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街角でサクサク動画 公衆無線LAN、LTEの10倍速に

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街角でスマートフォン(スマホ)やタブレット(多機能携帯端末)などをつなげて使う公衆無線LAN(構内情報通信網)の利便性が一気に高まり始めた。実効速度で毎秒200メガ(メガは100万)ビットと携帯電話の高速通信サービス「LTE」の約10倍に高速化し、ハイビジョン動画やオンラインゲームを快適に楽しめる環境が今年から来年にかけて広がる。NTTドコモやKDDI(au)などの通信各社は、急増するモバイル通信の負荷を分散するため公衆無線LANの整備に力を入れてきたが、LTEの普及で利用が伸び悩んでいた。より高速に生まれ変わらせることで利用を増やし、本来の負荷分散に向けて軌道修正する狙いだ。

東京・池袋でひそかに導入

「あれ、こんなに速かったっけ」。池袋駅(東京・豊島)に直結の喫茶店「ドトールコーヒーショップルミネ池袋店」で、店内に設置された公衆無線LANを使った鈴木将樹さん(仮名、39歳)は、他の公衆無線LANよりはるかに通信が速いことに驚いた。

速さの秘密は、KDDIが昨年秋に店内の無線LANとして最新型を設置したことだ。現在のLTEの実効速度は一般に毎秒5メガ~20メガビット程度だが、同店の無線LANを使うと「安定して200メガ前後出る」(KDDI)。

鈴木さんは日ごろから喫茶店やハンバーガーショップの無線LANをパソコンで活用しているが、LTE対応のスマホでネットを見た方が快適で、正直イライラすることも多かったという。LTEより10倍も速い最新の公衆無線LANを体験して「これならいつも使いたい」と満足げだ。

ドトールの店舗に整備したのは「IEEE802.11ac」と呼ぶ、7日に策定したばかりの無線LANの最新規格に準拠した環境だ。理論上の最大速度は、これまでの「同802.11n」が600メガだったのに対し、acは6.9ギガ(ギガは10億)。10倍もスピードアップを図っている。

スマホやパソコン、無線LAN機器などのメーカーは先んじてacに対応し、正式策定前から対応製品を発売済み。こうしたac対応のアクセスポイントをKDDIは先んじて調達し、同店に導入したのだ。

混雑に強い、快適さもアップ

KDDIをはじめとする公衆無線LAN事業者は、より快適な通信環境を提供できるとしてacの普及に期待を寄せている。高速なことに加え混雑にも強いからだ。

acでの通信には5ギガヘルツ帯の周波数を使う。従来の無線LANで使っていた2.4ギガ帯は既に多くの無線LANの電波が飛び交い、電子レンジや無線マウス、コードレス電話などが発する電波とも干渉する。そのため、電波を占有しにくく通信速度低下を招きやすかった。5ギガヘルツ帯は原則無線LAN専用に割り当てられた帯域で、利用中の無線LAN機器も2.4ギガ帯に比べ少ないため混雑しにくい。

acを使った高速無線LANが普及してくれば、自宅で光回線につないでいるときしか使えなかったアプリも外出先で気軽に利用できる。たとえば、ハイビジョン画質の動画や「ドラゴンクエスト10」のようなオンラインゲームのように、膨大な量のデータを長時間にわたって受信し続けるものだ。

 LTEや従来の公衆無線LANでは速度が追いつかず途中で途切れたり、通信料金が高額になったりしていたため、こういった使い方は現実的ではなかった。これからは、自分の気に入った喫茶店などを、あたかもミニ映画館やゲームセンターのように使うことが可能になるかもしれない。

実効速度が高く混雑に強いことから、利用者が増えても速度が低下しづらいというメリットもある。1台の親機(アクセスポイント)を数十人が利用しても、LTEと同程度かそれ以上の速度で快適に通信できる。

正式規格化で普及に弾み

正式規格として成立したことで、通信会社はいよいよac対応を本格化させる。KDDIは現在ドトールコーヒーショップとエクセルシオールカフェの数店舗で導入している。今後、全国各地の既存設備も順次acへと更新していく計画だ。

NTTドコモも昨年から高速環境の整備に取り組み始めた。実験の第1弾として東京メトロの表参道駅にある飲食店をac対応とし、最大で毎秒1.3ギガビットのネット接続が楽しめるようにした。

無線LANの機器を製造するメーカーも、この動きを後押しする。公衆無線LANには、家庭向け製品と違ってユーザー認証や接続管理など高度な機能が求められる。acが正式策定されたことで、米シスコシステムズなど大手メーカーは、ac対応の公衆無線LAN向けアクセスポイント機器の品ぞろえを順次増やしていく。

ドコモはこうしたアクセスポイント機器の価格の下がり具合をにらみながら、2015年度までに全国の公衆無線LANを順次ac対応にする計画だ。「都心部のターミナル駅周辺で、特に高速化の要望が利用者から多く寄せられている。適切なタイミングで導入していく」(NTTドコモ)。まずは需要の大きい駅構内や飲食店などから先行してacの高速環境を整えるとする。

五輪を視野、充実に期待

通信会社はこれまで携帯電話網の負荷分散を狙って公衆無線LANを整備してきた。だが、思ったように利用者を誘導してこられなかったのが実情だった。

「LTEの方が速いのにメリットがあるのか」「中途半端に電波をつかみ、ネットが遅くなる」「接続時にログインが必要で面倒」――。こんな悪評が利用者の間ではささやかれていた。

acの導入と並行してドコモやKDDIは、こうした不評を改善するための工夫もしている。例えば利用者の近くに公衆無線LANのアクセスポイントを発見したら、利用者を待たせないよう2~3秒で即座につなぐ。一方で、遠くにある電波の弱いアクセスポイントは、仮に発見できてもつながない。「快適なacの世界を実感すれば、電波の種類の違いを気にせず公衆無線LANを使いたくなるはず」(KDDI)。公衆無線LANの利用者が増えれば結果として携帯電話の混雑が解消され、利用者側のメリットにも結びつく。

20年に東京五輪開催が決まり、外国人観光客への「おもてなし」に昨今注目が集まっている。日本は海外に比べ、外国人観光客が公衆無線LANを気軽に使える環境が整備されていないことが指摘されている。ac対応を機に、高速無線LAN環境を生かして動画などで東京を街案内すれば、ほかのどの国より先進的な日本のIT(情報技術)の強さを伝える好機になるだろう。

(電子報道部 金子寛人)

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