「核のごみ」受け入れ拒否で原発即時ゼロも
政府が論点整理
政府は4日、エネルギー・環境会議(議長・古川元久国家戦略相)を開き、2030年時点の原子力発電をゼロにした場合の課題について議論した。これまでは使用済み核燃料を再利用するとしていた原子力政策の変更に伴う影響を指摘。使用済み燃料を置いている地方自治体の対応によっては原発が段階的ではなく「即時ゼロ」になる懸念を示した。
古川戦略相らが会議で示した原発ゼロの論点整理は、30年時点で原発をゼロにした場合、家庭の電気代を含む光熱費が月額で最大3万2243円となり、10年実績(1万6900円)の約2倍に上昇するとの試算を改めて示した。
ただ、古川氏は会議後の会見で「原発ゼロ」を9月中に政府がまとめるエネルギー環境戦略に明記するかは「現時点で特定の方向性を固めるに至っていない」と述べるにとどめた。
論点整理では、原発縮小により液化天然ガス(LNG)や原油を調達する際の国際交渉力が低下し、主に都市部以外で使われるガス代や灯油代も上昇する可能性を指摘した。
原発ゼロを達成するには、既存のビルの9割で現行の省エネ基準を達成する必要があり、省エネ関連の投資額は累計で100兆円になるという。「経済負担が重くなってでも、相当高水準の省エネを実施する必要」と強調した。
論点整理は再利用目的で一時的に使用済み核燃料を保管している青森県などの原発立地自治体が反発するおそれがあるとも言及。これらの自治体が「核のごみ」の受け入れを拒否して置き場がなくなると、30年よりも前に原発がゼロになる可能性がある。古川戦略相は「今まさにさまざま調整している」と述べ、対応策を検討している方針も明らかにした。
原発の代替となる太陽光など再生可能エネルギーの拡大には、30年までに50兆円の投資が必要と試算。再生エネ普及の課題として、送電網の整備費用や、土地の確保などを挙げ「特に風力発電がどの程度導入可能になるかが(原発ゼロの)目標達成のカギ」とした。