スマホ片手にロケ地巡礼 映画・アニメ向けアプリ充実
往年の女優、オードリー・ヘップバーンがアン王女を演じた映画「ローマの休日」。グレゴリー・ペック扮(ふん)する新聞記者のジョーが、顔の形をした石の彫刻「真実の口」に手を入れ、王女が慌てふためくシーンは有名だ。真実の口は、ローマ市街に実際にある教会の壁に存在する。どうしても実物が見たくて、10年以上前に現地を訪ねたことがある。
筆者に限らず、思い入れのある映画やドラマの撮影場所(ロケ地)を訪ね歩くのが好きな人はいるだろう。そうしたニーズに応えるため、映画やドラマのロケ地情報をスマートフォン(スマホ)で手軽に検索、表示できるアプリが充実してきた。
目的地まで迷わず
東京都内のロケ地情報が豊富なアプリが「東京ロケたび」だ。テレビドラマ「半沢直樹」などの人気作品から「3年B組 金八先生」など過去の名作まで、約140カ所のロケ地が登録されている。作品名や地名で検索すれば、ロケ地の場所が地図上で確認でき、スマホ内蔵の全地球測位システム(GPS)機能で現在地からのルートを表示すれば、目的地まで迷わずたどり着ける。
NHK連続テレビ小説「あまちゃん」(東京編)の舞台となった上野エリアの複数のロケ地をめぐるお薦めコースも用意されている。同アプリは東京都産業労働局観光部振興課が開発、2015年3月から提供を始めた。増加する訪日外国人も利用できるようにと、英語や中国語など5カ国語に対応している。
都内以外のロケ地情報を調べたいなら「全国ロケ地ガイド」を試してみるとよい。北は北海道、南は沖縄まで、全国各地のロケ地情報を網羅している。映画やドラマの作品名だけでなく、俳優・女優の氏名や都道府県別にロケ地データを絞り込める。デザインはシンプルだが使い勝手はいい。
映画のロケ地に特化したアプリもある。衛星放送を提供しているWOWOWが開発した「映画のある旅」だ。国内だけでなく、ニューヨークやロサンゼルスなどの米国、パリやロンドンなどの欧州、韓国やタイなどアジアのロケ地が登録されている。前述したローマの休日のロケ地も載っていた。筆者は紙の地図を片手に現地を右往左往したものだが、このスマホアプリがあればもっと楽にたどり着けたはずだ。
映画やドラマだけではない。現実の世界をモチーフにした漫画やアニメも多いが、そうした漫画やアニメ作品の「聖地巡り」をサポートしてくれるのが「にじたび」だ。主人公の通学路や学校など、物語やキャラクターにゆかりのある場所を訪問できる。お薦めコースとして、神山高校の古典部に所属する高校生が直面したナゾを推理する「氷菓」の舞台などが紹介されている。
同アプリの特徴が「レポート」機能だ。聖地で撮影した写真や訪れた感想をネット上に投稿して、他のユーザーと共有する機能を備えている。他のアニメファンが探索したルートを見て参考にしたり、いち早く聖地を訪れて他人に自慢したりできるのだ。
拡張現実として表示
アプリを開発したのは、動画共有サービス「ニコニコ動画」を立ち上げたドワンゴ。ユーザー同士のコミュニケーションを深める機能が充実しているところは、同社ならではといえるだろう。
アニメの舞台を検索できるアプリはほかにもある。ソニー企業(東京・中央)が提供する「舞台めぐり」は、茨城県東部の大洗町が舞台のアニメ「ガールズ&パンツァー」の聖地巡礼に役立つことで人気に火が付いた。
同アプリの特徴の一つが、アニメに登場する公式キャラクターを画面上に拡張現実(AR)として表示できること。アニメの舞台にもなった現実の風景をバックに、キャラクターを半透明に重ねて写真を撮影できるという。
今度の週末、大好きなドラマや映画、アニメの聖地をスマホ片手に巡ってみてはいかがだろうか。
(電子編集部 菅井光浩)
[日本経済新聞夕刊2015年5月7日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。