ベトナムの海で魚大量死 台湾塑膠工業建設中の製鉄所近く
【ハノイ=富山篤】台湾の化学最大手、台湾塑膠工業(台湾プラスチック)グループがベトナムで建設中の大型製鉄所の近くの海で魚が大量死し、公害ではないかとして騒動になっている。越天然資源・環境省は2日までに「台湾プラスチックが原因とする証拠はまだない」との調査結果を発表したが、ベトナム国民の多くは反発している。
大量死は製鉄所を建設中の中部ハティン省とその周辺の2省で4月上旬から確認された。ベトナム地元紙は台湾プラスチックが地中に埋設した1.5キロメートルのパイプを通じ、海に汚染物質が流れ出した疑いがあると指摘した。魚の大量死が見つかる数日前、同社はパイプの洗浄をしており、300トンの有毒な化学物質が使われたとしている。
ベトナムの天然資源・環境省のボー・トゥアン・ニャン副大臣は「原因特定まで何年もかかるかもしれない」との見通しを示した。
台湾プラスチックはこれまでのところ因果関係を認めていない。4月末に同社のハノイ事務所代表が「魚やエビか、近代的な製鉄所か、ベトナムはどちらかを選ばなければならない。両方手に入れるのは首相でも無理だ」と発言して反発を買い、翌日に本社の幹部が謝罪した。
台湾プラスチックが建設中の製鉄所はベトナム初の大型高炉で、将来的に世界最大級の年2200万トン以上を生産する計画。6月にも操業開始に当たる「火入れ」を実施する。JFEスチールも運営に参加する。