葵
「葵」とは・「葵」の意味
#「フユアオイ」という意味「葵」には「フユアオイ」という意味がある。言葉の歴史は古く、7世紀後半から8世紀後半にかけて編纂された万葉集には「梨棗 黍に粟嗣ぎ延ふ田葛の 後も逢はむと 葵花咲く(なしなつめ きびにあわつぎ はうくずの のちもあわんと あうひはなさく)」という「葵」に関する歌があるほどだ。なお、フユアオイは種子を食べられるだけでなく、薬としても使われていたため、平安時代には広く栽培されていた。
#量などをはかるという意味
「葵(あおい)」という漢字の由来には諸説ある。だが、一般的にはフユアオイの性質が漢字の元であるとするのがよく知られている説だ。フユアオイは太陽に向かってお辞儀をするように伸びる性質がある。それに合わせて「葵」という漢字は作られたそうだ。「葵」に使われている「癸」は太陽から方角を知るための道具を表している。これが草冠と結びつくことで「太陽に向かって伸びていく植物」すなわち「葵」を指すようになったとされている。さらに「癸」が持つ「方位をはかる」という意味が変化し、「葵」には「(量などを)はかる」という意味が付け加えられるようになった。
#源氏物語第9巻
源氏物語の第9巻は「葵(あおい)」と呼ばれている。この巻では、六条御息所(ろくじょうみやすどころ)と葵の上(あおいのうえ)との車争い、恨みに思った六条御息所の生霊によって葵の上が急逝、光源氏が紫の上との結婚を決めるまでが描かれている。葵の上とは「源氏物語」の登場人物の1人で、光源氏がむかえた最初の正妻だ。彼女は源氏との間に夕霧をもうけた。なお、「葵の上」という名称は、後世に読者がつけた名前である。源氏物語第9巻が、葵の上が中心となる物語であることから、ちなんで名づけられた。
#アオイ科の植物全般を指す
古語ではなく現代語として『「葵」とは・「葵」の意味は?』と問われた場合、一般的にはアオイ科の植物全般を指す。アオイ科の植物は双子葉植物のアオイ目の科に分類されている。主に熱帯地帯でよく成長する植物で花は両性花である。赤・ピンク・白・黄・紫などの花をつけ、その花弁は5枚、筒状の雄蕊が中央にあるのが特徴だ。観賞用の花であるタチアオイ・ウスベニアオイ・ハイビスカスなどがアオイ科の植物としてよく知られている。また、食用ではオクラ・カカオ・ドリアンなどのアオイ科の植物がその仲間として挙げられる。現在、日本で根付いている「葵」の大部分は帰化種だ。在来種はハマボウなど数種類に限られている。
#人名としての意味
「葵(あおい)」は男の子・女の子ともに人気が高い名前である。「葵」1文字だけでなく、違う漢字と組み合わせた名前も少なくない。「葵」から連想されるイメージは多く、さまざまな意味を「葵」に込めることができる。例えば、太陽に向かって伸びる性質から「凛とした姿」「たくましさ」を、花のイメージから「かわいらしさ」「華やかさ」といった意味を名前に持たせるのが一般的だ。また、名前に花言葉の意味を持たせているケースも珍しくない。例えば、「タチアオイ」の花言葉には「豊かな実り」「大望」「気高く威厳に満ちた美」、フタバアオイの花言葉なら「細やかな愛情」があり、名前にそれらの意味が込められている場合がある。
#家紋としての意味
江戸幕府の将軍家であった徳川家の家紋「葵巴(あおいどもえ)」を指して「葵(あおい)」と呼ぶ。「葵巴」はひいては江戸幕府の象徴ともなった。その意匠は、フタバアオイの葉を3枚使った巴紋(ともえもん)で、「徳川葵」「葵の御紋」「三つ葉葵」と呼ばれることもある。
徳川家の家紋の「葵」の由来には諸説あるが、京都の賀茂神社が元になったという説がよく知られている。賀茂神社が催す「葵祭(あおいまつり)」で神聖な植物として「葵」が用いられており、これをモチーフにして賀茂神社の紋は「二葉葵(ふたばあおい)」になった。後世になり、徳川家の元となる松平氏が所領内にあった賀茂神社の氏子であることを理由に、家紋に葵の紋を用いるようになった。これが後に意匠を変化させ、「三つ葉葵」が登場したのだと考えられている。徳川家康は徳川家の権威を保持し、自らの威厳を示すため、「三つ葉葵」だけでなく葵の紋の使用を厳しく制限した。
#色の名前としての意味
「葵(あおい)」もしくは「葵色(あおいいろ)」は、RGB三原色の「R:170・G:137・B:189」、CMYKでは「C:38・M:50・Y:00・K:00」、ウェブカラーなら「#AA89BD」にあたる色だ。平安時代にはすでに存在した伝統色の1つで、薄い灰色が混じった明るい紫色をしている。葵はさまざまな色の花を付けるが、そのなかでも高貴な色とされていた「紫」が「葵」と呼ばれるようになった。
#重(かさ)ねの色目
「葵(あおい)」は「重ねの色目」としての意味も持っている。「重ねの色目」とは衣の裏表や2枚以上の衣を重ねる際の色の組み合わせのことだ。この色の組み合わせの概念は、平安時代から用いられている。四季の草花樹葉になぞらえて名づけられており、「葵」はその1つである。平安時代における「葵」は、表は薄青、裏は薄紫で、陰暦の4月ごろに用いられていた。
# 蕎麦(そば)の女房詞(にょうぼうことば)
女房詞とは、室町時代ごろから宮廷などに仕える女性が用いるようになった、隠語のような言葉である。「葵(あおい)」は女房詞として蕎麦を表している。蕎麦の実は三角(錐)の形をしているため、三角(みかど)が帝(みかど)に通ずるとして、「蕎麦」という言葉が京都御所では避けられていた。そこで、葵の葉が三角状で蕎麦の実とよく似た形をしていることから、蕎麦を「葵」と呼ぶようになった。
#日本の地名
日本には「葵(あおい)」とつく地名が複数存在している。静岡県静岡市葵区、名古屋市の東区・中区・千種区の地名、山口県山口市の地名などは「葵」と呼ばれる土地だ。また、京都市左京区下鴨にある学区を指して「葵」と呼ぶこともある。
#戦前の駆逐艦の名前
「葵(あおい)」は、大日本帝国海軍の駆逐艦。樅型駆逐艦の10番艦を指す。1940年4月1日に、この駆逐艦は第三十二号哨戒艇に改称された。1941年12月22日、「葵」はウェーキ島上陸作戦の接岸において座礁してしまう。その後、放棄されることとなった。
「葵」の読み方
一般的な「葵」の読み方は、音読みの呉音では「ギ」、漢音では「キ」だ。訓読みでは「あおい」、名乗り訓だと「あおい」「まもる」である。なお、「葵」を「あおい」と呼ぶようになった由来は、太陽に向かって伸びる葵を「仰ぐ日(あおぐひ)」と表現していたのが変化して、次第に「あおい」と呼ぶようになったと考えられている。#古語としての「葵」の読み方
古語では「葵」と書いて「あふひ」と読むことがある。そのため、和歌においては「あふひ」を言葉が近い「逢う日(逢う人))」とかけて用いるのが一般的であった。例えば新古今和歌集にある「古への あふひとびとは咎むとも なほそのかみの 今日ぞ忘れぬ」という藤原実方の歌では、「あふひと(逢う人)」と「あふひ(葵)」が掛けられている。
#名前としての「葵」の読み方
名前として「葵」が用いられる場合、その読み方は複雑だ。一文字で「あおい」と読むこともあれば、「葵」を「あお」と読み、ほかの漢字と組み合わせて「あおい」と呼ぶこともある。例えば、女の子の名前では「葵依」「葵愛」、男の子では「葵叶」「葵大」「葵空」、これらはすべて「あおい」と読む。また、「葵」を「き」と読むことも少なくない。「一葵(かずき)」「夏葵(なつき)」「陽葵(はるき)」などが例として挙げられる。「愛葵衣(あおい)」のように「あ」「お」「い」の一文字に「葵」をあてる名前もある。
#難しい「葵」の読み方
「葵」はほかの漢字と組み合わさることで難読となる言葉が複数存在している。例としては「向日葵(ひまわり)」「秋葵(おくら)」「山葵(わさび)」「菟葵(いそぎんちゃく)」などが挙げられる。
あおい〔あふひ〕【×葵】
読み方:あおい
1
㋐アオイ科のフヨウ属・トロロアオイ属などに含まれる植物の総称。タチアオイ・モミジアオイ・トロロアオイ・ゼニアオイ・フユアオイなど。《季 夏》
㋑アオイ科の双子葉植物の総称。温帯から熱帯にかけて分布し、230属4300種ほどある。フヨウ・ムクゲなど。
㋒フユアオイの別名。
3 《徳川氏の紋が「葵巴(あおいどもえ)」であったところから》江戸幕府の象徴。
4 襲(かさね)の色目の名。表は薄青、裏は薄紫。陰暦4月に用いた。
源氏物語第9巻の巻名。光源氏21歳から22歳。葵の上と六条御息所(みやすどころ)との車争い、夕霧の誕生、御息所の生き霊にとりつかれた葵の上の急逝、源氏と紫の上との結婚を描く。
あおい〔あふひ〕【葵】
き【×葵】
葵
葵
葵
葵
葵
葵
葵
葵
葵
葵
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/22 05:59 UTC 版)
葵(あおい)
植物の名称
家紋の種類
地名
- 葵区 - 静岡県静岡市葵区
- 葵 (名古屋市) - 名古屋市東区・中区・千種区の地名
- 葵 (山口市) - 山口県山口市の地名
- 葵 - 京都の元学区のひとつ。京都市左京区下鴨の北半で、京都市立葵小学校校区に相当。
人名
日本人の姓および名。
実在の人物
- 葵 (女優) - 日本の女優。
- 葵 (ミュージシャン) - ヴィジュアル系バンド「the GazettE」のメンバー(ギタリスト)。男性。
- 葵 (歌手) - ヴィジュアル系ロックバンド「彩冷える」のメンバー(ボーカル)。男性。
- 葵 (アーティスト) - ダンスボーカルユニットTryCourのメンバー。女性。
- 葵 (AV女優) - エスワンに所属していたAV女優。現芸名は小野夕子で、ティーパワーズ所属。
- 葵 (タレント) - 女性タレント。旧芸名は松田紗和。
- 葵つかさ - AV女優。
- 葵百合香 - AV女優。
- 葵ゆりか - 女性タレント、モデル、元グラビアアイドル、元レースクイーン。
- 中村葵 - タレント、リポーター、グラビアアイドル。
- 森本葵 - 陸上競技指導者、体育学者。葵の読み方は「まもる」。男性。
- アオイヤマダ - ダンサー。
架空の人物
作品名
- 葵 徳川三代 - 2000年放映の大河ドラマ
- 葵 (源氏物語) - 小説『源氏物語』五十四帖のひとつ。第9帖
- 葵上 - 能の一つ。源氏物語に出てくる六条御息所が葵の上を恨み取り殺す話を題材にしたもの
- 葵 - あいみょんの曲。シングル『空の青さを知る人よ』に収録。
その他
関連項目
葵
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/13 07:46 UTC 版)
大刀「慶寅」の鞘で相手の足を払い、ヒットすると光を伴って上昇しながら相手を斬りつけていく。
※この「葵」の解説は、「徳川慶寅」の解説の一部です。
「葵」を含む「徳川慶寅」の記事については、「徳川慶寅」の概要を参照ください。
葵
葵
「葵」の例文・使い方・用例・文例
- あなたが寿司を食べた時、山葵がついていましたか?
- 向日葵が一番好きだ。
- 俺は葵の指さした場所に胡坐をかく。
- 私は明日葵さんに会いに熊本へ行くつもりです。
- 葵さんは踊るのが何と上手なのだろう。
- 葵さんは優れたダンサーです。
- 葵さんは上手に踊ります。
- 葵さんは何と踊るのが上手なのだろう。
- 葵さんは何と優れたダンサーでしょう。
- 葵さんはなんて優れたダンサーなのでしょう。
- 葵さんはダンスをします。
- 葵さんはダンサーになりました。
- 葵さんの趣味は踊ることです。
- 山葵{わさび}が利いたか目に涙
- 天竺葵
- 山葵が利いた
- 西洋山葵
- 卸し山葵
- 山葵卸し
- 山葵醤油
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