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ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

米国『SAVE TREE』事情

2016年06月24日 | 米国○○事情
古い木を大切にしよう。
そういう条例がある町が多い。
ニュージャージー州は特に、自然保護を推奨しているので、わたしのような老木オタクには、とても住み心地が良い。

何度もここにも登場した、我が家のカエデ爺さんの、健康診断初体験の日がやってきた。
この爺さんと一緒に人生を全うしたいと思って、この家を買い、さらに隣の空き地を買った。
でも、ここ数年、みるみる元気が無くなってくる爺さんの様子を、毎日台所の窓から見るのが辛くて、一度どんな状態なのか、診てもらった方がいいかもと、木のお医者さんに来てもらった。

無料診断をしに来てくれたのは、若い女性のトレーシー。
木だったらどんな木でも大好き!と言うトレーシーは、わたしたちのどんな質問にも答えてくれた。
そして、
「カエデというのは成長が早くて、だから大きくなるのも老いるのも、その分他の木よりうんと早いの。
だから、最悪の場合も覚悟しておいてね」と言った。
それを聞いたそばから、早くも涙ぐんでるわたしを見て、
「ごめんね。でも、そういう一生を悲しむのではなくて、最後の数年を一緒に生きたことを喜んであげて」と、トレーシーは慰めてくれた。

トレーシーから紹介された『SAVE TREE』という、木の診断をし、結果に応じた処置をする人たちに頼まなければならない。
でももし、もう寿命が来ているので、切り落とさなければならない、と言われてしまったら…。
なので、検査に来てもらいたいような、来てもらいたくないような、複雑な気持ちのまま、日がどんどん過ぎていった。

そんなある日のこと、夫が裏庭でくつろいでいたら、いきなり何の前触れも無く、目の前のガラステーブルの上に、小さな枝が落ちてきた。
サイズは小さくても、6階建てのビルぐらいの高さの、カエデの爺さんのてっぺんから落ちてきた枝だったので、とんでもなく大きな、恐ろしい音を立てた。
そのことがあってすぐに、夫は検査を申し込んだ。


体に巻きつける道具。


検査をするための道具を点検。




え…あなたが…。来てくれた男性たちは皆、けっこうゴツい。木登りには大変なんじゃないのでしょか?


なんたる腕の力。ロープを引きつけて自分の体を上げていく。


でも、ここまでだと、夫はロープ無しで、スルスルッと登ったのだけど…。もちろんそんな余計なことは言わなかった。


点検中。


グルグルと回りながら調べている。ああドキドキする。


木の年輪を調べる装置。ああほんとにドキドキする。


遠くから。


気になる所を満遍なく。


一番問題がありそうな所を調べている。


あ、さらに登り始めた。


どんどん上がっていく。


待機しているクレーン車。


どこだぁ〜!


すると、上からドサドサと、枝が落ち始めた。いつの間にやら、クレーン車も庭に入ってきていた。


わたしには、人がどこにいるのか、さっぱりわからない。あんな派手なオレンジ色のTシャツを着てるのに…。


他の木の枝が折れないように、なんとも巧みにクニャクニャ動くクレーンの先っぽに、枝を切る人が乗っている。


めちゃ高い!


あ、見っけた!


爺さんの根元に、すでに枯れてしまっている枝が、どんどん落ちてくる。


ビデオで紹介したいぐらいの、超絶技巧なクレーンさばき。






で、もう一人の大ベテランはというと…ズームしているからわかりにくいけど、相当てっぺんに近い。


三階建ての我が家の倍ぐらいの高さから、落とすよ〜と、枝を切り落とすたびに大声を出す。


けっこう葉っぱがついているのも落ちてきて、




そんなこんなの地上の様子を見ていたら、なんとなんと、とんでもない所に移動していた!






ほんとのほんと、爺さんのてっぺんに近づいていく。ギリギリの所でギコギコやっていた。


助手のおっちゃんが、上を見上げて呆れているわたしに、
「彼らはね、怖いっていう気持ちが無いんだ。それに、どこまでが限界か、どの枝なら大丈夫か、ちゃんと分かるんだ」


と話してくれたけど、そう言うおっちゃんの顔もわたしと同じく、けっこう呆れてた。

落とされた枝は、粉砕機にかけられる。




ちっちゃなのはまとめてお持ち帰り。


たったこれだけの命綱で。


残念だったのは、台所の窓にぐんぐん近づいていた小枝が、バッサバッサと切り取られてしまったこと。



診断の結果は…爺さんは元気だった。
まだまだ大丈夫。
だから、すっかり枯れて落ちる可能性がある部分だけ、切り落としてもらった。
嬉しくて、やっぱり泣いた。
途中から様子を見に来ていたトレーシーに、夫が「大丈夫だ」と報告すると、「まうみはきっと泣いたでしょ」と言ったそうだ。
ええ、ええ、その通りですよ、泣きましたよ。
だってね、嬉しいじゃないですか!
爺さんと一緒に暮らしたくて、ここに来たんだから。


というわけで、5年ぐらい経ったら、再び様子を診てもらう。
またドキドキするだろうな…。


おまけ
歩美ちゃんちで大きくなって、うちに戻って来たムクゲの赤ちゃんのつぼみ。
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