すいへいたいこう‐エンジン〔スイヘイタイカウ‐〕【水平対向エンジン】
水平対向エンジン
偶数シリンダーの多気筒エンジンでシリンダーを対向させ、水平に配置したエンジンの総称でボクサーエンジンともいう。ピストンが互いに向かい合って動く水平対向エンジンと、ひとつのクランクピンに左右のパンクのコネクティングロッドを取り付けた180度のV型エンジンが含まれる。前者は、基本的にはピストンの往復運動の不平衡慣性力をキャンセルできるが、後者のフラットVは、基本的にはV型エンジンの振動特性に類似する。双方のエンジンともに、シリンダーヘッドからのオイルの回収には技術を要する。また、エンジンの全高は低くなるが、排気の取りまわしとエンジンの上下曲げ剛性の確保に配慮が必要である。
水平対向エンジン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/23 06:46 UTC 版)
水平対向エンジン(すいへいたいこうエンジン、英: Horizontally-opposed cylinder engine)または水平対向機関は、レシプロエンジンの形式の一つで、1本のクランクシャフトをはさんでシリンダー(気筒)を左右に水平に配置し、対になるピストン同士が必ず向かい合うように下降または上昇するエンジンである[1]。ボクサーエンジン(boxer engine)やフラットエンジン[注釈 1](flat engine、平たいエンジン)とも呼ばれる。
注釈
- ^ 直列エンジンを横に寝かせて設置したものをフラットエンジンと呼んでいることがあるので注意を要する。
- ^ SUBARUの登録商標であるが、それ以前にマツダが「MAZDA BOXER」の商標を所有していたため、富士重工が特許庁に対して「MAZDA BOXER」の商標取り消しを求め、同社が「BOXER」を使用できるようになったのは2004年(平成16年)2月以降である[12]。
- ^ 航空用エンジンでは特に欠点とはならない。
- ^ 両方のバンクが直列6気筒と同等の構成となるため。
- ^ 左右のシリンダ列の軸方向のズレ量が、180度V型(共有したクランクピン内のコンロッド1本分のズレ)はボクサー型(共有できないクランクピン間のクランクウェブ等の厚みがコンロッド1本分に加わったズレ)よりも小さいことを外観で識別できれば、不可能ではない。
- ^ 4個のピストンが同時に上死点に達するため。ちなみに90度V型8気筒では、クランクシャフトがフラットプレーンでもクロスプレーンでも90°の等間隔燃焼にできる。
- ^ ただし全幅を抑える等の目的でショートストローク型とする場合には、ボア径の増大によりシリンダーピッチ(気筒間隔)が長くなり、180度V型でもクランクシャフトは短くできずに重量軽減のみとなることもありうる。
- ^ 365GT4BBからF512Mまで。
- ^ 直列2気筒の4ストロークエンジンにおいて、360°クランク(2つの気筒のクランクピンの位相が同じ)では等間隔燃焼になるが1次振動が発生し、180°クランク(2つの気筒のクランクピンが軸対称位置)では1次振動は打ち消せるが不等間隔燃焼となり偶力も大きい。水平対向2気筒では、直列2気筒中の1気筒をクランクシャフト中心で180° 移動させて180° クランクを使用する形であり、等間隔燃焼と振動の相殺が両立される。この考え方はそのまま任意の気筒数の水平対向エンジンに拡張できる。
- ^ 気筒数やバンク角によっては、クランクピンを両バンクで共有したままでは不等間隔燃焼となり、位相クランクを用いて等間隔燃焼とすると振動特性が悪化する場合がある。
- ^ 多くの量産エンジンにDOHC化やマルチバルブ化、可変バルブタイミング化、直噴化など、シリンダーヘッド周辺の重量を増加する機構が採用されるようになってきたため、直列型やV型エンジンの重心は高くなっている。これに対し水平対向エンジンでは、クランクシャフトとほぼ同じ高さにシリンダーヘッドがあり、これらの機構を採用しても静的な重心が高くならない。
- ^ 筒内圧解析、ボアに対するピストンピンオフセット、ピストンスカートプロフィールの最適形状化など動的なシミュレーション技術の利用など
- ^ 国鉄がディーゼル機関車に使用していた縦型のDMF31系エンジンを気動車用に水平シリンダー化したエンジンの開発を進めたが、大径シリンダーの水平配置という特殊な構造のために潤滑系の問題が発生したことなどで開発が難航して、結局実用化されなかった[20]。なおこの経験は、その後に開発・実用化された180°V型エンジンの潤滑設計などに生かされている。
- ^ なおボクサーエンジンであっても6気筒エンジンの場合は、片バンク3気筒がクランク角240°ごとの等間隔燃焼であり、片バンクごとに排気管を集合しても干渉しない。
- ^ "Quad"(四-)+ "hydro"(水-)+ "horizontal"(水平の)のかばん語。
- ^ a b 同社の2017年3月31日までの正式社名は富士重工業だった。
- ^ 前者はジェミネットIIとアスカ(2代目)、後者は9-2Xが該当する。
- ^ トヨタ自動車との共同開発車としてはスバルのBRZと、その姉妹車であるトヨタ・86が該当する。
- ^ 速く走るためにタイヤを路面に押しつけることに利用する、車体周囲を流れる空気による下向きの力。この時代の当初は飛行機の翼を裏返したような断面のサイドポンツーンで下向きの揚力を発生させているようにもみられたが、実際には車体底面と路面との間で構成されたベンチュリ内の高速気流によって負圧を生じさせて、車体を路面に吸い付かせていた。
- ^ 鉄道車両むけ直列エンジンでも床上搭載が可能な機関車においては潤滑に有利な縦型が主流である。気動車でも技術的観点から黎明期には縦型エンジンの採用例があったように、横型だけで縦型のものが皆無という訳ではないが、近年は低重心化・低床化のニーズが高まっているため、横型化への要求は強い。
- ^ 当初は新開発のDMF31HS(直列6気筒横型)搭載が目論まれていたが、不具合が多く解決まで時間がかかるとして変更された。
- ^ 同時期にDML30HS系の片バンク6気筒分をなくした直列6気筒の派生エンジンDMF15系が並行開発されており、キハ90形には300馬力のインタークーラーターボ仕様が搭載された。DMF15系は次世代特急形気動車用エンジンにはならなかったものの、車載発電機用や、デチューンされた上でキハ40系気動車の駆動用として車両に搭載される事となった。
- ^ 新しい直列6気筒エンジンは、特急形気動車ではキハ185系以降の新型車から採用。直接噴射式のインタークーラーターボ付きで排気量11 - 15リットル級、330 - 460馬力程度で、1両あたり2基搭載した車両も多い。なお大柄な180°V型12気筒のDML30系エンジンでは、2基搭載はほぼ不可能である。
出典
- ^ モーターファン・イラストレーテッド, vol.20, p.52.
- ^ 金子浩久『自動車 カラー&図解ですぐわかる』主婦の友社〈主婦の友ベストBOOKS〉、2010年、63頁。ISBN 9784072700822。
- ^ “JISB0108-1:1999”. kikakurui.com. 2021年9月1日閲覧。
- ^ “ISO 2710-1:2017(en) Reciprocating internal combustion engines — Vocabulary — Part 1: Terms for engine design and operation”. ISO (2017年). 2021年9月3日閲覧。 “3.17.10 horizontally opposed engine: engine with two cylinder banks located in the same plane on opposite sides of the crankshaft "クランクシャフトの両側の同一平面上に2つのシリンダバンクを配置したエンジン"”
- ^ “Prinzip und Technik des Boxermotors” (ドイツ語). boxermotor.com. 2021年9月1日閲覧。
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- ^ “マツダにもボクサーがあった…スバルの「BOXER」はかつてはマツダが所有する商標。スバルが入手した経緯とは”. ドライバーWeb (2022年3月15日). 2023年11月27日閲覧。
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- ^ “Flat-12 engine”. Ferrari.com. Ferrari S.p.A.. 2013年12月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年12月21日閲覧。
- ^ No.0621「ルネメッジのこと」- Organisation Voice 2004/04/01菅原さんからの手紙 2023年8月27日閲覧
- 1 水平対向エンジンとは
- 2 水平対向エンジンの概要
- 3 名称
- 4 用途
- 5 参考文献
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