その名称から、ビットコインは「ビットでできたコイン」だと想像してしまいがちだ。実際には、ビットコインにコインに当たるものは存在しない。 従来の電子通貨技術の研究は、「アトム(原子)」でできているコインを「ビット(情報)」に置き換えることを目指すものがほとんどだった。そのような事情から「ビットコイン」という名称は誤解を生みやすい。 ではビットコインの実体は何かといえば、「『できごと』の非可逆的な記録」と表現できる。4000年前の古代バビロニアには、まだ鋳造貨幣は存在せず、粘土板の取引記録こそが貨幣の役割を果たしていた。ビットコインもそれに似ている。 この「できごと」の非可逆的記録を実現するのがブロックチェーンである(図3)。ここでいう「非可逆的」とは、一旦「できごと」がブロックチェーンに記録されると、その記録を削除したり改変したりすることが、実質的に誰にもできないということである(図4)。