クレディ・スイス証券元部長に無罪 所得税法違反で
東京地裁
ストックオプション(株式購入権)の行使などで得た報酬を申告せず、所得税約1億3千万円を脱税したとして、所得税法違反罪に問われたスイス金融大手の日本法人「クレディ・スイス証券」元部長、八田隆被告(49)の判決で、東京地裁の佐藤弘規裁判長は1日、無罪を言い渡した。
申告漏れの事実に争いはなく、脱税の故意の有無が争点だった。判決で佐藤裁判長は(1)株式報酬の仕組みが複雑(2)八田被告はそれまで極めて多額の報酬を得ていた――などと指摘し「被告に過少申告の認識があったと認めるには疑問が残る」として、罪には問えないと判断した。
公判で検察側は「源泉徴収票の記載金額を大きく超える報酬を受領し、過少申告していると認識していた」と主張し、懲役2年、罰金4千万円を求刑。弁護側は「株式報酬も源泉徴収されると思い込んでいた」として無罪を訴えていた。
八田被告は親会社から付与されたストックオプションを行使して得た株の売却益などを給与収入として申告せず、2006~07年に約3億4800万円の所得を隠し、所得税約1億3200万円を脱税したとして起訴された。
判決後に記者会見した八田被告は「無罪になってほっとした」と一言。「結論ありきで捜査を始め、何度も引き返すチャンスがあったのに、引き返さなかった」と検察当局を批判した。