
【最大5時間も変化!】日が短くなる秋冬。夏との日照時間との違い&リスクを徹底調査してみた
夏山から登山を始めた場合、夏と秋冬とでは“日照時間の差”があることを、意外と見落としがち。でも行動できる時間が◯時間も短くなるとしたら……。リスクとして見落としがちな「日照時間」に着目し、そのメカニズムや季節による時間差、実際に日没後の山を登って感じた危険などを徹底調査していきます。
2022/11/08 更新
目次
秋冬の登山。夏との違いは何だろう?
秋も深まり、少しずつ冬の気配が近づいてきました。これからの季節はゆったりと静かな登山が楽しめるのも魅力。高い山では冠雪のニュースも聞こえはじめ、里山でも紅葉が見頃を迎える頃ではないでしょうか。
その一方で、秋冬の登山には夏とは異なるリスクがあります。
見落としがちなのが「日照時間の違い」
夏と秋冬の山の大きな違いは「気温」「気象」「日照時間」の3つ。
気温:高い山では10月頃から氷点下になる日も増え、雪が降ることも。
気象:秋冬の天気は急変しやすい。10月中旬以降は急激に発達する「温帯低気圧」にも注意。
日照時間:秋が深まるにつれて日中の時間(日照時間)が短くなっていく。15時くらいには薄暗く感じる。
なかでも、感覚的にはわかっていても見落としがちになってしまうのが“日照時間の違い”です。
今回はこの「日照時間」に的を絞り、夏と秋冬との違いやそれによって考えられるリスクを調査してみました。
「夏至」と「冬至」が日照時間のターニングポイント
まずは、“なぜ季節によって日照時間の違いがあるのか”という部分から掘り下げていきたいと思います。
季節による日照時間の違いを知る上で、大切なポイントになるのが「夏至(げし)」と「冬至(とうじ)」。ニュースなどでもこの言葉を耳にする機会があるのではないでしょうか。
夏至とは、1年のなかで太陽が最も空高く昇り、最も日中の時間が長くなる日のこと。冬至はその逆で、1年で最も日中の時間が短い日を指します。夏至は毎年6月21日もしくは22日、冬至は12月21日もしくは22日の周期で訪れます。
地球の“傾き”が日照時間の変化を生む
このように日照時間が変化していく要因は、地球の自転と公転、傾きが関係しています。地球の自転軸は北極と南極を基点に23度ほど傾いた状態になっていて、常に左回りで自転。そこに太陽を周回する公転が加わることで、太陽と地球の位置関係によって、日が長い場所や、ずっと日陰の場所などが生まれます。
南極や北極で起こる「白夜」や「極夜」がその最たる例です。
そのため北半球に位置する日本は、北極が太陽側を向けば日照時間が長くなり、太陽の反対側を向けば日照時間は短くなることに。この現象が「夏至」と「冬至」というように呼ばれるようになりました。
ちなみに日本に美しい四季があるのもこのメカニズムが関係しています。もし地球が傾いていなければ、一年中昼と夜の時間は変わることがなく、さらには季節も存在しなかったそうです。
さまざまな偶然が重なって、自然は成り立っているんですね。
こんなに違う!夏至と冬至の日照時間
さて、日照時間の原理がわかったところで、次は季節による日照時間の違いをみていきましょう。
上の図は2021年の東京都の日照時間を例にしたもの。日照時間は夏至と冬至を折り返し地点にして変化していきます。
ここで注目したいのが、夏至と冬至の日中の時間です。
夏至は[日出時刻 4:26 日没時刻 19:01]で日照時間は14時間35分。
冬至は[日出時刻 6:48 日没時刻 16:33]で日照時間は9時間45分。
この時間差を計算してみると……
なんと約5時間もの日照時間の違いが!
これを登山の行程と照らし合わせてみると……
今回は例として、[6:00スタート→16:00ゴール]の10時間コース(休憩時間含む)の山を歩いたとします。
夏至であれば、スタート時にはすでに日が昇っており、ゴール時も日没まで3時間ほどの余裕が。これなら多少コースタイムを遅れても心配はないように感じます。
一方、冬至の場合は……
スタート時は日が昇る前からの動き出しで、ゴール時には日没寸前の状態に。これでは計画に遅れが出た場合、日没後に行動する状況もあり得ます。
このように同じ山・同じコースタイムであっても、日照時間によって大きくリスクが変わってくることがわかります。
ここからは実際に日の出前・日没後の山を歩き、その危険と対策を検証してみました。