出前館、膨らむ販促費 22年8月期営業赤字500億円超
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料理宅配の出前館は14日、2022年8月期の連結営業損益が500億~550億円の赤字(前期は179億円の赤字)になる見通しだと発表した。利用者の囲い込みへ販促費が膨らみ、前期の売上高(290億円)を超える水準となる。新型コロナウイルス禍で急拡大した市場環境下で同業首位のウーバーイーツジャパン(東京・港)との競争が激化。シェア争奪に向けた投資を緩めない姿勢だが、消耗戦の様相は強まっている。
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「今期は前期以上に事業拡大を進める。競争環境は激化しているが、変わらずナンバーワンプレーヤーになる目標で進める」。14日に開いた決算説明会で藤井英雄社長はこう話した。
22年8月期の出前館の流通総額は前期から2倍の3300億円を、1年以内に1回以上購入する「アクティブユーザー」は6割増の1200万人をそれぞれ見込む。9月中旬に公募増資やZホールディングス(ZHD)への第三者割当増資などで約830億円の資金調達を発表。調達資金の大半を割引クーポンやテレビCMなどに充て、利用者の囲い込みや配達員の確保を加速する考えだ。
同日発表した21年8月期の連結最終損益は206億円の赤字(前の期は41億円の赤字)と過去最大だった。外出自粛を追い風に売上高は前の期から3倍近くに増え、290億円となったが、広告宣伝費などがかさんだ。
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積極的な販促投資を続ける中、コストの圧迫も懸念される。個人事業主への配達代行費が中心の「売上原価」は売り上げによって変動する面が大きい。ただ、売上高に占める割合は20年9~11月の40%に対し、足元の21年6~8月は60%まで高まった。需要の拡大で配達員の人手不足が進み、売り上げの伸びよりも配達コストの上昇が加速度的に増えている。
データ分析のヴァリューズ(東京・港)によると、9月のアプリ利用者数はウーバーイーツが568万人、出前館は403万人。1年前からいずれも200万人超の伸びで差は縮まっている。加盟店舗数はウーバーイーツが13万店強、出前館は8万店強で激しく競う。一方で地方ではフィンランド発の「ウォルト」や、独デリバリー・ヒーローの「フードパンダ」が存在感を増しており、シェア争奪へ投資の手を緩められる状況ではない。
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足元では配達員の確保も課題となる。8月末の配達員数は1年前から約7倍に伸び、22年8月期もさらに4倍近く増やすという。ただ、これまでコロナ禍で休業していた飲食店からの雇用の受け皿になっていた面があり、行動制限緩和が進めば配達員の確保が難しくなる可能性がある。ドミノ・ピザジャパン(東京・千代田)は年内にも新たにアルバイトを約1万人を採用する予定で、人材争奪も激しさを増す。
出前館は2年後の黒字転換を目指しているが、実現に向けてZHDとの連携を模索する。ZHD傘下のLINEとも連携し集客やポイント施策を強化。さらに7月末からZHD傘下のアスクルと洗濯や掃除用品など日用品の即時配達の実証実験を始めた。料理以外の分野でもサービスを広げることで、新たな需要の獲得を狙っている。
(河端里咲)