カフェも楽しめる美術館 東西ベスト10
美術館や博物館のカフェやレストランが充実してきている。美術館などに詳しい専門家にお薦めのカフェを選んでもらった。
<東日本>
芝生に広がる中庭、静かな時 東京・品川にある原美術館は1938年に竣工した実業家原邦造の私邸を改装した美術館。「カフェ ダール」は芝生が広がる中庭に面しており、都会の騒々しさから隔絶された静かな時間を楽しめる。入館料が無料になる年会員となって近隣からランチのためにやって来る人もいる。
展覧会ごとに作品から色や形にヒントを得て作る「イメージケーキ」や、ランチセットなどをゆったりととることができる。土日、祝日のみの「ガーデンバスケット」(2人用、個数限定)にはワインもついており、わざわざ早起きしてくるファンも多い。「美術館カフェの草分け。建物との一体感もある」(中村剛士さん)(1)11~17時(水曜は祝日除き20時まで)(2)月曜日、展示入れ替え期間、年末年始(3)1000円▼現代美術の企画展が主体。(電)03・3445・0651
味、空間ともに圧倒 東京・六本木にある美術館。夜はガラス越しの夜景が美しく、「ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ」は本格的なフランス料理が楽しめる。「味、空間ともに他を圧倒」(井門隆夫さん)(1)11~21時、金曜日22時まで(2)火曜日(3)不要▼多彩な展覧会など。(電)03・5770・8161
ガラス張り、森林浴楽しむ 広い庭園に位置する「NEZUCAFÉ」は三方がガラス張りで、東京・表参道にありながら森林浴気分に浸れる。神戸牛の「ミートパイ」が人気。「自然を眺めながら飲むコーヒーは格別」(中村さん)(1)10~17時(2)月曜日、美術館休館日(3)1000円~▼日本・東洋の絵画、陶磁など。(電)03・3400・2536
創建当時の銀行営業室復元 1894年の三菱一号館創建当時の銀行営業室を東京・丸の内に復元した「Café 1894」。「バーとしても利用できる」(島田昭彦さん)(1)11~23時(祝日除く金曜日は翌2時まで)(2)1月1日(3)不要▼19世紀の西洋絵画展が多い。(電)03・3212・7156
シーフードカレーが美味 一色海岸を望む葉山町にある。「レストラン オランジュ・ブルー」は地元産の野菜や魚介類を使ったシーフードカレーがおいしい。(1)10~17時(2)月曜(祝日の場合営業)と年末年始(3)不要▼岸田劉生など日本近現代美術を所蔵(電)046・875・0919
土日祝は地元産の野菜を使ったビュッフェを開催(電)025・595・6180
赤い床に描かれた花模様が美しく、作品の中に溶け込んだ気分に(電)0176・25・3621
企画展に合わせたフランス料理をコースで楽しめる(電)0460・84・2111
地元の野菜や魚を使ったイタリア料理(電)055・989・8788
展覧会に合わせた和菓子は老舗菓匠「菊家」と共同でつくる(電)090・5202・7887
<西日本>
運河に浮いているような感覚 長崎港に臨む公園に隣接した美術館(長崎市)は運河を挟んでギャラリー棟と美術館棟からなる。その2棟を結ぶ2階部分の渡り廊下に位置する「カフェ」は壁やテーブル、床の一部がガラスで囲まれており、まるで足元を流れる運河の上に浮かんでいるような不思議な感覚になる。大型船の汽笛が響き、緑の丘にはグラバー庭園の一部も見える「旅情豊かなカフェ」(北澤ヒロミさん)だ。また「スイーツが絶品」(井門隆夫さん)で、季節ごとに入れ替えるケーキのほか、展覧会ごとにテーマに合わせた特別スイーツには定評がある。夜は雲仙産の生ハムやビールなどを楽しむ会社員らでもにぎわう。
(1)10~20時(9月から3月は11~19時)(2)第2、4月曜日(臨時開店もあり)、年末年始(3)不要▼中世から現代に至るスペイン美術コレクションは東洋有数。(電)095・833・2110
加賀野菜ふんだんに 金沢市の巨大な円形の美術館にある「カフェレストランFusion21」。加賀野菜をふんだんに取り入れた料理をビュッフェ形式で楽しめる。「美術館の空気としっくりなじむ」(川口葉子さん)(1)10~20時(2)月曜、年末年始、美術館休館日(3)不要▼現代美術を主とする企画展など。(電)076・220・2800
こだわりの家具・調度品 香川県丸亀市にあり、JR丸亀駅から徒歩1分。「カフェレストMIMOCA」には彫刻家イサム・ノグチなど猪熊氏にゆかりのある作家の家具や調度品がそろって「空間が美しい」(児島さん)。(1)10~18時(2)年末、美術館休館日(3)不要▼約2万点の猪熊弦一郎作品のコレクション。(電)0877・22・2340
自家製の生パスタがおいしい 京都市にある「cafe de 505」は自家製の生パスタがおいしい。「桜の季節は格別」(児島さん)(1)9時半~17時(企画展がある場合夏期金曜日は20時)(2)月曜日(3)不要▼京都画壇の日本画など。(電)075・771・5086
宍道湖の眺めが雄大 「リストランテ・ベッキオロッソ」(松江市)は「雄大な眺めを楽しみながらイタリア料理を味わえる」(井門さん)。(1)10~21時(冬期は19時半まで)(2)火曜日、年末年始(3)不要▼印象派絵画など(電)0852・31・2252
瀬戸大橋を眺めつつ味わう抹茶と和菓子セットが人気(電)0877・44・1333
こだわりの食材で作るおむすびと豆腐、みそ汁の膳がおいしい(電)0748・82・3411
旧日本銀行京都支店の金庫室を利用した喫茶室(電)075・252・1166
天王山の中腹からの四季折々の眺めがよい(電)075・957・3123
地元の魚介類や野菜を使った本格的なイタリア料理(電)0993・23・0211
表の見方 数字は選者の評価を点数化した。美術館・博物館名。(1)営業時間(2)休店日(3)カフェ利用に必要な入館料。美術館の特徴と連絡先。東3位と5位、西2~5位の写真は美術館提供。東5位の写真は上野則宏氏、西3位は藤田一浩氏撮影。定休日が祝日などの場合は翌日に振替。展示替え期間など臨時、不定期休業あり。最終注文は営業時間より前
メニュー、展示作品から発想
東京の美術館のカフェは著名な建築家や料理人が手掛けたものが増えている。展覧会の美術作品にちなんだメニューなど、町のカフェとは違う味わいが魅力だ。パリのルーブル美術館、ロンドンの大英博物館などにヒントを得たという。
関西を中心に地方でもしゃれたカフェは多くなっている。全国各地で芸術祭などが積極的に開かれるようになり、作品と同時に、地域の特産品を使った料理もいっぺんに楽しみたい観光客らが増えているようだ。
「倉庫群だったところを県民の憩いの場にしたい」と誕生した長崎県美術館もその一つ。併設したカフェは一流シェフが腕を振るい、観光客や地元の客らでにぎわう。単なる休憩施設ではなく、今は歓送迎会や結婚パーティーなどに利用する人も増えており、新しい美術館の楽しみ方が広がりつつある。
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調査の方法 全国の美術館やカフェ・レストランに詳しい専門家10人に、メニュー、味、雰囲気に旅情を加味しお薦めを聞いた上でリストを作成、東西日本に分けた。選者は以下の通り。(敬称略、五十音順)
井門隆夫(井門観光研究所代表)▽川口葉子(東京カフェマニア主宰)▽北澤ヒロミ(情報サイト「ぶらり美術館」運営)▽児島やよい(キュレーター、ライター)▽島田昭彦(クリップ代表)▽中村剛士(美術ブログ「青い日記帳」編集)▽福島佳代子(DNPアートコミュニケーションズ)▽山下治子(美術館雑誌「ミュゼ」編集長)▽吉野誠一(アートコレクター)▽米村邦子(カラーズ・ファクトリー代表)
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