![]() |
ニコニコ大百科 : 医学記事 ※ご自身の健康問題に関しては、専門の医療機関に相談してください。 |
貧血とは、
本稿では1について記述する
概要
病弱キャラが陥りやすい症状の一つ。朝礼でぶっ倒れる様を指して「貧血」と呼ぶことも多いが、その多くは低血圧による「脳貧血(頭に血が行かなくなる)」であり、医学的な貧血とは別のものである。医学的な「貧血」は血液成分の値に基づく定義であるため、血液検査をしないと分からない。
主な症状は顔面蒼白、倦怠感、動悸、息切れ、頭痛、めまいなど。酸素を運ぶ赤血球が足りなくなることによる。貧血には鉄分を摂るようによく言われるが、種類によっては全く意味のないものもあるので注意が必要だ。
鉄欠乏性貧血
貧血患者の7割を占める、日本では最も多い貧血。患者の殆どは若年~中年層の女性である。
・・・というか女性の貧血患者は約1000万人にも上り、女性の6~7人は貧血だったりする。
上に挙げた症状のほか、鉄不足で舌のザラザラがツルツルになってしまったり(舌乳頭萎縮)、それによる嚥下障害や、爪がスプーンのように反り返る(匙状爪)などの症状も見られる。
原因としては、
- 月経や消化器の潰瘍、痔、子宮筋腫などによる失血。(女性の場合多くは月経によるコレ)
- 無理なダイエット、偏食による鉄分摂取不足。
- 妊娠時や成長期における体の変化により、鉄の需要が増えること。
- 胃炎や胃切除による鉄吸収不足(胃酸は鉄の吸収過程で重要な役割を果たす)。
などが挙げられる。予防や対処としてレバーや牡蠣など鉄分の多い食品を積極的に摂ることが勧められるが、正直なところ一旦貧血になったら焼け石に水なことも多いため、病院では鉄剤が処方される。貧血と見るやとりあえず鉄剤を出す医師も居るようだが、鉄剤はわりと副作用が大きいうえ、半年近くは飲み続けなければいけない薬であるため、診断には注意が必要である。
再生不良性貧血
血液を作る造血幹細胞が減少(消失)し、血液成分の産生が上手く行かなくなることによる怖~い貧血。原因としては染色体異常や自己免疫疾患、薬剤の副作用、放射線、肝炎ウイルス、妊娠などがある。生まれつき(先天性)と後天性(ファンコニ貧血ともいう)とあり後天性の場合前述の原因もあるが原因を特定できないことも多いため難病に指定されている。貧血症状のほか、白血球減少による感染症、血小板減少による出血傾向など、白血病に似た症状が現れる。
初期~中期の治療では、血球の産生を高めるためにメテノロン、ナンドロロンなどの「蛋白同化ステロイド」を用いる。ドーピングで話題になる「筋肉増強剤」の、「血を濃くしガチムチな体を作る」作用を利用した治療だと思えば良い。血球数の減少で症状が悪化してきた場合は、自己免疫疾患を抑える免疫抑制剤を投与する。患者が45歳未満なら、ドナーが居れば骨髄移植も行える(白血病の骨髄移植に比べてそのリスクは低い)。
巨赤芽球性貧血
造血細胞のDNA合成がうまく行われず、骨髄に「巨赤芽球」と呼ばれる異常な赤血球が出現する貧血。
言わば赤血球の孵化失敗である。
巨赤芽球は骨髄内で破壊されるため、末梢血中に送り出されることはない。
原因はDNA合成に必要なビタミンB12やビタミンB9(葉酸)、合成に関わるビタミンB6の欠乏である。ビタミンB12は胃で分泌される「内因子」と結合したのち小腸で吸収されるため、萎縮性胃炎や自己免疫疾患による内因子分泌の低下、胃の全摘、小腸疾患などによって吸収が悪くなる。
特に胃粘膜の萎縮による内因子の欠乏は「悪性貧血」と呼ばれる。悪性貧血はビタミンB12の注射で貧血症状は改善するものの、根本的な原因の治療には至らないためビタミンB12を注射し続ける必要がある。
また特定の細菌によりビタミンB12が消費されたり、ビタミンB6、B12が多く含まれる肉類を食べずに、ほとんど含まれない野菜ばかり食べていても発症することがある。
葉酸は特定の薬剤によって吸収や利用が障害されるほか、がんや妊娠などによって体内での消費が増えることがある。ビタミンB12、葉酸ともにレバーに多く含まれるため、原因がよく分かっていない時代はレバーが療法としてよく用いられていたが、現在は医師の支持に従って葉酸製剤やビタミンB12製剤を使用したほうが確実である。
貧血の一般的な症状のほか、悪性貧血の場合は「ハンター舌炎」と呼ばれる特殊な舌炎が見られる。破壊された巨赤芽球による黄疸、ビタミンB12不足による手足のしびれなどの神経障害、メラニン合成低下による白髪の増加なども巨赤芽球性貧血に特徴的な症状である。
溶血性貧血
溶血とは赤血球が破壊されること。せっかく作った赤血球がどんどん破壊されてしまう貧血である。
遺伝による先天性のものと後天性のものに分けられる。
遺伝性球状赤血球症
幼児期から発症する先天性のもの。柔らかい赤血球を上手く形成できず、脾臓に詰まって破壊されてしまう。
薬などでは治療しにくいため、脾臓を摘出する手術を行う。
グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠損症
先天性だが、特定の薬剤が投与されないと発生しない。赤血球が受けるダメージを軽減する酵素が欠損しているため、赤血球が薬剤に耐えられずボロボロになってしまう。薬剤の投与を中止して対処する。
ピルビン酸キナーゼ欠損症
先天性。赤血球がエネルギーを上手く産生できず、形を保てずに潰れてしまう。有効な治療手段がまだ無い。
自己免疫性溶血性貧血
後天性。身体が赤血球を異物と認識して壊してしまう。関節リウマチなどによって引き起こされることもあるが、原因が分かっていないものもあるため難病に指定されている。ステロイド系抗炎症剤や免疫抑制剤の投与、脾臓の摘出などで治療する。
発作性夜間血色素尿症
後天性。血球の元になる造血幹細胞の突然変異により、補体という一種の免疫機構に赤血球が弱くなってしまう。
補体が活性化する睡眠中に溶血が起こり、早朝の尿に血が混ざるためこう呼ばれる。
腎性貧血
腎機能低下により、腎臓から放出される赤血球産生ホルモンであるエリスロポエチンが減って発症する。
エリスロポエチン製剤で低下している分を補って治療する。