免責
免責とは、ある行為や事象に対して、法的責任を負わないことを指す。一般的には、契約や法律によって定められた責任から免れることができる場合を指す。免責には、契約免責と法定免責の2種類が存在する。
契約免責は、当事者間の合意によって責任を免れることができるものである。例えば、契約書において、あらかじめ免責事項を定めることにより、特定の事象に対して責任を負わないことができる。ただし、免責事項は、公序良俗に反しない範囲で設定する必要がある。
法定免責は、法律によって定められた免責事由に該当する場合に、責任を免れることができるものである。例えば、不可抗力によって生じた損害に対しては、法律上の責任を免れることができる。不可抗力とは、人間の力では防ぐことができない自然現象や社会的事象(地震、台風、戦争など)を指す。
免責に関連する法律用語として、免責条件や免責範囲がある。免責条件とは、免責が適用されるための条件を指す。免責範囲とは、免責が適用される事象や損害の範囲を指す。
免責
めん‐せき【免責】
免責
免責
車両保険で契約時に一定の免責内容を決めて、そのぶん保険料が安くなるシステムのこと。損害額のうち免責分(補償の対象外)は自己負担となるが、この金額を免責金額という。例えば「免責10万円」で加入した場合、事故で50万円の損害が生じても、保険会社から支払われるのは40万円で、残り10万円は自己負担となる。免責金額を少なくして契約すれば自己負担も少なくてすむが、保険料は高くなる。
免除
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免除(めんじょ)とは、一般には何らかの義務の負担を解除する行為をいう。
民法上の免除
免除の意義
民法上の免除は債権の消滅原因の一つで、債務を無償で消滅させることを指す。債権の放棄と同義である[1][2]。
なお、民法上には「連帯の免除」(民法445条)という概念があるが免除(民法519条)とは意義が全く異なる[3](連帯の免除については連帯債務を参照)。
免除の方法
免除は債権者の債務者に対する一方的な意思表示による(民法519条)[4][5]。
日本の民法上の免除は単独行為とされ、債権者の意思表示のみで可能である(民法519条)[4][3]。ただ、立法論の観点からは利益といえども強制すべきでなく債務者の意思を考慮すべきなどの点から問題視される[5]。この点、諸外国では債権者と債務者との契約として定める法制が多いとされ[3][2]、日本においても債権者と債務者による債務免除契約(免除契約、放棄契約)は認められる(大判昭4・3・26新聞2976号11頁)[3]。
不要式行為であり意思表示は明示か黙示かを問わないが、第三者への意思表示では免除の効力を生じない(大判大2・7・10民録19輯654頁)[2]。債務者に著しく不利益なものでない限り条件を付すことも可能である[2]。
免除の効果
全部免除であるときは債務の全部、一部免除であるときはその範囲で債務は消滅し、全部免除の場合には債権に付随する担保物権や保証債務は消滅する[1][2]。ただし、免除の対象となるものが第三者の権利の目的となっている場合など免除が第三者の権利を害することになる場合には、免除は認められず効果は発生しない[1][5][6]。
連帯債務の場合、2017年の改正前の旧437条は免除をその負担部分の限度で絶対的効力事由の一つとしていたが、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で旧437条は廃止され相対的効力に転換された[7]。ただし、連帯債務者の一人に対して債務の免除がされた場合、他の連帯債務者は、その一人の連帯債務者に対し求償権を行使することができる(445条)。445条の求償規定は2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で新設された[7]。
- 旧437条は免除をその負担部分の限度で絶対的効力事由の一つとしていた。90万円の連帯債務の場合、連帯債務者A・B・CのうちAが債権者Dから免除を受けたときには、Aは免責され、これによってBとCもAの負担部分の範囲(平等であれば30万円)で債務を免れる(以後、BとCは60万円の連帯債務を負う)とされていた[8]。旧437条は法律関係を簡易に決済する趣旨の規定であったが、分別の利益を認めたのと同じ結果となっており、債権の担保力を不当に弱めるもので一般的な債権者の意思に反するという批判があった[8]。
- 2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)では免除と求償を区分して規律することで連帯債務の担保的機能の強化が図られた[7]。90万円の連帯債務の場合、連帯債務者A・B・C(負担割合が平等の場合)のうちAが債権者Dから免除を受けたときには、Aは免責されるが、BやCは引き続き90万円全額の債務を負う(求償関係はBが90万円を弁済すれば新設された445条によりAに対しても30万円求償できる)[7]。
- なお、2017年の改正前の旧445条は連帯の免除について定めており、旧445条の「連帯の免除」は「免除」とは異なり、債権者が連帯債務者の一人の債務をその連帯債務者の負担部分に限定する意思表示をいった[8][7]。旧445条は債権者が連帯債務者の一人の連帯を免除した場面で、他の一人の連帯債務者が無資力だった場合には債権者自らが分担するとしていたが、債権者の意思に反するという批判があったため削除された(旧445条と新445条は無関係)[7]。
連帯保証の場合には連帯保証人に生じた事由について連帯債務の規定が準用されるが(458条)、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で連帯債務の規定が変更されたため、連帯保証人に対する免除の効力は、主たる債務者に及ばないこととなった[9]。
免除と税務
無価値でない債権の放棄は実質的には一種の贈与となり、法人税法上、損金として扱うことはできない[10]。
行政法上の免除
行政法上の免除は、行政行為の一つで、法令による作為・不作為・受忍義務を解除する行為を指す。
出典
- ^ a b c 近江幸治著 『民法講義Ⅳ 債権総論 第3版』 成文堂、2005年7月、361頁
- ^ a b c d e 遠藤浩・川井健・原島重義・広中俊雄・水本浩・山本進一著 『民法1 債権総論 第4版増補版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1999年3月、321頁
- ^ a b c d 我妻榮、有泉亨、清水誠、田山輝明『我妻・有泉コンメンタール民法 総則・物権・債権 第3版』日本評論社、2013年、952頁。
- ^ a b 内田貴著 『民法Ⅲ 第3版 債権総論・担保物権』 東京大学出版会、2005年9月、107頁
- ^ a b c 遠藤浩編著 『基本法コンメンタール 債権総論 平成16年民法現代語化新条文対照補訂版』 日本評論社〈別冊法学セミナー〉、2005年7月、237頁
- ^ 遠藤浩・川井健・原島重義・広中俊雄・水本浩・山本進一著 『民法4 債権総論 第4版増補版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1999年3月、322頁
- ^ a b c d e f 荒井俊行. “民法(債権関係)改正案に関するノート(IV)多数当事者関係(連帯債務を中心に)” (PDF). 土地総合研究 2015年夏号. 2020年3月20日閲覧。
- ^ a b c 遠藤浩編著 『基本法コンメンタール 債権総論 平成16年民法現代語化新条文対照補訂版』 日本評論社〈別冊法学セミナー〉、2005年7月、110頁
- ^ “民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案における重要項目” (PDF). 兵庫県弁護士会. 2020年4月1日閲覧。
- ^ 内田貴著 『民法Ⅲ 第3版 債権総論・担保物権』 東京大学出版会、2005年9月、107-108頁
関連項目
免責
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/16 16:22 UTC 版)
刑法第35条の規定は、労働組合の団体交渉その他の行為であって本法の目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない(刑事免責、第1条2項)。 「暴力の行使」を禁止する旨の規定は、これは当然のことを念の為に規定したものであるから、いやしくも職権の濫用を来し、健全なる労働組合運動の弾圧に陥るがごときことのないよう、その趣旨を充分末端機関にまで徹底し、検察庁、警察官署等と緊密な連絡をとり誤解のないように努力されたい(昭和24年6月9日発労第33号)。 「暴力の行使」とは、例えば暴行、傷害、器物毀棄等に該当する行為、即ち、生命、身体、自由若しくは財物等に対する不法な有形力の行使又は不法な実力の行使をいう。なお、業務妨害罪に規定する「威力」は、暴力より遙かに広い概念であるが、単なる労働組合の団結自体は業務妨害罪の「威力」に該当しないから、暴力のような行き過ぎを伴わない同盟罷業については、業務妨害罪の規定は適用されない。第1条2項は、暴力の行使に含まれないものであっても例えば民事訴訟の仮処分命令等裁判所の執行に反対する行為等は正当な行為とは解釈されず、現行刑罰法規に該当する限り処罰から免れるものではない。又例えば脅迫等の如き暴力に含まれるか否か疑がある行為、又は暴力の行使には含まれないが、これに準ずるような性質の行為は、暴力の行使でなくても不当な行為であることには疑がない。この外にも暴力の行使以外の行為であって労働組合の正当でない行為があることは勿論であって、第1条2項は不当な行為を「暴力の行使」のみに限定するものではない(昭和24年8月8日労発第317号)。 第2条に該当しない労働者の団体に対しては、第1条2項の規定は適用されないことは当然であるが、かかる団体の行為についても、直接刑法第35条の規定により処罰から免れることがありうる(昭和24年8月8日労発第317号)。 使用者は、同盟罷業その他の争議行為であって正当なものによって損害を受けたことの故をもって、労働組合又はその組合員に対し賠償を請求することができない(民事免責、第8条)。 第8条の規定は、労組法上の労働組合以外の労働者の団体に対して適用がないことは勿論であるが、民事上の損害賠償責任を生ずる不法行為又は債務不履行の成立には、違法性があり、又は債務の本旨に反することを要件とするのであって、労組法上の労働組合以外の労働者の団体の行為についても、第8条の規定の類推によって違法性なく、又は債務の本旨に反せざるものとして不法行為又は債務不履行の成立なきものとせられ、損害賠償の責任を生じないことがありうる(昭和24年8月8日労発第317号)。
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