セム【SEM】
読み方:せむ
《scanning electron microscope》⇒走査型電子顕微鏡
走査電子顕微鏡 SEM: scanning electron microscope
走査電子顕微鏡(セム)
【英】:scanning electron microscope
バルク試料の表面を微小電子プローブで走査し、表面から放出される二次電子や反射電子を検出器で受け、その強度をプローブ走査に同期させて、コンピュータモニタ上に輝点列の像として表示する電子顕微鏡。二次電子からバルク試料表面の微細な構造や形態が、反射電子から組成の違いを観察できる。EDSやWDSをはじめとする様々な分析機能を付加して使われている。SEMの分解能を決める重要な要素は入射ビームの試料上でのプローブサイズである。プローブサイズを小さくするには第一に電子源の大きさを小さくすることである。搭載されている電子銃が冷陰極型電解放出型電子銃,ショットキー型電子銃,LaB6電子銃,タングステン電子銃の順でプローブサイズは大きくなる。第二に対物レンズのタイプによって絞れるビームサイズが決まる。対物レンズには1)アウトレンズ、2)シュノーケルレンズ、3)インレンズがある。アウトレンズ型では大きな試料を傾斜しても像が得られるように、試料を対物レンズの下方に置く。試料に対する制限がゆるい代わりにレンズの焦点距離が長くなり小さいビームは得られにくい。インレンズ型ではTEMのように対物レンズ中に試料を挿入する。焦点距離を短くでき小さなプローブが得られる。ただし、試料の大きさは数mmに制限される。シュノーケル型(潜水用具に形が似ていることによる命名)は前二者の中間的存在で、試料はレンズの下に置かれ,比較的小さいプローブと比較的大きい試料を扱えるように設計されている。低い加速電圧では色収差の効果により分解能は下がる。分解能は加速電圧20〜30kVで定義されている。分解能の具体的数値は,超高分解能型で約1nm、汎用型で10nm程度。Csコレクタ、Ccコレクタを使用すると入射ビームの微小化が可能であるが、取り込み角が大きくなるために焦点深度が浅くなりすぎる欠点がある。入射電子の加速電圧を下げると電子の進入深さが減り,反射電子によって生成される二次電子の空間的な広がりが減るために像のコントラストが向上する。低加速の利点はバックグラウンドの減少のほかに帯電の減少、試料損傷の減少がある。SEMでは帯電が像の質を落とす。入射電子量が流出電子量を上回ると帯電が起き、像が乱れ異常なコントラストが形成される。非伝導性試料の場合には,帯電防止のために貴金属やAl,Cのコ−ティングが行われる。低真空SEMではコーティングなしに非伝導性試料を観察できる場合もある。
走査電子顕微鏡(セム)
【英】:scanning electron microscope
バルク試料の表面を微小電子プローブで走査し、表面から放出される二次電子や反射電子を検出器で受け、その強度をプローブ走査に同期させて、コンピュータモニタ上に輝点列の像として表示する電子顕微鏡。二次電子からバルク試料表面の微細な構造や形態が、反射電子から組成の違いを観察できる。EDSやWDSをはじめとする様々な分析機能を付加して使われている。SEMの分解能を決める重要な要素は入射ビームの試料上でのプローブサイズである。プローブサイズを小さくするには第一に電子源の大きさを小さくすることである。搭載されている電子銃が冷陰極型電解放出型電子銃,ショットキー型電子銃,LaB6電子銃,タングステン電子銃の順でプローブサイズは大きくなる。第二に対物レンズのタイプによって絞れるビームサイズが決まる。対物レンズには1)アウトレンズ、2)シュノーケルレンズ、3)インレンズがある。アウトレンズ型では大きな試料を傾斜しても像が得られるように、試料を対物レンズの下方に置く。試料に対する制限がゆるい代わりにレンズの焦点距離が長くなり小さいビームは得られにくい。インレンズ型ではTEMのように対物レンズ中に試料を挿入する。焦点距離を短くでき小さなプローブが得られる。ただし、試料の大きさは数mmに制限される。シュノーケル型(潜水用具に形が似ていることによる命名)は前二者の中間的存在で、試料はレンズの下に置かれ,比較的小さいプローブと比較的大きい試料を扱えるように設計されている。低い加速電圧では色収差の効果により分解能は下がる。分解能は加速電圧20〜30kVで定義されている。分解能の具体的数値は,超高分解能型で約1nm、汎用型で10nm程度。Csコレクタ、Ccコレクタを使用すると入射ビームの微小化が可能であるが、取り込み角が大きくなるために焦点深度が浅くなりすぎる欠点がある。入射電子の加速電圧を下げると電子の進入深さが減り,反射電子によって生成される二次電子の空間的な広がりが減るために像のコントラストが向上する。低加速の利点はバックグラウンドの減少のほかに帯電の減少、試料損傷の減少がある。SEMでは帯電が像の質を落とす。入射電子量が流出電子量を上回ると帯電が起き、像が乱れ異常なコントラストが形成される。非伝導性試料の場合には,帯電防止のために貴金属やAl,Cのコ−ティングが行われる。低真空SEMではコーティングなしに非伝導性試料を観察できる場合もある。
- ウィンドウレス(窓材無し)型EDS検出器
- 電子プローブマイクロアナライザ
走査型電子顕微鏡
走査型電子顕微鏡
この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。2021年7月) ( |
走査型電子顕微鏡(そうさがたでんしけんびきょう、英語: scanning electron microscope、SEM)は電子顕微鏡の一種である。電子線を絞って電子ビームとして対象に照射し、対象物から放出される二次電子、反射電子(後方散乱電子、BSE)、透過電子、X線、カソードルミネッセンス(蛍光)、内部起電力等を検出する事で対象を観察する。通常は二次電子像が利用される。透過電子を利用したものはSTEM(走査型透過電子顕微鏡)と呼ばれる。
TEMでは主にサンプルの内部、SEMでは主にサンプル表面の構造を微細に観察する。
原理
透過型のように試料全体に電子線を当てるのではなく、走査型では細い電子線で試料を走査(scan)し、電子線を当てた座標の情報から像を構築して表示する。観察試料は高真空中(10-3Pa以上)に置かれ、この表面を電界や磁界で絞った電子線(焦点直径1-100nm程度)で走査する。走査は直線的だが、走査軸を順次ずらしていくことで試料表面全体の情報を得る。
線源
光学顕微鏡の光源にあたるSEMの電子線源(電子銃)には幾つか方式がある。以前はタングステンヘアピンや六ホウ化ランタン(LaB6)の熱電子銃を備えたものが多かったが、現在は電界放射型(field emission、FE)のものも普及してきている。これは陰極(冷陰極)に高電圧を印加し、直下の第一陽極によって電子線を加速、続く第二陽極以降で電子線束を制御するものである。FEは熱電子銃と比較して解像度が高く高倍率での観察が可能であり、フィラメント(プローブ)の寿命が長いという利点がある。一方、低倍率観察においては、大電流が得られる熱電子銃の像質がFEを上回ることもある。FEを用いたSEMはFE-SEMなどと呼ばれる。
レンズ
加速された電子線(0.1-30kV)は、集束レンズ(コンデンサレンズ)及び対物レンズで絞られる(レンズといっても光線が可視光ではないのでガラスレンズは用いられず、電子線に干渉できる電場や磁場を利用した電子レンズが使用される)。電子線束を制御するためのレンズには磁界型と電界型があるが、結像制御には磁界型レンズ(電磁レンズ)が用いられる。一方、収差の大きい電界型レンズ(静電レンズ)は電子線の加減速に利用される。レンズで絞られた電子線は走査コイルによって制御され、試料表面を走査していく。
情報の検出と画像処理
電子線が試料に当たると、二次電子の放出など様々な現象が起こる。試料から発せられるこれらの信号は検出器で検出され、光電子増倍管による増幅を経てCRTに送られる。CRTでは信号量の違いによりその輝度を変調する。TEMの場合は電子線を蛍光板に当てて蛍光を直接観察するが、SEMでは輝度変調信号の処理結果が像としてディスプレイに表示され、これを観察することになる。SEMの像表示は内部処理を経ているぶんだけ時間差があり、観察点の移動や倍率変更がタイムラグを伴うという欠点がある。逆に信号処理を調節することで、加速電圧などの観察条件を変更せずに観察像の輝度やコントラストを変えられるというメリットがある。
二次電子は等方的に発するので電界をかけて収集し、電荷量を輝度とする。画像の見え方は、入射ビームに対して垂直な面ほど輝度が低くなり、また、とがった部分ほど輝度が高くなる(エッジ効果)。
特徴
SEMは光学顕微鏡と比較して焦点深度が2桁以上深く、広範囲に焦点の合った立体的な像を得ることができる。観察物の外形を把握しやすい一方、対象の内部に関する情報はほとんど得られないので、これはTEMなど他の手段に頼ることになる。ただし、観察物をフリーズフラクチャ(凍結破断)法などで処理すれば、ある程度の内部観察も可能である。
利用
回路や半導体部品などの品質チェックの他、適切な前処理を踏むことで生体試料の観察も可能である。細胞のような導電性の低いものを高真空二次電子法で高加速電圧をかける場合、試料はあらかじめ導電性の物質(白金パラジウム、金、炭素など)でコートしておく必要がある。これは二次電子を効率良く放出させるため、試料帯電(チャージアップ)による露出オーバーと像の歪みを防ぐために電子線の余剰エネルギーを逃がし、試料表面の破損を最小限度に留めるためである。低真空反射電子法(N-SEM/WET-SEMなど)では絶縁体の観察においてもコートは必要ない。特性X線を利用した元素分析など、分析用途で用いるSEM(EPMA)でも表面コートの必要のない低真空反射電子法は好まれる。
表面の構造というのは、実のところ光学顕微鏡の苦手とするところである。普通は双眼実体顕微鏡が使われるが、倍率をあまり上げられず、解像度も低い。細かい部分は普通の光学顕微鏡で、ピントをずらしながら観察するほかなく、もし試料が不透明であれば打つ手なしである。たとえばアリの体表の毛などは、なかなか調べることが難しかった部分である。走査型電子顕微鏡を使えば、このような部分の観察が簡単であり、分野によっては分類研究等には欠かせないとまで言われるようになった。
参考文献
- 『分析機器の手引き』(第14版)社団法人日本分析機器工業会。
関連項目
- 電子顕微鏡
- 透過型電子顕微鏡(TEM)
- 走査型透過電子顕微鏡(STEM)
- エネルギー分散型X線分析(WDS)
- 電子線マイクロアナライザ(EPMA)
- エネルギー分散型X線分析(EDX、EDS)
- 電子線描画装置
- マンフレート・フォン・アルデンヌ(走査型電子顕微鏡の開発者)
- 原子間力顕微鏡(AFM)
脚注
外部リンク
- scanning electron microscopeのページへのリンク