みずほ、再発防止つまずき 5度目障害も顧客へ周知遅く
みずほフィナンシャルグループ(FG)が再びつまずいた。システム障害により20日の午前に全国のおよそ450ある店舗で窓口での入金や振り込みなどの取引が一時できなくなった。2021年に入ってからすでに4件の障害を起こし原因究明と再発防止に取り組むさなかに障害を起こした。システムの安定稼働とみずほの再生に向けた道のりは険しい。
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春の一連のシステム障害は、2月28日に定期預金のデータを移行する作業が引き金となり、ATMに通帳やキャッシュカードが取り込まれる障害が起きたのが始まりだった。一時は全国の7割強のATMが動かなくなる事態につながった。その後も立て続けにトラブルが生じたが、今回の障害も含めて全て直接的な原因は異なるという。
みずほ銀行で起きた2~3月のシステム障害を受けて親会社のみずほFGは外部の専門家を招いた第三者委員会を設置。その報告書では「危機に対応する組織の弱さ」などが指摘され、みずほも再発防止策を実行に移しつつあった。
6月に公表した再発防止策では新勘定系システム「MINORI」や機器の総点検は6~12月末までに実施するとしていた。障害発生時には各部門が素早く連携し顧客への影響を最小限に抑える体制の確保も目標に掲げ、システム関連の適切な人材配置も9月末メドに整える予定だった。
みずほFGの坂井辰史社長は今回の障害を受けて再発防止策を「見直していきたい」と述べた。現時点で、有効な対策が打てるかは分からない。
基幹システムと営業店の端末をつなぐ部分の機器故障は判明しているが、そもそも故障した原因が特定できず、バックアップが機能しなかった原因も調査するという。再発防止を進める前に障害が起きた原因すら分からない点に深刻さがある。
顧客への対応が適切だったかの検証も必要だ。障害が起きたのは前日19日の午後8時57分。夜間に復旧作業し、20日の開業までの復旧を目指したが間に合わず「開業に間に合わないと分かった時」(藤原弘治みずほ銀行頭取)として、20日の開業30分前の朝8時半にホームページにお知らせを掲載した。
過去のトラブルの教訓も十分に生かされていない。2月のATM障害時も問題を把握してからホームページでの告知が遅れた。藤原頭取は「開業の30分前の告知が適切だったかどうかは反省すべき材料」と話した。実際に「保険料を支払いに来たがシステムトラブルで窓口が使えないと言われ引き返すところ」といった顧客もいた。
「いつトラブルの被害を受けるか不安で仕方ない」「こういうことが続くと信用を無くす」。20日は銀行取引が増える「五十日(ごとおび)」にあたる。午前に店舗を訪れた顧客からは障害が繰り返される事態に不安を抱く声が相次いだ。
6月には坂井社長を6カ月減給にするなどの社内処分を公表している。金融庁はみずほに近く業務改善命令を出す方向で検討していた。
5度目の障害発生を受け、金融庁はみずほ側に追加でヒアリングを実施し要因や経緯を詳しく調べる方針だ。前日夜に把握した障害に対して、なぜ復旧作業にこれほど時間がかかったのかといったことが焦点となる。金融庁の調査結果も受けてみずほは再発防止策を見直すことになりそうだ。
庁内の衝撃は強い。ある幹部は「検査が大詰めを迎える中のトラブルで、影響は避けられないだろう」とみる。別の幹部は「経緯や対応をよく確認する必要がある」と指摘した。