算木
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/28 14:13 UTC 版)
歴史
中国では紀元前から算木が使われていた。1954年、湖南省長沙の左家公山15号楚墓で、戦国時代の算木が四十数本発掘された[1][2]。文献の記録はさらに古く、老子には「善く数える者は籌策(ちゅうさく)を用いず」とある[3]。
13世紀にそろばんが使われるようになるまで、算木で計算を行った[4]。算木はそろばんと異なり多元の代数方程式を解くことができたが(別項参照)、中国ではそろばんの普及により解法が失われた。江戸時代の日本の数学者はそろばんと並んで算木を用い、数学の発展に貢献した[5]。
算木の使用
算木は長さ 3 - 14cm の木製または竹製の細長い直方体で、縦または横に並べて数を表し、配列を動かすことで四則演算、開平、開立などの計算をした。1から5まではその数だけ算木を並べ、6以上は異なる向きの1本で5を表した。
アラビア数字のように左を上位として横に並べることで数を示す[5]。隣の桁と間違えないよう、桁によって算木の向きを変え、縦式によって奇数桁(一・百・万……の位)を、横式によって偶数桁(十・千……の位)を示した。孫子算経には「一は縦、十は横、百は立ち、千は倒れる」とある[6]。
日本では算盤(さんばん)と呼ばれる格子を書いた布の上で算木を使用した[5]。はじめは中国と同じく縦式横式のしくみを用いていたが、江戸後期になると算木を使って計算する時に横式を用いず、一位十位百位など位にかかわらず縦式のみを扱う者が多くなった(算盤の格子によって桁がわかるために、縦横の区別がいらなかったため)。ただし、紙の上では格子はなく続けざまに算木を書くので従来どおり縦式横式で書き続けた。
算木は2色に着色され、赤の算木は正の数を、黒の算木は負の数を表した。0 はその場所に算木を置かず空けておくことで示し、後に碁石を置いて明示するようになった。九章算術には、「(引き算の時)同符号は引き、異符号は加える。正を無入から引いて負とし、負を無入から引いて正とする」とある[7][8]。この「無入」とは「0」のことである。これから、0と正負の計算を理解していたことが分かる。
算木を利用する事で、有理数の四則演算ができ、また高次の方程式の解を考察する事が可能である[9]。分数の約分を互除法で求める事にも使われる[10]。
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | |
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縦式 | ||||||||||
横式 |
0 | -1 | -2 | -3 | -4 | -5 | -6 | -7 | -8 | -9 | |
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縦式 | ||||||||||
横式 |
例:
231 | ||||
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5089 | ||||
-407 | ||||
-6720 |
算木数字
算木を紙に記すときは正の数をそのまま書き、負の数は最後の桁に斜線を書いて示した。この算木数字は真の位取り記数法である。横式の字の縦棒は、字の高さを揃えるため短く書いた。
また当初「0」は空白だったが、「〇」を書くようになった。718年に瞿曇悉達によりインド数字から導入されたとも[7]、中国語で欠字を表した「□」から来ているとも[11]言われる。漢数字#〇を参照すること。
13世紀、南宋の数学者は 4、5、9の数字の画数を減らして書きやすくした[11]。この新しい数字の横式は最終的に蘇州号碼に変化した。日本では紙の上では従来の算木数字を使い続けた。
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | |
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縦式 | ||||||||||
横式 |
-0 | -1 | -2 | -3 | -4 | -5 | -6 | -7 | -8 | -9 | |
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縦式 |
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | |
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縦式 | ||||||||||
横式 |
例:
231 | |
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5089 | |
-407 | |
-6720 |
- ^ 先秦時期竹林資源的利用 2007年12月16日閲覧。
- ^ 中国独特的計算工具 2007年12月16日閲覧。
- ^ 老子: 善數者不用籌策。
- ^ 第1章 江戸時代初期 : 江戸の数学 国立国会図書館
- ^ a b c 矢代(2004).
- ^ http://zh.wikisource.org/wiki/%E5%AD%AB%E5%AD%90%E7%AE%97%E7%B6%93 孫子算經: 先識其位,一従十横,百立千僵,千十相望,萬百相當。
- ^ a b c 王青翔 (1999), 「算木」を超えた男, 東京: 東洋書店, ISBN 4-88595-226-3
- ^ 正負術曰: 同名相除,異名相益,正無入負之,負無入正之。其異名相除,同名相益,正無入正之,負無入負之。
- ^ 西森敏之「算木で3次方程式を解く」(PDF)『数学通信』第11巻第1号、日本数学会、2006年5月、15-27頁、ISSN 13421387、NAID 40007315668。
- ^ 杜威「『九章算術』に関する研究 : 方田章を中心として」『秋田大学教育文化学部研究紀要 教育科学』第55巻、秋田大学教育文化学部、2000年3月、23-30頁、ISSN 13485288、NAID 110000088206。
- ^ a b 銭宝琮 (1964), 中国数学史, 北京: 科学出版社
- ^ (PDF) The Unicode Standard, Version 5.0 - Electronic edition, Unicode, Inc., (2006), p. 558
- ^ (PDF) The Unicode Standard, Version 5.0 - Electronic edition, Unicode, Inc., (2006), pp. 499-500
- ^ 古沢恒敏編『正しい家紋帖』(金園社、1995年)pp.199-200
算木と同じ種類の言葉
- >> 「算木」を含む用語の索引
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