眼鏡型ネット端末試作 グーグル、ハードも独自開発
【シリコンバレー=奥平和行】インターネット検索最大手の米グーグルがパソコンや眼鏡型の新ネット端末などIT(情報技術)機器への取り組みを強化している。独自開発したノート型パソコンを21日に発売し、眼鏡型端末の試験販売も近く始める。得意とするサービスやソフトに加えて自社開発の機器で使い勝手を良くし、ネット広告の閲覧を増やす考えだ。
ノート型パソコン「クロームブック・ピクセル」を米英で21日に発売した。日本での販売は未定。同社はパソコン向けの基本ソフト(OS)「クロームOS」を開発し、2011年から韓国のサムスン電子などに供給してきた。単独でパソコンを開発・販売するのは今回が初めて。
ピクセルはディスプレーの解像度が高く、画面を手で触れて操作できる。価格は1299ドル(約12万1000円)からと、サムスン製の5倍以上。クロームOS搭載パソコン「クロームブック」の最上位機種と位置付け、本格的なパソコンが必要な利用者に売り込む。
「大きな変化迎える」
グーグルはネット検索が主力事業で、売上高の8割以上をネット広告が占める。機器への取り組みは目立たなかったが、「現在、コンピューターはパソコン誕生に匹敵する大きな変化を迎えており、自ら機器を手掛けることが必要だ」(ラリー・ペイジ最高経営責任者=CEO)としている。
12年には、通信機器メーカーの米モトローラ・モビリティーを買収。眼鏡型端末「グーグル・グラス」の開発も進める。新端末は小型ディスプレーやカメラを内蔵し、ネット閲覧や動画撮影、交流サイト(SNS)への投稿などが可能だ。
米国で試作機の購入希望者の公募を開始。新端末の面白い利用法を考え出した希望者を対象に、1500ドルで販売する。
店舗開く可能性も
ただ、グーグルは自社開発した機器の販売自体で稼ぐ考えは薄い。機器開発を強化する背景には、IT業界で機器、ソフト、サービスを一括提供し、利便性や快適性を高める流れが強まっている事情がある。
米アップルはこの路線で先行し、スマートフォン(スマホ)「iPhone(アイフォーン)」などで成功。アップルは直営店の運営も軌道に乗せており、グーグルも店舗開設で追随するとの見方が浮上している。
クロームOSの搭載パソコンはワープロなどのソフトをダウンロードできず、グーグルは利用者がネット経由で自社のソフト提供サービスを使うことを想定。広告を見る人を増やす効果を狙う。
グーグル以外では、ネット通販の米アマゾン・ドット・コムが11年に独自のタブレット(多機能携帯端末)に参入。自社で運営するコンテンツ配信などの利用拡大を促している。
米マイクロソフト(MS)も自社OS「ウィンドウズ8」を搭載した独自タブレットを発売した。パソコンに加え、タブレットでもウィンドウズ8の搭載製品を増やすことが狙いだ。
グーグルは自社でパソコンを開発・販売することで、OS供給先として協力してきたサムスンなどとの関係を損なうリスクを負う。MSも同様の課題を抱えており、従来の事業モデルと新たな「垂直統合」の折り合いをつける必要が出ている。