
低体温症とは|実際に起きた登山中の遭難事故と症状・対策まとめ【医師監修】
「低体温症」がどんな症状かご存知ですか? 登山をするならぜひ心得ておきたい症状の1つですが、「高い山には行かないし、自分には関係ない!大丈夫!」と思っている人も少なくありません。そんな人にこそこの症状や対策をぜひ知ってほしいのです。
なぜなら、標高1,000mに満たない低山や、真夏の登山においても低体温症による遭難死亡事故が起きているからです。そう、低体温症に季節や標高は関係ありません。いざという時のために、正しい対処法・対策をしっかりと学んでおきましょう。
2022/12/27 更新
目次
侮るなかれ、低体温症
近年、この低体温症による山岳遭難が発生しています。中には悲しい結果になってしまった事故もあるのが現実です。まずは、低体温症が原因となった過去の事故事例を見ていきましょう。
実際に起きた登山中の死亡事故
2012年GW 白馬岳
2012年のGW。白馬岳三国境付近で6名の登山パーティー全員が亡くなる遭難事故がありました。事故発生当時、現場付近の山は突発的な気候の変化が起こったといいます。青空の好天から約1時間ほどでみぞれ混じりの吹雪に見舞われ、身動きが取れなくなってしまったのです。
全員の死因は低体温症でした。
白馬岳で発生した遭難死亡事故の現場は、標高2,700mの高所。しかし、何も標高の高い山だけ危険性があるわけではありません。低体温症による死亡事故は低山でも発生しています。
2018年5月、新潟県五頭連峰で親子2名が遭難し、帰らぬ人となってしまいました。報道によると、本件の死因も低体温症。遺体は標高1000mにも満たない場所で発見されました。
2009年7月 トムラウシ山
夏でも低体温症による事故は発生しています。2009年7月、ツアーガイドを含む8名の登山者が低体温症により亡くなりました。北海道大雪山系トムラウシ山で起こった遭難事故です。
様々な判断ミスが重なり、厳しい天候に晒された結果、低体温症を引き起こし、多くの尊い命が失われる結果となってしまいました。
ここで分かることは、低体温症に標高や季節は関係ないということ。低い山でも、真夏であっても、悪天候に見舞われれば低体温症を引き起こす危険性は十分にあり得るのです。
低体温症の分類
夏の時期は日射病や熱中症などについつい注意が向いてしまいますが、悪天候に見舞われれば低体温症を引き起こす危険性は十分にあり得るのです。低体温症は、分類すると下記の3つに分かれます。
①急性低体温症(冷水などに浸かって6時間以内に発症)
②亜急性低体温症(寒冷に曝されて6~24時間以内に発症)
③慢性低体温症(病的なもの)
登山においては、急性も亜急性も起こり得ます。寒冷に強風が加わると、夏山でも体温は下降し、これにより加速的に急性低体温症になるケースがあるのです。
どういうときに起こるの? 条件は?
では、低体温症が起こる条件とはいったい何なのでしょうか? 日本集団災害医学会評議委員で、NPO災害人道医療支援会常任理事(HuMA)の金田正樹氏によるとそれは以下の3つ。
・気温10℃以下
・雨か雪(体が濡れる)
・10m/秒以上の強風下
特に風速はピンとこないかもしれませんが、10mとは風に向かって歩きにくくなり、傘がさせなくなる強さの風(*)のこと。山の天気予報を見れば、この10mという数字が出てくることは珍しくありません。