄九段”. スポーツ報知. 2015年5月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年5月8日閲覧。
- ^ a b 高橋道雄 (2015年5月7日). “幻の13手”. みっち・ザ・わーるど. 2015年5月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年12月1日閲覧。
- ^ “郷田王将「二歩」で反則負け JTプロ公式戦”. 毎日新聞. 2016年9月4日閲覧。
- ^ a b c “将棋プロ反則負け、6日で3回 青野九段も 異例ペース”. 東京新聞 (2018年10月24日). 2018年10月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年12月1日閲覧。
- ^ “銀河戦 | 将棋 | 囲碁・将棋チャンネル”. www.igoshogi.net. 2019年3月16日閲覧。
- ^ ニコ生公式_将棋 (2019年8月12日). “8/12(月) 島朗九段 vs.先崎学九段の対局は184手までで、先崎九段の二歩により、島九段が勝利しました。”. @nico2shogi. 2019年8月12日閲覧。
- ^ “本人は「ごめんなさいっ!」仲間は「あー!」と絶叫 まさかの二歩で大騒ぎ/将棋・女流ABEMAトーナメント”. ABEMA TIMES (2021年11月2日). 2021年11月2日閲覧。
- ^ マイナビ出版 将棋情報局編集部
- ^ “将棋情報局”. book.mynavi.jp. 2022年5月28日閲覧。
- ^ “まさかの二歩に敵も味方も本人も「あっ!」超早指しだから起こるハプニングに解説棋士・先輩女流も「こういうこともある」「大丈夫」/将棋・女流ABEMAトーナメント”. ABEMA TIMES (2023年3月13日). 2023年4月23日閲覧。
- ^ 第31期本戦トーナメント Hブロック 5回戦
- ^ 初形に「二歩」がある作品(詰将棋マニアックス)
関連項目
二歩
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「NHK杯テレビ将棋トーナメント」の記事における「二歩」の解説
第54回1回戦(2004年度、2004年6月20日放送)豊川孝弘六段 対 田村康介五段 - 豊川六段の二歩(反則負け) 第55回1回戦(2005年度放送) 松尾歩五段 対 先崎学八段 - 松尾五段の二歩(反則負け) 第64回準決勝(2014年度、2015年3月8日放送)橋本崇載八段 対 行方尚史八段 - 橋本八段の二歩(反則負け) 駒が取れない テレビスタジオのライトの熱により、駒に塗られたワックスが時間とともに溶けてしまい、盤に貼り付いてしまうという、テレビ棋戦ならではのトラブルも発生した。それに遭遇した森安秀光は、秒読みに追われる中、次の指し手を大声で発し、切れ負けをしのいだ。 対局予定者の休場時の扱い 第34回(1984年度)で、前回優勝者の大山康晴NHK杯が急病で休場となり、穴埋めとして谷川浩司名人と米長邦雄王将の特別対局が行われた。この勝負は米長の勝利に終わる。ところがこの対局がエキシビションではなく「公式戦」の扱いとなってしまったため、本戦トーナメントで青野照市八段に敗れた谷川は、名人がNHK杯において1年で2敗を喫すると言う珍記録を作ってしまった。 第42回(1992年度)の年度途中で大山康晴十五世名人が死去し、2回戦で大山との対戦予定が組まれていた島朗七段戦は、島の不戦勝扱いとなった。また、第58回(2008年度)では中原誠十六世名人が急病で休場し、2回戦第16局で対戦予定が組まれていた阿久津主税六段戦は、阿久津の不戦勝扱いとなった。 「ノータイム指し」糸谷哲郎の活躍 第59回の準決勝・渡辺明竜王対糸谷哲郎五段では、糸谷が得意の超早指しに渡辺も超早指しで対抗した結果、糸谷が勝利。感想戦の放送も早く終了し、久々に臨時の番組が後ろに挿入された(NHK杯将棋名局選)。 第60回の準決勝(2011年3月20日放送分)において、糸谷が丸山忠久九段に39手で勝利した。これは、本戦での最短手数記録[信頼性要検証]。このときも前述の渡辺竜王との対戦時同様時間が余ったが、臨時の番組が挿入されることなく番組終了まで感想戦が放送された。 第69回(2019年度)は、1回戦で「マッハ指し」と称されている超早指しの田村康介七段と対戦。両者共超早指しで応戦した結果、対局開始から30分足らずの91手で糸谷が勝利。感想戦は対局時間より長い50分間も放送終了まで行われた。 高齢棋士・遅咲き棋士・引退直前の棋士の健闘 第33回(1983年度)は、65歳の花村元司九段が予選を勝ち抜き本戦出場。1回戦で中村修五段を破り、2回戦は60歳大山康晴十五世名人との「還暦超え対決」となった。結果は106手で後手大山の勝ち。大山はそのまま3回戦以降も勝ち抜いて「還暦優勝」を果たし、1985年に現役のまま死去した花村にとっては最後のNHK杯本戦出場となった。 第42回(1992年度)では丸田祐三九段が73歳で予選を突破し、本戦1回戦で森安秀光九段に勝利した。 第43回(1993年度)では加藤一二三九段が54歳で12年ぶりに優勝、当時の最長間隔優勝記録であった(現在の最長間隔優勝記録は13年で、森内俊之が第51回(2001年度)・第64回(2014年度)、山崎隆之が第54回(2004年度)・第67回(2017年度)で達成)。なお最高齢優勝は大山康晴の61歳。 第52回(2002年度)は、共に62歳で優勝経験者の内藤國雄九段(予選通過者)と加藤一二三九段(順位戦A級シード)が、2回戦で「還暦超え対決」となり、内藤が勝利している。 第60回(2010年度)は、順位戦C級2組からの陥落により引退が決まっていた有吉道夫九段が74歳で予選を突破。本戦出場の最年長記録を更新した。1回戦で高橋道雄九段に敗れたため、前記した丸田祐三の持つ最年長勝利記録は更新できなかった。この件がきっかけとなり、日本将棋連盟の引退日の規定が「引退が決まった年度末(3月31日)」から「引退が決まった年度に勝ち残っていた棋戦の最終対局日。ただし、テレビ棋戦の場合は、対局の放映日」に変更された。 第68回(2018年度)では、40歳代にして本戦初出場を決めた2人がいずれも本戦1回戦勝利以上の活躍を見せた。安用寺孝功六段は、1999年のプロ入り以来予選敗退が続いていたが、プロ19年目にして本戦初出場を決め、本戦1回戦(放送当時43歳)でも、前年度朝日杯将棋オープン戦優勝の実績を持つ八代弥六段に勝利、2回戦へ進出した(広瀬章人八段に敗れた)。 更には、戦後最年長プロデビューの今泉健司四段も本戦初出場を決め、本戦1回戦(放送当時45歳)で藤井聡太七段との対戦となり、「当時の戦後最年長プロデビューの今泉四段 vs 戦後最年少プロデビューの藤井七段の初対局」として、当年度の注目対局となった。その結果、今泉が藤井に勝利し、こちらも本戦初出場にして難敵を倒しての2回戦進出となった。さらに今泉は2回戦で深浦康市を破って3回戦に進出した(久保利明王将に破れた)。 最後の決勝 第47回(1997年度)の決勝では、最終盤で村山聖八段にミスが出て羽生に逆転負けをする。準優勝のインタビューでは、村山らしく笑顔で「優勝したはずだったんですが」とおどけてみせた。村山は病気のため明くる4月から全ての棋戦を休場し、復帰を果たせないまま8月に死去する。 ファッション・パフォーマンス 橋本崇載四段が第54回(2004年度)の本戦に出場し、対松尾歩五段戦では金髪、パンチパーマ、紫のシャツというファッションで対局した。また、第57回(2007年度)での対阿部隆八段戦でのカメラを意識した目線は話題を呼んだ。 吉田正和四段は本戦初出場となった第60回(2010年度)の第1回戦(屋敷伸之九段戦)に剃髪をして登場した。 第62回(2012年度)1回戦第3局(2012年4月22日放送)では佐藤紳哉六段がカツラをつけて登場し、豊島将之六段との対局前インタビューで、格闘技やプロレスの煽りのような受け答えをして話題となった。その(放送日基準で)半年後の2回戦第12局(10月28日放送)では、橋本崇載八段が羽生善治NHK杯との対局前インタビューで佐藤の発言を引用してパフォーマンスを真似た。佐藤の「煽り発言」は以降も多く引用され、対象となった豊島自身も、解説を務めた第63回(2013年度)準々決勝第4局(2014年2月23日放送・屋敷伸之九段対大石直嗣六段)で、対局する両者を評するために引用した。 喫煙 かつては喫煙しながらの対局もあり、第31回(1981年度)の決勝戦では伊藤果五段が煙草を片手に投了した。 解説者がトイレに 第36回(1986年度)準決勝・第2局(1987年3月15日放送)、淡路仁茂八段と森雞二九段の対戦。解説者は晩年の升田幸三実力制第4代名人が務めたが、途中でトイレに行き解説者一時不在となった。その間司会の永井が1人で間をつないだ。 4人とも2年連続ベスト4→決勝戦が2年連続同一カード 第60回(2010年度)では、前回(第59回)ベスト4によってシードされた棋士がまたも準決勝に進出し、2年連続で全く同じ顔ぶれとなった(羽生善治・渡辺明・丸山忠久・糸谷哲郎)。さらに、決勝戦も2年連続で同一カードとなった(羽生対糸谷)。この様な例は史上初。 2回連続千日手 第61回(2011年度)の1回戦第10局、佐藤康光九段対永瀬拓矢四段の対局は、NHK杯戦史上初の2回連続千日手となった。再指し直し局で永瀬が佐藤を破った。 羽生世代の決勝進出 第45回(1995年度)~第64回(2014年度)の20年間、毎年必ず羽生世代の誰かが決勝に進出していた。第65回(2015年度)は、羽生善治名人が初戦である2回戦敗退など波乱が多く、準々決勝で藤井猛九段・郷田真隆王将が敗れたことで、決勝はおろか準決勝進出者もいなくなり、記録が途切れた。 第66回(2016年度)以降は再び、羽生世代の棋士が少なくとも1人勝ち残る状態が続いている。第66回(2016年度)では佐藤康光九段が優勝し、第67回(2017年度)では郷田真隆九段が準決勝まで勝ち残った(同年度優勝の山崎隆之に敗れた)。 第68回(2018年度)の準々決勝では第1局で森内俊之九段が三枚堂達也六段に、第2局で丸山忠久九段が久保利明王将に、第3局で羽生善治九段が豊島将之二冠に、第4局で郷田真隆九段が広瀬章人竜王に、それぞれ勝利し、第51回(2001年度)以来17年ぶりにベスト4全員が羽生世代となった。 同姓対決 第66回(2016年度)では準決勝に進出した4人中3人が佐藤姓となり、佐藤康光九段が佐藤天彦名人・佐藤和俊六段を連破して優勝。 「将棋フォーカス」MC対決 第67回(2017年度)の1回戦第16局(2017年7月16日放送)、山崎隆之八段対中村太地六段の対局は、同年度、両者とも「将棋フォーカス」で伊藤かりん(当時乃木坂46)とともにMCを交替で担当しており、MC対決となった。両者ともに2017年当時のNHK杯では珍しい和服姿での対局となった。対局者の両者が和服というのは、2008年3月放送の決勝戦(佐藤康光二冠対鈴木大介八段)以来、およそ10年ぶりの出来事とされた。また、この対局の舞台裏は翌週(2017年7月23日)の「将棋フォーカス」でも特集された。結果は山崎隆之八段が勝利した。なお山崎はそのまま勝ち進んで、13年ぶりの優勝も手にした。 本戦に「初段」が登場し「九段」と対局 第68回(2018年度)では、女流枠として加藤桃子女王が出場していたが、前述の本戦1回戦勝利後(トーナメント中)に「女王」を失冠した。そのため2018年5月27日放送にて、「初段」(奨励会の段位)と呼称された。「奨励会員かつ女流棋士ではない」女流枠からの出場者であるために起こった現象である。なお、同放送における対局相手は森内俊之九段だったため、奨励会初段が最高段位の九段(それも、十八世名人資格者)と対局するという、二重の珍事が発生した(結果は森内の勝ち)。 優勝カップの台座 優勝カップ(トロフィー)の台座には回数・年度と歴代優勝者の氏名が刻まれる。台座に氏名を刻むスペースが無くなると下に新たな台座が継ぎ足され、2019年現在は三段目まで増やされている。このためカップは非常に重くなっている。
※この「二歩」の解説は、「NHK杯テレビ将棋トーナメント」の解説の一部です。
「二歩」を含む「NHK杯テレビ将棋トーナメント」の記事については、「NHK杯テレビ将棋トーナメント」の概要を参照ください。
二歩
「二歩」の例文・使い方・用例・文例
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