2025年2月19日付のフィナンシャル・タイムズ紙は、米国が欧州を守らなくなる可能性を突き付けられた欧州は、今や軍備強化の議論を劇的に加速させているが、実際には欧州軍が米国なしに任務を遂行することは難しく、課題は多いとする解説記事を掲載している。

米国はもはやウクライナや欧州の安全保障の第一の保証人になりたくない。欧州は、トランプが強調した現実に目覚め、米国が守らなくなったら欧州はどうすべきかを真剣に考えるようになった。
北大西洋条約機構(NATO)東欧諸国は、プーチンが狙ってきた、欧州からの米軍の撤退を特に懸念している。欧州がやるべき優先事項は、防衛費の増額、防空能力の向上、米軍が提供する兵站その他の支援装備の更新、そして欧州軍の即応性の向上と効果的な核抑止力の維持である。
欧州の新たな緊急課題として公に表明されているのは、防衛再軍備に関する議論である。この議論はここ数日で劇的に加速し、各国の軍事予算の増額と共同プロジェクトの資金のための新たな財政メカニズムに焦点が当てられている。
これには、汎ヨーロッパ防空シールドや即応動員のための大型輸送機や空中給油の輸送システムが含まれる。欧州には長距離兵器と大量の兵站プラットフォームが大幅に不足している。
欧州がこれらの戦略的資産を獲得すれば、欧州は米国の支援なしにほぼすべての軍事任務を遂行できるようになる。しかし実際には米国なしに複雑な軍事作戦は実行できず、単純な任務さえ維持できない。
好例が、2013年にフランスがマリで軍事作戦を展開した際、米国に装備の輸送を依頼し、フランスの戦闘機への給油に、スペインに拠点を置く米国の空中給油機を頻繁に使用したことだ。欧州の主要防衛システムの大半は米国製で、F-35、地対空ミサイルシステムも全て米国製だ。
そして、ウクライナ戦争がある。米露和平交渉への対応を議論するために2月17日にパリに集まった欧州首脳は、ウクライナへの欧州平和維持軍の派遣には米国の支援が必要だと結論付けた。問題は、欧州の軍隊が80年間、米国の支援に頼るように編成され、訓練されてきたことであり、それを置き換えるには時間がかかり、数十億ユーロの費用が要る。