使用済み核燃料使う次世代原子炉 日立が実用化へ
日立製作所が使用済み核燃料を燃料に使う資源再利用型沸騰水型軽水炉(RBWR)の実用化に向けて動き出した。使用済み核燃料の有害度は天然ウラン鉱石と同程度まで減衰するのに約10万年かかるとされる。だがRBWRが実用化されれば300年程度まで短縮できるという。原子力発電にとっての課題は使用済み核燃料の処理だ。日立は処分場の面積を約4分の1まで減らすことができるとみており、開発の行方に注目が集まる。
処分場を4分の1程度まで縮小
RBWRは使用済み核燃料の中に含まれるプルトニウムなど有害度の高い超ウラン元素(TRU)を燃料に使うのが特徴だ。TRUは使用済み核燃料のうち数%含まれており、使用済み核燃料から取り出したTRUをRBWRに投入する。
RBWRは炉に投入したTRUを燃焼によって約9%減らすことができる仕組み。通常の原発であるBWR2基に対し、RBWRが1基あればTRUを現状より増やすことなく、BWRを運営できるのだ。
通常の使用済み核燃料の有害度が高い原因はTRUを含むことによる。TRUを除去できれば、使用済み核燃料が天然ウランと同程度まで減衰する期間を10万年から300年程度まで短縮できる。よって使用済み燃料の処分場を4分の1程度まで縮小できる公算だ。
日立はRBWRの実用化を進めるために、米3大学と原子炉の性能や安全性などの評価を開始した。2016年3月まで米マサチューセッツ工科大学(MIT)、ミシガン大学、カリフォルニア大学バークレー校(UCB)とRBWRについての詳細な評価をする。
MITとは冷却水が沸騰した際の蒸気の割合や冷却水の流量で十分に燃料棒を冷やせるかどうかを調べる。ミシガン大とは核分裂のしやすさに影響を与える中性子の挙動を探る。UCBとはRBWRから出てくる放射性廃棄物の有害度を分析する。
開発順調なら30年代に実用化も
使用済み核燃料の再処理に伴い発生する寿命の長い放射性物質は原発に伴う最も重要な課題の1つだ。政府は長期停止中の高速増殖炉もんじゅ(福井県)を改造し、こうした放射性物質TRUを燃料として使い、毒性を低くする構想をもつ。
しかし高速増殖炉は扱いが難しい液体ナトリウムで炉心を冷却する。技術は確立しておらず、もんじゅは運転再開のめどがたっていない。一方でRBWRは既存の原発の発展型であり、水を冷却材に使う。試験炉の稼働など開発が順調に進めば、30年代の実用化が期待できる。
東京電力福島第1原子力発電所事故をきっかけに原発を取り巻く状況は厳しくなったが、アジアを中心に原発の新設需要は増加している。日本でも九州電力の川内原発が再稼働へと一歩踏み出した。
原発メーカーにとって原子炉の安全性向上は極めて重要だが、使用済み核燃料の問題も避けて通れない。核燃料サイクルの行方が不透明なだけに、RBWRにかかる期待は大きい。
(企業報道部 多部田俊輔)
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