他に予定している記事はあるんだけどなー、 うーむ・・・。まとめるのがちょっとメンドーなので、とりあえずは逃避みたいな感じで前回の続きをアップします。
日本の小説の続きですが、書棚でいうと、最上段から下の段に移ってきて、いろんな「雑多な」本が並んでいるという感じですかねー。
「なんでこんな本が?」というよりも、「それなら、自分が読んだ「××」という本は絶対オススメだぞ!」という読み方を期待します、ってところでしょうか。(当時も今も。)
☆印はとくに推奨。×印は品切れまたは絶版中の本(多すぎる!) △は絶版・品切れでも単行本なら出ている本。
× 51 | 井上ひさし | しみじみ日本 乃木大将 | 新潮文庫 | 51=井上ひさしの芝居はどれもユーモアに満ち、なおかつ反骨精神に溢れている。ぜひ舞台を観てほしい。 52=1960年代を知ってるオジサンたちには懐かしく、そして当時の熱気が甦ってくる。たしかに、大変動の時代であった。 53~58=1949年生まれの私とほぼ同世代の作家による現代小説。53は、純文学でありSFであり音楽小説であり社会小説であり冒険小説であり風俗小説であり、そして失敗作なのだそうだが、とにかくおもしろいからいい。54は大ベストセラー「ノルウェイの森」の作家の代表的作品。把握しがたい現代とその気分を、洒落た(キザな)警句を散りばめつつ、さめた筆致で描く。社会科教師としての推薦作が55。変貌する現代農村社会で情況を切り拓く展望を追求・・・うーむ、60年代的発想&表現だなあ。56は楽しく読めるというめずらしい純文学。60年代後半は四国の小都市の高校生もエレキに熱中。私も四国(徳島だけど)、懐かしいなあ、うるうる。女子との<距離感>などよく捉えている。純情だったもんだ、ウン。57は高校3年だった著者自身の1969年のシゲキ的日々が下敷き。バリケード封鎖に無期謹慎等、エネルギッシュでカゲキで、かつナイーブな青春小説。小林信彦「背中あわせのハート・ブレイク」(「世間知らず」から改題)(新潮)、松村雄策「苺畑の午前五時」(ちくま)等の自伝的小説の高校時代と比べてみて。58、まだ代表作といえる作品のない作家だが、どれも楽しく、けっこう鋭い。 59・60=現代の女性作家の小説。59は女子高校生の性を描き頽廃的にみえるかもしれないが、決してそうではない。先入観はよくないと反省。60、すべてが陳腐で、目的も価値も見出しえない現代、感性は白日の下にさらされる。軽く哀しく優しく、そして不確かながらも少し元気がもらえる小説。 61=ジュニア小説も馬鹿にはできない。「さようならアルルカン」(コバルト)にも心うたれた。「クララ白書」(コバルト)もおもしろい。 62・63=優れた時代小説、大衆小説は、並みの純文学よりよっぽど感動が大きい。62はホントに泣ける! 63、悲運に耐えながら成長してゆく少年藩士の清々しさ。精緻な文章もいい。 64~67=ケッタイなものばかり。64は明治、65は戦後のシタタカ男を描く。ジメッと暗いばかりが日本の小説じゃないんだッ! 66はマカフシギな純文学。茶碗が主人公だって!? ペィーッ! 67は65以上に、高校生にこんなのすすめていいのかしら??というヤツ。 68~70=高校生用文学史年表上の作品中で例外的に感動した作品。68はほとんど幻想SF物語。69には啄木も涙にむせんだとか。<牛肉>は<都会・現実・安楽・妥協>、一方<馬鈴薯>は<北海道・理想・清貧・刻苦>のシンボル。君ならどちらを選ぶ?(って聞くまでもないか・・・・。) 70、キリスト的(?)親鸞像。高校時代友人に薦められた。そんな書友もいた時代ではあった。 71=岩波文庫の人気ベスト1。ムカシの子供の心はこんなにも素朴だったんだなあ・・・・。 72=いっとき映画化(「野ゆき山ゆき海べゆき」)されて文庫になったが・・・・。ムカシの子供はこんなにも元気だったんだなあ・・・・。 73~75=戦争の惨禍は戦後にも及んだ。野坂には「1945・夏・神戸」(中公)という自伝もあり、<焼け跡闇市派>の原点がうかがわれる。74は被爆者や被差別部落民を扱った暗く重い小説。社会を考えるためにもぜひ読んでほしい。75は中国残留孤児を生んだ歴史的背景とその後を感動的に描く。このネタ本の1つ遠藤誉「卡子(チャーズ)」という記録(幼時の体験記)は衝撃的。 |
× 52 | 小林信彦 | 夢の砦 | 新潮文庫 | |
× 53 | 村上龍 | コインロッカー・ベイビーズ | 講談社文庫 | |
54 | 村上春樹 | 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド | 新潮文庫 | |
55 | 立松和平 | 遠雷 | 河出文庫 | |
☆ 56 | 芦原すなお | 青春デンデケデケデケ | 河出文庫 | |
57 | 村上龍 | 69 sixty nine | 集英社文庫 | |
58 | 清水義範 | 永遠のジャック&ベティ | 講談社文庫 | |
59 | 山田詠美 | 蝶々の纏足 | 新潮文庫 河出文庫 | |
60 | 吉本ばなな | キッチン | 角川文庫 福武文庫 | |
61 | 氷室冴子 | なぎさボーイ | 集英社コバルト文庫 | |
☆ 62 | 山本周五郎 | さぶ | 新潮文庫 | |
63 | 藤沢周平 | 蝉しぐれ | 文春文庫 | |
64 | 夢野久作 | 犬神博士 (夢野久作全集 5) | ちくま文庫 | |
65 | 野坂昭如 | エロ事師たち | 新潮文庫 | |
66 | 藤枝静男 | 田紳有楽 | 講談社文芸文庫 | |
△ 67 | 沼正三 | 家畜人ヤプー | 角川文庫 | |
68 | 泉鏡花 | 高野聖 | 岩波文庫 角川文庫 | |
× 69 | 国木田独歩 | 牛肉と馬鈴薯 | 岩波文庫 | |
70 | 倉田百三 | 出家とその弟子 | 岩波文庫 新潮文庫 | |
71 | 中勘助 | 銀の匙 | 岩波文庫 | |
× 72 | 佐藤春夫 | わんぱく時代 | 岩波文庫 | |
73 | 野坂昭如 | 火垂るの墓 | 新潮文庫 | |
74 | 井上光晴 | 地の群れ | 河出文庫 | |
75 | 山崎豊子 | 大地の子 | 文春文庫 |
1つ前の記事で日本の小説の最初に挙げた高橋和巳の死は、当時三島由紀夫の死より衝撃的でした。あの「異形の」作家がもし今も健在であったら・・・と思うことがあります。
今回のリスト中の作家の中で、「同世代」ではなくても「同時代」の作家と思っていた井上光晴・藤枝静男・藤沢周平は90年代に世を去り、1990年代には井上ひさしのほかに、私ヌルボとほぼ同世代の立松和平までが亡くなったのは他人事とは思えませんでした。
(はるかに若い氷室冴子が51歳で他界してしまったのは、ファンとしても残念でした。)
いつの間にか、私ヌルボもそんな年、そんな時代の直中に入ってしまっているんだなー、ということを痛感せざるをえません。あーあ。
こんどこそはいつもの韓国ネタに戻らなければ・・・。
すすめる本1及び2には格調高いコメントが並んでいたので、まだ空いていた[3]に書きます。
私は各回数冊しか読んでいませんが、すすめる本360冊はヌルボさんの読書の一端なんでしょう。
知性と教養の素なんですね。感服の至りです。
なお、高校生にだから韓国編はないんですよね?
原作も良かったですが、「遠雷」や「青春デンデケデケデケ」は映画も佳作でしたね。「デンデケデケデケ」原作は完全版(私家版)も出ているようですが、未だに読む機会がありません。ヌルボさんは読まれましたか?
今回異論というほどのものはありませんが、井上ひさしの芝居では「きらめく星座」という作品が好きでした。この時期の井上ひさしの芝居はどれも佳作揃いでなかなか甲乙つけがたいですけれども。
山本周五郎は「さぶ」も良いですが、黒澤明が映画化した「赤ひげ診療譚」や「季節のない街」、川島雄三が森繁主演で映画化した「青べか物語」などの連作モノも棄てがたいです。高校生向けならやはり「赤ひげ」でしょうか。
野坂昭如は「エロ事師たち」も良いですが(あの文体まではどうしようもないものの、今村昌平による映画も決して悪くありませんでした)、違う意味で高校生にはドギツイ「骨餓身峠死人葛」もお勧めです。
「家畜人ヤプー」! さすがに私はこれは高校生には「すすめ」ることは出来ません…。私自身もそうしたように、自宅でこっそり読んでもらうのはむろん構いませんけれども(最近の高校生なら、漫画版を堂々、でしょうか)。
むしろ私は「ヤプー」ではなく夢野久作の「ドクラマグラ」をすすめますかね~。今回挙げていらっしゃる「犬神博士」などの短篇にもおすすめのものがたくさんありますが。
井上光晴は原一男による「全身小説家」も是非見てほしいですね(趣旨からそれてしまいますが、原の「ゆきゆきて、神軍」も高校生にも見てほしい映画ですが)。
「地の群れ」は決して原爆だけに取材した作品ではありませんが、長崎に対して広島の「黒い雨」や原民喜なども、これからリストに登場するのかどうか楽しみです(「黒い雨」は猪瀬直樹による剽窃糾弾などもあり?、登場しないかも知れませんが)。
しかしこのペースであと285冊とは、先が全く読めませんね~。どんどん自分が読んだことのあるものの比率が低くなっていくような予感がしています。
このところペースが落ちてますが、無理せず続けていきます。
今回の本のリスト中、韓国関係の本も今後それなりに出てきます。今数えてみたら9冊、かな? 関川夏央「ソウルの練習問題」等々。
いつになるかわかりませんが、韓国本だけについての記事もいいかもしれませんね。
しかし、今は考えている間にもどんどん新しい本が発行されているので、良さそうな本だけにネライを定めても読むだけでもタイヘンです。
これからもヨロシク。
若者向けの本ということなら、私は『ストロベリー・ロード』(石川好)などが思いつくが、推薦書がなぜ小説でなければいけないのかという疑問が浮かびます。
そのうち、ノンフィクションはもちろん、絵本や漫画等も出てきます。
「ストロベリー・ロード」は私も文春文庫版が出た時(1992年)にイッキ読みしました。(・・・って、リストに入れたかな?と見直しているところ・・・。)
前川健一さんも含め、25冊中2ケタ読んでる人は私の周りにはこれまでほとんどいなかったと思います。
「半分ちょっと」も読んでるという人はたぶんこれまでいなかったかもしれません。
今までに観た井上ひさしの芝居はちょうど10本くらいですかねー。「ユーモアとペーソス」なんて言葉を誰もが使っていますが、啄木も一葉も乃木希典も弱点・欠点のある人間として、愛情をもって描かれているところがいいです。私が乃木大将をリストに加えたのは、日本史が専門という意図が働いたから、だったかな?
「さぶ」も、日本史教科書中の寛政の改革とか石川島人足寄場を思い起こしつつ・・・という意図が少しだけ(1割くらい)入っています。
あ、「赤ひげ」も小石川養生所だから教科書に載ってますね。
洋の東西を問わず、映画化作品vs原作小説は8~9割は原作の勝ちでしょうが、ただ映画の「赤ひげ」は原作よりも強く印象に残っています。とくに少女おとよ(二木てるみ)の眼差し。(16歳だったのか!)
映画「地の群れ」で今覚えているのは紀比呂子ですね。あ、鼠とか鶏のキョーレツなシーンも。
映画の「青べか物語」もいいですね。映像も。小学生の頃「文藝春秋」に連載されていましたが、実際に読んでタイトルの意味を知ったのは10年ほど経った後でした。「大人の文学」といつた感じなので、外しましたが。「さぶ」とどちらにしようか少し迷ったのは「樅の木は残った」の方です。
ちなみに、今回の25作品中、個人的に今いちばん好きな小説は「田紳有楽」です。(年のせい?)
「青春デンデケデケデケ 私家版」も角川文庫で出てましたが、ソチラは読んでいません。
「がいこ、がいこの蝉の声」とはその章のタイトルの1つで、今の時期になるとなんとなく思い出します。
そのうち(ずっと先)、高校生対象のおすすめ映画リスト(全180本?)もアップするつもりです。
映画「地の群れ」は未見ですので、DVD化が待たれます。
山本周五郎作品をはじめ(「日々平安」は「椿三十郎」の原作と呼んでいいのか若干疑問ですが)、黒澤明は原作モノをたくみに映画にしえた人だと思います。ナ・ウンギュの「アリラン」同様、あるあると言われながらも、どうやらもう出てくる希望はなさそうな「白痴」完全版を是非見てみたかったものです。
「赤ひげ」の二木てるみ、確かに印象に残る名子役でしたね~。加山雄三が寝込んで二木てるみが看病している部屋の窓から見える雪や、山崎務が死んだと思っていた妻と夏祭りでばったり出くわす際の風鈴が一斉に揺れて鳴る場面なども記憶に深く刻まれています。
私は読書好きというよりもむしろ映画好きの方なので、高校生対象のおすすめ映画リスト、とても楽しみにしております。