アップル搭載「iフェラーリ」試乗 プレミアム感前面に
6日から一般公開が始まったジュネーブ国際自動車ショーでは、自動車をインターネットに接続したサービスが注目の1つだ。米アップルの新サービス「CarPlay(カープレー)」を搭載した車種をフェラーリ(イタリア)、独メルセデス・ベンツ、ボルボ・カー(スウェーデン)が世界で初めて展示。筆者はフェラーリに乗り込み、試してみた。
音声操作で電話も地図も
「パリまでのルートを調べてほしい」「ハロー、今日の夕食はどうだい」。フェラーリのブースに展示された「FF」。陽気なアップル社員の指導を受けながら、話しかけたり、デモ機に触った。いずれもiPhone(アイフォーン)やiPad(アイパッド)で、人工知能を用いた音声ガイド「Siri(シリ)」を使い話しかけるのと全く同じ感覚だ。
シリの機能はハンドル左側のスイッチを長押しすると作動する。ジュネーブ・パリ間のルート検索は即座に終わり自動的にカーナビゲーションの画面に切り替わる。夕食を誘った友人から返ってきたメッセージは自動的に読み上げられ、店の予約に移ることも可能だ。
使い方は簡単。自ら所有するiPhoneをケーブルで車につなぐと、FFに搭載された専用画面が開く。タッチスクリーンや、通常のカーナビ画面のスイッチで操作することもできる。「iフェラーリ」の操作は運転より簡単そうだ。
FFの場合、インストールされたアプリは10種類しかない。iPhoneと同じアプリが表示されるわけではなく、運転手の判断でアプリをインストールすることはできない。「アイズフリー(目で確認せず)」が売りの1つとはいえ、アップルの担当者は「安全性が最も重要。自動車メーカーと一つ一つ検証しながら利用可能なアプリを徐々に増やしていく」と話す。
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一方で音楽再生での制約は少ない。iPhoneに保存した音楽はそのまま再生でき、FFの場合はポッドキャストや定額で音楽が聴き放題の「スポッティファイ」がインストールされている。ただスポッティファイは利用可能な国が限られる。
スマホの勢いをクルマにも
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高級車メーカーの存在感が圧倒的に大きい欧州のショーで初公開されたのは理由もある。
例えばFFでインストールされているアプリの1つにフェラーリの跳ね馬のマークの「FF」がある。内容はこれから増やすというが、個々のメンテナンス情報や異業種との連携など顧客専用サービスに使える。
ダイムラーは「メルセデス・ベンツ」向けのサービス「メルセデス・ミー」を今夏に始めることを表明済み。飲食やアパレルの異業種ともネットワークを広げ、プレミアム感を前面に押し出す。
アプリを運転手が選ぶには制約があるが、「各メーカーごとに独自のアプリを取り込み、ブランドごとのマーケティングなど違いを出すことができる」(アップルの担当者)という。
なおカープレーの採用を発表した3社とも顧客の多数はアップルユーザーという。そろって「アップルとはプレミアム感で共通項がある」と説明する。車載用サービスではアップルはトヨタ自動車などにも提供する方針で、ライバルのグーグルよりも勢いに乗っている。スマホからクルマへプラットフォームを広げられるか。
(加藤貴行)
[日経産業新聞2014年3月7日付]
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