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北陸新幹線 豪雪地帯の快走支える駅・構造物

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ケンプラッツ

2015年3月14日にいよいよ開業する、北陸新幹線の長野─金沢間。東京─金沢間が最短2時間28分で結ばれ、首都圏と北陸地方とのアクセスが大幅に向上する。2月上旬にJR西日本が開催した報道関係者向けの試乗会に参加し、一足早く真新しい北陸の動脈の姿を見てきた。

北陸新幹線は、東京都と大阪市を上信越・北陸地方経由で結ぶ路線として1973年に整備計画が決定した、いわゆる「整備新幹線」5路線のうちの1路線。東京─大宮─高崎間は東北新幹線・上越新幹線と共用する形で、これまで「長野新幹線」と呼ばれてきた高崎─長野間約117kmは1997年10月に開業している。

今回開業する長野─金沢間は、1992年8月に石動(富山県小矢部市)─金沢間が最初の区間として工事に着手。以来、約22年半の年月を経て、東京─金沢間が新幹線で結ばれることになる。

長野―金沢間の延長は約228km。工事延長は長野までの開業時に既に完成している長野新幹線車両センター付近から、金沢駅の先約12kmに設けられた白山総合車両所までの約231kmだ。

長野・新潟・富山・石川の4県を通り、飯山・上越妙高・糸魚川・黒部宇奈月温泉・富山・新高岡・金沢の7駅が新たに設けられる。営業主体は、上越妙高駅を境に長野側がJR東日本、金沢側がJR西日本となる。

金箔の飾りが輝く金沢駅

新たに新幹線のターミナルとなる金沢駅は、東口と西口を結ぶコンコースのリニューアル工事が行われていた。新幹線の改札口は、開業に合わせ「兼六園口(東口)」と改称される東口側となる。

伝統芸能の鼓をイメージしたという「鼓門」をくぐり、ガラス張りの巨大な「もてなしドーム」に覆われた東口広場から駅舎に入ると、その左手が新幹線改札口となる。コンコースには「鼓門」をイメージした門型の柱を設置して全体的な統一感を演出したデザインとなる予定で、天井には柱の一部が姿を現していた。

新幹線ホームは島式2面4線の配置で、東口広場の「もてなしドーム」と調和した波のような曲線を描く屋根が特徴。ドーム状になった中央部の側面ガラス窓からは自然光が差し込み、ホーム上は明るい雰囲気だ。

屋根を支える60本の柱には計2万枚以上の金箔を使ったという飾りを施しているほか、各ホームの可動式ホーム柵(ホームドア)も加賀友禅の「加賀五彩」にちなみ、各線で色が異なるなど、随所に加賀の伝統を活かした意匠が見られる。

滑るように発車したW7系車両

試乗会当日に使用された車両は、JR西日本のW7系12両編成。既に長野新幹線で運行しているJR東日本のE7系と同型の車両だ。列車は東京側から1号車、2号車の順。金沢側先頭車の12号車は、1両に座席が18席のみの最上位クラス「グランクラス」、そして隣の11号車がグリーン車となる。

今回の試乗列車は富山以外の途中駅ではドアを開閉しなかったものの、飯山駅を除く全駅に停車する行程で運転された。開業後のダイヤとは異なるものの、金沢─東京間を結ぶ『はくたか』に近い。列車は午前9時56分、衝撃もなく滑るように金沢駅を発車した。

"豪雪対策"の高架とトンネルの連続

第三セクターの「IRいしかわ鉄道」として新幹線開業後に経営分離される北陸本線を左手に見ながら、時折ゆるやかなカーブが現れる高架線上を滑らかに加速し、金沢駅を出て4分ほどで列車は最初のトンネルに突入する。

今回の開業区間は、工事延長約231.1kmのうちトンネルが計103.1kmと全体の約44%を占める。次いで、高架区間が全線の約40%にあたる92.4km、橋りょうが約14%にあたる31.7kmと、全線にわたってトンネルと高架の連続だ。

高架橋は線路の部分が一段高くなった構造となっている。これは冬期の積雪対策として、線路上に積もった雪を列車や除雪車で線路脇のスペースに除雪する「閉床式貯雪型」と呼ばれる構造だ。金沢─長野間は全区間にわたって積雪の多い地域のため、この「閉床式貯雪型」が高架橋の基本形態となっている。

閉床式貯雪型でも、高架橋の外に雪を落とすことができない市街地などでは、左右のスペースに融雪パネルを設けたり、幅を広げて貯雪量を多くしたりと、周辺環境に合わせて構造を変えている。

高架周辺に雪を落とすスペースが確保されている区間では、高架橋側面の防音壁の上部に斜め内側を向いた雪よけを設けた「半雪覆式貯雪型」や、防音壁の外側に「投雪ガイド板」を設けた。積雪量が貯雪能力を越えた場合には、ロータリー車で外側に投雪する「側方開床式貯雪型」が見られる。

このほか、特に豪雪地帯として知られる飯山・上越地域やポイントの周辺では、スプリンクラーを使った「散水消雪型」を採用している。

トンネルは特に長野県内と新潟県内に多く、両県をまたぐ飯山トンネルは延長22km251mと、今回の開業区間で最も長い。同トンネルは日本の鉄道トンネル全体でも、青函トンネル(53km850m)、東北新幹線の八甲田トンネル(26km455m)、岩手一戸トンネル(25km808m)に次ぐ4番目の長さを誇る。

路面電車が乗り入れる富山駅

最初の中間駅・新高岡には金沢から約15分で到着。同駅は標準的な相対式ホーム2面2線の駅だ。今回新たに開業する7駅はいずれも高架駅で、金沢・富山・上越妙高の3駅が2面4線、その他4駅は2面2線の構造となっている。

新高岡から次の富山までの駅間距離は、今回の開業区間で最も短い18.9km。トンネルも各駅間で最も少なく1カ所だけだ。橋長428m、最大支間長128mの4径間連続PCエクストラドーズド橋、神通川橋りょうを渡ると、列車は金沢からわずか25分で富山に到着した。

富山駅付近は新幹線の開業に合わせ、JR在来線(北陸本線・高山本線)と富山地方鉄道本線の連続立体交差化事業が行われている。同駅の新幹線ホーム建設と在来線の高架化工事にあたっては、まず在来線の線路を北側へと移設し、空いたスペースに新幹線と北陸本線上り・高山本線の高架線を建設した。今後は、両線の高架への移設と北陸本線下り線の高架化工事が行われる。

富山駅の高架下には、新幹線開業と同時に路面電車の乗り入れも始まる。富山市などは駅の北側を走る富山ライトレールと南側を走る富山地方鉄道の市内電車(富山軌道線)を結ぶ「南北接続事業」を進めており、今回はその第1期事業として市内電車が新幹線高架下の「富山駅」停留場まで乗り入れを開始する。

右に立山連峰、左に日本海

富山駅から先は、進行方向右手の車窓に冠雪した立山連峰が広がる。これまでほぼ平坦だった線路は次の黒部宇奈月温泉駅に近づくにつれて次第にアップダウンが増え、北陸新幹線最急勾配の30パーミル(1000分の30)区間も出現するが、軽快な走りから勾配の存在にはなかなか気づかない。最も立山連峰に近づくのは、黒部宇奈月温泉駅の付近。駅ホームの窓からも雄大な景色が望めそうだ。

車窓に広がる立山連峰を楽しめるのは、黒部宇奈月温泉駅を出て約4分ほどの朝日トンネルに入るまで。北陸本線や国道8号、北陸自動車道が海岸沿いの崖にへばりつくように走り、北陸の難所として知られる「親不知・子不知」の海岸付近は、延長7570mの同トンネルを含む5本のトンネルで走り抜ける。トンネル同士の間が短い区間はシェルターで覆われているため、実感としては3つのトンネルに見える。

4つ目(実感としては2つ目)のトンネルを抜けると、線路は北陸自動車道をまたぎ越す。車窓からでは他の高架橋と見分けがつかないが、海岸から約600mしか離れていないため、塩害への対策として世界で初めて「ニッケル系高耐候性鋼(Ni鋼)」を採用した、長さ393mの「北陸道架道橋」だ。

糸魚川駅は今回の開業区間で最も海に近い駅で、日本海から駅まで約400mの距離。右手の車窓やホームからも海が見渡せる。

電気の周波数が変わる新潟県内

糸魚川から次の上越妙高までの距離は37km。この区間は金沢─長野間の他の区間と電気の周波数が異なる。中部電力・北陸電力から受電する他の区間が交流2万5000V・60Hzであるのに対し、東北電力から受電するため50Hzとなっている。

北陸新幹線は、既に開業している高崎─長野間でも軽井沢駅付近を境に東京寄りが50Hz、長野寄りが60Hzとなっているため、東京─金沢間を結ぶ列車は片道で計3回周波数を切り替える。切り替えは自動的に行われ、乗車していても気づくことはない。

新幹線では継目を極力減らしたロングレールが使用されるが、今回の開業区間で最も長い約33kmのロングレールが使用されているのもこの区間だ。金沢─長野間の軌道は、基本的に全区間でコンクリート板にレールを固定するスラブ軌道を採用している。最高速度の時速260kmでも揺れは極めて少なく、まさに滑るような走りを見せる。

何本ものトンネルを抜けて上越妙高に近づくと、車窓風景は先ほどまでとは大きく変わり、一面に雪景色が広がった。

上越妙高からはJR東日本の区間に入るため、駅名標は白地に緑のラインが入ったJR東日本のスタイルに変わる。同駅は、新幹線開業と同時に第三セクターの「えちごトキめき鉄道」に経営分離されるJR信越線との接続駅。同線の駅名はこれまで「脇野田」だったが、新幹線の開業に合わせて「上越妙高」に名を改め、新潟方面とを結ぶ在来線特急も運転を開始する。

全国4番目の長さ、難工事だった飯山トンネル

上越妙高から次の飯山までの距離は29.6kmで、うち約22kmは新潟・長野県境の山岳地帯を貫く飯山トンネルだ。列車は上越妙高を発車後約3分で同トンネルへと突入する。

フォッサマグナの東縁に位置し、複雑な地質構造であることや、大きな膨張性を示す地山や高圧の湧水が発生する区間が長いこと、また7割超の区間で可燃性ガスが湧出するなど、今回の開業区間でも特に難工事だったとされるトンネルだ。

同トンネルは1998年から約9年半の歳月をかけて2007年12月に貫通した。内部には30パーミルの上り勾配と下り勾配の両方があるものの、W7系はスムーズな走りで暗闇を駆け抜け、僅か7分足らずで22kmのトンネルを通過。試乗列車はトンネルに挟まれた飯山駅を一瞬のうちに通過して疾走を続け、飯山駅通過から10分ほどで車窓には長野の市街地が広がった。

試乗列車は予定通り午前11時30分、長野駅の11番線に到着。金沢─長野間約228kmの所要時間は1時間34分だった。営業運転開始後、速達列車の「かがやき」は最速1時間5分でこの区間を結ぶことになる。首都圏と北陸地方の時間距離が大幅に短縮されるのはもちろん、近くて遠い印象のあった北陸・信越地域の相互交流も活発化していくだろう。

高崎─長野間の開業から約16年半、ついに金沢まで延伸開業する北陸新幹線。だが、同新幹線は金沢が終点ではない。既に敦賀(福井県)までの工事延長114kmが2012年6月に工事実施計画の認可を受け着手しており、2015年1月には政府・与党が開業時期を当初予定より3年前倒しし、2022年度とする方針を決めた。

予定通り工事が進めば、今回の長野─金沢間開業から約7年後には「敦賀」の行先を掲げた列車が走ることになる。

(RailPlanet 小佐野カゲトシ)

[ケンプラッツ2015年2月23日付記事を基に再構成]

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