2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう』では、江戸時代中期に数多くのクリエーターをプロデュースした蔦屋重三郎(つたや・じゅうざぶろう)が主役に選ばれ、話題となっている。第3回「千客万来『一目千本』」では、重三郎が絵師の北尾重政とともに、女郎を花に見立てた本『一目千本』の制作に着手。一方、幕府では次期将軍の座を巡って怪しい動きが……。『なにかと人間くさい徳川将軍』など江戸時代の歴代将軍を解説した著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)
>>【写真】蔦屋重三郎が独自に編集・出版した遊女評判記『一目千本』ほか
「吉原細見」の編集から出版人として目覚めた蔦重
前回の放送では、横浜流星演じる蔦屋重三郎の働きかけで、平賀源内に吉原の案内書「吉原細見(よしわらさいけん)」の序文を書いてもらうことに成功した。
実際に、蔦屋重三郎の名が記された『細見嗚呼御江戸(さいけんああおえど)』では、平賀源内が「福内鬼外(ふくうちきがい)」の名で序文を寄せている。今回の大河は主人公である蔦屋重三郎についての史料が限られているため、彼がプロデュースした作品から、ストーリーを膨らませることになりそうだ。
史実において『細見嗚呼御江戸』では編集に携わった重三郎だが、後に自身で吉原細見の出版に乗り出す。
このとき他社の吉原細見と差別化を図るべく、それぞれ町の通りにある向かい側同士の遊女屋を上下でにらみ合わせる形で配置するなどレイアウトを工夫。さらに従来の小型本から中型本へとサイズを変更し、使い勝手を良くして大評判となる。
今回の放送では冒頭から、そんな重三郎の成功を予見させるようなシーンがあった。重三郎が編集に携わった吉原細見が、出版元の鱗形屋孫兵衛(うろこがたや・まごべえ)から茶屋の主人たちへ配られると、その出来栄えに感心する声が上がった。
「なんか……スッキリ仕上がっちゃねえか?」
今後のドラマの展開としては、重三郎はこのときの反響に手応えを感じて「読みやすさ」を徹底させるのだろうか。重三郎が本づくりのプロとして成長するプロセスも『べらぼう』の見どころの一つとなりそうだ。