オリンパス問題、日本株を揺るがすか プロの見方
オリンパス株の売りが止まらない。9日は前日に続き、制限値幅の下限(ストップ安水準)の584円まで売られ、29年半ぶりの安値となった。1990年代から続いていたとされるオリンパスの損失隠し問題によって、日本企業の企業統治(コーポレート・ガバナンス)に外国人投資家が不信の目を向け、日本株全体に波及する可能性が出てきた。市場関係者の見方を聞いた。
「日本企業、変化のきっかけに」
UBPインベストメンツ 吉原和仁社長
オリンパスの損失隠しは日本企業のコーポレート・ガバナンスの欠如を印象づけた。ただ、海外投資家にとって日本で企業統治が機能していないことはすでに周知の事実。「やはり」という感想は抱いても、あらためて売りのきっかけになることはないのではないか。
そもそも日本株が「万年割安」の状態で放置されているのは、ガバナンスが機能不全であるとの見方が株価に織り込まれているからだ。2003~05年ころには、日本でも株主資本主義が根付くとの期待から海外資金が日本株に流入した。だがその後こうした機運はしぼみ、日本企業への期待も薄れている。
米エンロン事件の例など、企業の虚偽報告は日本に限った話ではない。日本の問題はその後の対応だ。今回、海外メディアがこの問題を盛んに報じ始めた時も、日本国内ではそれほど話題になっていないように見えたことの方に驚いたと話す海外投資家もいた。企業自身に加えて、当局やマスコミなど社会が情報開示を追及する姿勢を持たなければ、透明性の高い資本市場は形成されない。
もっともオリンパスの損失隠しが表面化したことは、長い目でみれば、日本企業が変化する良いきっかけになるかもしれない。企業経営者はコーポレートガバナンスを確立しなければならないという危機感を持ち始めている。うまくいけば日本株の水準訂正にもつながるだろう。
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「オリンパスは例外的、全容解明には時間」
りそな銀行 戸田浩司チーフ・ファンド・マネージャー
オリンパスの問題を受け、海外投資家が日本株全体に不信感を抱くのではないかという不安は若干ある。問題の全容解明にはなお時間がかかりそうで、日本株相場全体が不安定になる場面はまだあるだろう。
ただ、これで日本企業の財務情報の信頼性が揺らぎ、「次のオリンパス」探しが続く展開は想定していない。企業が損失を隠す例は世界中どこでもあり、日本だけの問題ではない。日本企業のほとんどは、バブル崩壊の後遺症はすでにかなり整理したはずで、オリンパスはまだ引きずっていた例外的なケースとみている。
直近の住宅バブル崩壊で多くの金融機関が損失を抱えた欧米と違い、日本の今の金融システムは安定している。2008年のリーマン・ショックで企業が出した損失がこれからどんどん表面化する、というリスクは少ないだろう。
(聞き手は北松円香)
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