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note.com/yasumisha
こんばんは。Sagishiです。 今回は、「日本語はラップに向いてない言語だ」という『俗説』について書いていこうと思います。 「日本語はラップに向いてない」つまり「日本語はrhymeするのに適さない言語だ」という意味の主張ですね。これは本当によく主張される言説です。ネットでもフィジカルの本でも、よく見かけます。 それこそ『マチネ・ポエティク詩集』(1948年)が出版されて以来、実に80年近くもこの「同語反復」は続いているといえます。直近で読んだ本だと川原繁人『言語学的ラップの世界』(2023年)にもそれに類するような記載があり、同じ主張が再生産され続けています。 しかし、「日本語はrhymeするのに適さない言語だ」という主張は、それがなんども繰り返される割には、科学的・学術的な根拠が明確ではありません。「その主張が正しいのか」をだれも検証・証明していない状況です。 この記事では、そのような
こんばんは。Sagishiです。 今回は「日本のHIPHOPをグローバルなレベルにするためには」、何を意識しないといけないのか、ということについて、自身の備忘録も兼ねて書いていこうと思います。 あえてグローバルと書いてはいますが、要するに「USで通用するためには」という意味です。わたしは、現在の日本のHIPHOPはある分かれ道に立っているのではないか、と若干ながら感じています。 それは、「日本人だけに通用する道を行くのか」と「USにも通用する道に行くのか」という岐路に立っているのでは、ということです。 特に最近、色々なひとの努力によって、USのHIPHOPの評価基準や価値観が流入しやすい環境になってきていると感じており、ゆえに日本のHIPHOPに存在する問題が浮き彫りになってきているなと感じます。 日本の音楽市場は今後シュリンクしていくなかで、HIPHOPに限らず、いずれは日本のアーティス
こんばんは。Sagishiです。 今日はあまり気が進みませんが、文化盗用"cultural appropriation"について話していこうと思います。あまりにも軽率な意見をもつひとが多すぎるので、自分自身の考えをまとめるためにも書こうと考えました。 1 文化盗用とは 文化盗用"cultural appropriation"というのは、わたしの理解では、他国・他文化のnation(共同体)あるいはunity(団結)の核心的アイデンティティを無理解・無遠慮に侵害・毀損し、それらを装飾的に扱っていると見做せるもの、またそれに準ずる態度・言動を意味します。 よくdreadlocks(ドレッドヘア)について議論になります。その文化圏に属さないひとは、「dreadlocksは単なる髪型だ」「エジプト人も同じ髪型をしていた」などと簡単に言いますが、それは実際には違います。 この問題というのは、核心には
こんばんは。Sagishiです。 先月、川原繁人さんの『言語学的ラップの世界』という本が出版されたので読んでみました、という記事です。 結論からいえば、この本には著者の推測・思い込みによる記述が多数含まれており、科学的な根拠がなく、妥当性に疑義があるような内容、また曖昧な表現が散見されます。 今回の記事では、わたし自身の考えの備忘録も兼ねて、色々とツッコミを入れていきます。舌鋒鋭い場面もあるかと思いますが、とはいえラップをまともに研究題材にしたことがある学者は貴重であり、川原繁人さんの研究論文などは、今後もわたしは色々引用していくことになるでしょう。そのような前提のもとで、本記事を読んでいただければ幸いです。 ※あらかじめ書いておきますが、本記事はめちゃくちゃ長いです。 1 音節の長さとrhymeの関係1-1 成立条件への関与宇多丸は『バースデイ』の中で、「待つぜ」と「バースデイ」で韻を踏
こんばんは。Sagishiです。 今回は日本語の押韻にとって特徴的な問題である、「複数音制約」について書いていきます。 1 複数音制約 日本語は、複数音で1つのアクセント(トーン)を構成する言語です。最低でも1音節2モーラ存在しないと、日本語は基礎的なアクセントを構成できません。 「複数音で1つのアクセントを構成する言語」というのは、現在わたしが情報として知る限りだと、日本語の他には韓国語・慶尚道方言しかない状態です。 英語やイタリア語やフランス語のストレス音節が複数音節にまたがることはないですし、中国語の声調が複数音節にまたがることもないです。 このような特性から、上記の言語におけるrhymeというのは基本的にアクセントが実現される1音節内で行われます。しかし、日本語は根本的に複数音でアクセントが実現されるので、rhymeが行われる区間(rhyme区間)が1音節ないしは1モーラで完結しな
こんばんは。Sagishiです。 先日、YOASOBI『アイドル』について記事を書きましたが、下記のような反証記事があることを教えていただきました。 こういうカウンターが来るというのは、本当に素晴らしいと思います。このような批評はどんどんやるべきという立場なので、とても好意的に受け取っています。 ただ、色々と上記の文章には誤認があるようですので、追加的な記事としてわたしからも反証をさせていただきます。 1 rhyme schemeについて「media」「mysterious」「area」の組、 「smile」「side」「lies」の組で踏んでいます 『『アイドル』の異様さの評価』の異様さの評価 ~『アイドル』のラップパートについて~ 「smile」「side」「lies」でrhymeされていると仰っていますね。これはつまり、下記のようなスタイルでrhymeされているという主張のようです。
こんばんは。Sagishiです。 先日書いたYOASOBI『アイドル』記事の補足です。 1 英語のストレス音節について 前回の記事で、「media/mysterious」以外に韻踏んでないとわたしは書きました。 Couldn't beat her smile, it stirred up all the media Secret side, I wanna know it, so mysterious Even that elusive side, part of her controlled area Complete and perfect, All you say is a bunch of lies Dear miss genius idol, unmatched もしかしたら「あれ? areaは韻踏んでないの?」と疑問に思ったひとがいるかもしれません。「area」は「media/
こんばんは。Sagishiです。 今回は、YOASOBI『アイドル』について幾つか論評をしていきたいと思います。 わたしは『アイドル』を幾つかの点で好意的な評価をしていますが、いっぽうで懸念や悪い評価をしている箇所もあります。この破天荒な『アイドル』という楽曲を通して、日本の音楽シーンそのものについても考えたいです。 1 スタイルの追究による異様化1-1 J-POPの進化の歴史『スタイルの追究』 『アイドル』を初聴したさいの印象ですが、「マジでカオスで変な曲」「すごい強引」だと感じました。そう感じる理由というか原因は明白で、展開や転調の過剰さと、ボーカルの声の演技です。 非常に曲展開の切り替わりが早く、まるでジェットコースターのような印象を受ける楽曲です。こうなった理由を紐解いていくと、近年の日本のメジャー音楽における、米津玄師とOfficial髭男dismの影響をどうしても話す必要があり
こんばんは。Sagishiです。 今日は、「押韻」の本質とは何かを考えていきます。 1 母音中心主義の問題 まず最初に話していくのは、日本語ラップが発達させた「母音」中心による押韻理解についてです(仮にここでは『母音中心主義』と呼びます)。 『母音中心主義』とは、例えば『母音中心主義』という語の子音を外して母音だけに還元・分解し、「おいんうーいんうい」のように表す手法、そのような押韻観を差します。 この発明によって、日本語で押韻を作ることが飛躍的に容易になり、日本語ラップや日本語の押韻は発達してきた、と考えています。 しかし、『母音中心主義』には多くの問題があります。それをここでは書いていきます。 1-1 音声で母音分解をしていない 例えば、先日こんな内容のツイートを見つけました。 「押韻主義」と「お墨つき」は踏んでるでしょ。 母音に直したら、どっちも「おういうい」 このツイートには典型的
こんばんは。Sagishiです。 今回は『語感踏み』について、記事を書いていきます。 最近言語学まわりの知識がつきだしたことで、『重音節韻』を明確に説明できるようになりました。「重音節韻」を理解したことで、『語感踏み』の定義が、わたしのなかでよりクリアになりました。 そこで、改めて『語感踏み』とはどのようなものなのか、その仕組み・定義について検討・考察をしようと思いました。 ※本記事は、2024年1月23日に大幅な改訂を加えました。 1 『語感踏み』とは 『語感踏み』とは、2019年1月頃からラッパーの韻マンが主張をし始めた押韻のスタイルのことを差します。 具体的には、下記のような例を差します。 A:ニジイロクワガタ [ニ・ジー・ロ・ク・ワ・ガ・タ] B:伊能忠敬 [イ・ノー・タ・ダ・タ・カ] C:ボイスメッセージ [ボ・イ・ス・メ・ッセー・ジ] D:ホメオティック遺伝子 [ホ・メ・オ・テ
こんばんは。Sagishiです。 2016年3月12日に、niconicoのブロマガで『VOCALOIDでめぐるヒップホップ!!』という記事を書きました。これまで多くのかたに読んでいただき、12,000PVまでいきました。ありがとうございます。 今年の10/7にniconicoのブロマガサービスが終了することになったので、noteに記事の引っ越しします。 特に大きな変更はありませんが、note向けに内容は修正しています。 1 ~HIPHOPってなんぞや の巻~ ヒップホップの起源は、1970年代にさかのぼります。アメリカのブロンクス地区の「ブロック・パーティ」と呼ばれるパーティからはじまりました。公園でDJが音楽を流し、踊ったりしながら楽しむ、というようなパーティです。するとある時、DJは「みんな音楽のサビじゃなくて間奏で一番盛り上がってね?」ということに気づきます。 「じゃあ間奏を繋げて
こんばんは。Sagishiです。 今回は、日本語の完全韻(パーフェクト・ライム)の定義をまとめたので記事にしました。 英語のパーフェクト・ライムの定義は『英語のライムタイプ②:『パーフェクト・ライムの条件』について補足』を参照してください。 1 日本語の完全韻(パーフェクト・ライム)●日本語の完全韻(パーフェクト・ライム) ・単音節の場合 ①音節の母音が一致すること ②音節の頭子音が一致しないこと ③重音節の場合は、特殊モーラも一致すること ・多音節の場合 ①すべての音節の母音が一致すること ②頭子音がすべての音節に渡って一致しないこと(同音異義語ではない) ③重音節が含まれる場合は、すべての重音節の特殊モーラも一致すること まず、単音節の場合の例を見ていきましょう。 ・軽音節の場合 蚊 [カ] 田 [タ] ・重音節の場合 缶 [カン] 単 [タン] Car [カー] Bar [バー] 次
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