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丸ごとレビュー フルHD液晶、カメラも充実 進化した新型「ネクサス7」

フリーライター 竹内 亮介

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米グーグルは8月28日、7型液晶を搭載するタブレット端末「ネクサス7」新モデルを日本で発売した。2012年9月に発売された前機種と比べると、液晶ディスプレーのサイズは同じ。しかし内蔵CPUやメモリー容量はもちろん、インターフェースや内蔵カメラの構成なども大きくアップグレードした。前モデルと同じように実勢価格を非常に安く抑えており、魅力的な製品に仕上げている。今回はこのグーグルオリジナルタブレットの進化をチェックしていく。

本体さらに薄く軽く

新ネクサス7では、8月28日に発売した無線LANのみ対応の2モデルと、9月13日に発売したLTEにも対応する1モデルの計3モデルを用意する。無線LAN対応モデルは内蔵フラッシュメモリーが16ギガバイトと32ギガバイトの2モデル、LTE対応モデルは32ギガバイトの1モデルのみだ。このほかの仕様は共通だ。

昨年発売された前機種も安かったが、今回も16ギガバイトの無線LAN対応モデルなら実勢価格は2万7800円と機能の割に非常に安い。今回は実勢価格が3万9800円のLTEモデルを試用した。

液晶サイズが変わらないので、サイズ感は前モデルと大きな違いはない。前モデルが幅120ミリ高さ198.5ミリであるのに対し、新モデルは幅114ミリ高さ200ミリ。わずかながら幅が狭くなり、高さが増えたが、片手でサッとつかめるサイズなのは変わらない。厚みは10.45ミリから8.65ミリと薄型化しており、比較してみれば新モデルの方がつかみやすい、という印象はある。

重さは前モデルが340グラムだったのに対し、新モデルが290グラム(LTEモデルは299グラム)と300グラムを切る。7型ディスプレーを搭載するタブレットで300グラムを切る製品は非常に少なく、軽量モデルの一つと言って良い。

ボディーはプラスチック製。ブラックでさらりとした表面加工が施されている。滑り止め用にさらに細かい穴のような模様を施されていた前モデルと比べるとシンプルなデザインだが、特に滑りやすいこともなく、しっかりとホールドできる。

解像度が向上、表示のキレ味アップ

液晶サイズは7型で同じだが、解像度は大きく進化した。前モデルでは800×1280ドットだったのに対し、1200×1920ドットとフルHD解像度までアップした。タブレット上に表示される文字や写真は、解像度が上がれば上がるほどスムーズできめ細かく表示される。実際にウェブブラウザーや設定画面で表示される文字は、前モデルに比べると表示のなめらかさが大きくアップした。デジカメで撮影した写真の精細感もかなりのものだった。

液晶の色調も若干だが変わっているように感じた。同じデジカメ画像を表示して両者を並べて見ると、前モデルはわずかだが青みがかかった寒色系の色合い。一方、新モデルでは、赤や黄色がやや強めに出ることでより鮮やかな色合いに見える。このへんは好みの問題だが、解像度が上がったことによる精細感のアップもあるため、個人的には新モデルの方が好みだった。

CPUは米エヌビディアの「TEGRA3」から、米クアルコムの「スナップドラゴン」シリーズに変わった。内蔵する主演算基は4個で変化はないが、処理能力は1.8倍になり、グラフィックス性能は4倍に向上したという。描画性能を強化した最新のOS「Android 4.3」を搭載していることもあり、画面の切り替えやスクロール操作は非常になめらかでカク付く場面はない。

ハードウエアの基本性能を総合的にチェックできる「AnTuTu Benchmark」の総合スコアを比較してみると、前モデルが13704であるのに対し、新モデルは20314。おおむねCPUの性能差が素直に反映されたイメージだ。

ただ、同じAndroid 4.3をインストール済みの前モデルでも、画面の切り替えがウェブブラウザーの表示速度など日常的な操作性だけで比べれば大きな違いは見られない。精細なグラフィックスを多用する3Dゲームなどで違いが見えてくる部分だ。

背面カメラを装備、LTEはSIMフリー

カメラ機能やインターフェースを強化したことも特徴の一つだ。前モデルでは、ビデオ通話向けの120万画素の前面カメラしか搭載しなかった。同じく低価格な他社のタブレットの多くが装備する背面カメラがないため、液晶ディスプレーをファインダーに見立てた一般的な撮影スタイルが利用できないことを敬遠するユーザーも多かった。しかし、新モデルでは500万画素の背面カメラを搭載。120万画素の前面カメラも引き続き装備し、死角はなくなった。

下部にマイクロUSBポートを装備するのは従来通り。しかし今までのような充電やPCとの接続だけではなく、別売りの変換アダプターを利用することでHDMIポートを搭載する大画面テレビに画像を出力できる機能もサポートする。リビングに置いた大画面テレビに写真を表示して楽しむのはもちろん、出張先のプロジェクターにHDMIで接続し、プレゼンテーションを行うことが可能だ。利用範囲が大きく広がった。

また無接点充電機能「Qi」にも対応する。充電器自体はオプション品を用意する必要があるが、ネクサス7をそうした充電器の上に置くだけで充電が行える。その他ジャイロスコープや加速度センサ、全地球測位システム(GPS)など、タブレットに必要とされるセンサー類は網羅しており、タブレットとしての完成度が非常に高いことも前モデル譲りと言える。

LTEモデルは携帯電話キャリアに縛られないSIMロックフリータイプだ。LTEはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルと日本の主要キャリアをカバーする。

試しにNTTドコモのMVNOサービスである「OCN モバイル ONE」のSIMカードを挿してみると、NTTドコモのデータ通信サービス「mopera U」や、インターネットイニシアティブ(IIJ)が提供する低価格データ通信サービスを利用するための設定がすでに組み込まれていた。

これらのサービスの利用者なら、基本的な設定を行うだけでLTEによるデータ通信が行えるようだ。ちなみにOCN モバイル ONEではマニュアルでの設定が必要だ。またKDDIの契約でも、データ通信を行う「LTE NET」に加入し、アクセスポイントなどの設定をマニュアルで行えば、データ通信が利用可能だった。

ライバル突き放すコストパフォーマンスの高さ

インストール済みのアプリは、グーグルのオリジナルアプリのみというシンプルな構成。ほかのハードウエアメーカーのようにプリインストールアプリが多数付いてくるわけではない。このあたりは人によって評価が分かれるところだろう。筆者のようにタブレットでよく使うアプリが決まっているなら、多数のプリインストールアプリがない方が好ましいはずだ。

この価格帯や液晶サイズで比較対象となるのは、アップルの「iPad mini」や米アマゾンの「キンドル」シリーズだろう。iPad miniとの比較では、やはり液晶解像度の違いによる表示品質の違いが顕著だ。スッキリとして鮮やかな新ネクサス7の後にminiの画面を見ると、やや寝ぼけたような表示に見えた。

キンドルは最新の7型モデル「Kindle Fire HDX」で1200×1920ドットのフルHDに対応した。表示能力では互角だが、キンドルシリーズではグーグルのアプリストアが利用できない。あくまでアマゾンのコンテンツを楽しむプレーヤーとしての位置づけだ。汎用性では、ネクサス7シリーズなど一般的なタブレットには及ばない。

1年前に発売された前モデルも際だった性能と低価格で市場をリードしたネクサス7。円安の影響で若干高くはなってしまったが、新モデルでも、高い次元で性能と価格のバランスを取っている。引き続き、量販店などで売れ筋モデルの一角として君臨することは間違いないだろう。誰にでもお勧めでき、しかも満足感の高いタブレットと言える。

竹内亮介(たけうち・りょうすけ)
 1970年栃木県生まれ、茨城大学卒。毎日コミュニケーションズ、日経ホーム出版社、日経BP社などを経てフリーランスライターとして独立。モバイルノートパソコン、情報機器、デジタル家電を中心にIT製品・サービスを幅広く取材し、専門誌などに執筆している。

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