夜の「ダンス文化」守れ クラブが自主ルール準備
DJやミュージシャンが流す大音量の音楽に合わせて客が踊ったり、酒を楽しんだりするクラブ。風営法上、営業は原則、午前0時までだが、"深夜文化"のクラブに客が押し寄せるのは午前1~2時以降。多くのクラブが無許可で営業し、警察の摘発が相次いだ。
警察庁によると、クラブが集まる東京・六本木を管轄する警視庁麻布署管内で1店舗あたりの110番通報数は、クラブが居酒屋の約9倍(2013年3~5月)。厚生労働省研究班が12年に2つのクラブイベント来場者にアンケートを取ると、回答者の約2割が自宅などでの脱法ドラッグ使用歴があると回答した。
「騒音やもめ事、薬物疑惑などがある以上、クラブは風営法の枠から外せない」というのが警察庁の立場。これに対しクラブ側には、自らトラブルを減らす方策を議論し、規制のあり方を巡り当局とも対話しようという動きが出てきた。
13年4月、約50のクラブ運営者やDJ、ミュージシャンらが結成した「クラブとクラブカルチャーを守る会」。活動は活発だ。毎週のように会議を開き、自主的なルールづくりに着手。入店時の身分証明書チェックや防犯カメラの設置、20歳未満には酒を出さないなどの案を検討してきた。
広報を担当するラッパーのダースレイダー(本名・和田礼)さん(36)は「自分たちが対処する姿勢を見せなければ何も変わらない」。自主ルールは超党派の国会議員によるダンス議連にも説明した。
ダースレイダーさんは「大勢の人が集まり、好きなことをやる場所である以上、トラブルの可能性を念頭に置く必要がある」とした上で「問題や犯罪を減らしたいのは一緒。同じテーブルにつけるはず」と警察側にも対話を呼びかける。
こうしたなか、同会にも加わる大型店を中心とする約20業者が、風営法44条に基づき「営業の適正化と健全化」を目的とする業界団体の設立準備を始めた。警察側との正式な窓口になる見込み。既に大阪市などの十数業者が「西日本クラブ協会」をつくっており、業界と警察側の本格的な対話が始まる機運が出ている。
ただ、風営法が「ダンス飲食営業」の要件とする面積より小さいことなどから営業許可を取れないクラブが、健全化にどう取り組むかといった課題は残る。ダースレイダーさんは「風営法ができて以来、何十年と蓄積してきた問題を1日2日でクリアできると思っていない。腰を据えて取り組む覚悟」と話している。