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2022-08-07

いしいひさいちの新作「ROCA」

もう百合でエモで巨大感情青春だった。驚いた。最後まで読んで、思わず涙してしまった。


「ROCA」は、朝日新聞連載の「ののちゃん」に登場していたサブキャラクター吉川ロカ」の物語を1冊にまとめたものだ。

朝日新聞にロカが登場していたのも、もう10年近く前の話になる。それ以後はいしいの個人同人誌でロカは力強く歌ってきたそうだ。

そうだ、というのも、私はいしいひさいちの同人活動については知らなかった。

この本の存在を知ったのはTwitterだった。

鮮やかな緑を背に歌うロカを見て、なんだか気になり、すぐ注文した、すぐ家に届いた、すぐ読んだ。

凄かった。

 

「ROCA」は、たまのの市という田舎港町から始まる2人の少女物語だ。

"ファド"というポルトガル国民音楽を歌う(歌以外はあまり得意ではない)15歳の高校生"ロカ"。

もう3回高校1年生をやっている、町のあぶない商会の支配人の娘"美乃"。

出会いきっかけは、10年前に起きた連絡船の事故。2人はこの事故で両親を亡くしている。

ロカはすったもんだありながら、美乃と手を取り合い、時に蹴飛ばされ、歌手デビューを目指す。


…読み終わったあと、ぼーっと座っていた。

尊いような、寂しいような、やりきれない、この行き場のない感情を"サウダージ"という。と、先回りして作中で説明までされてしまった。

当たり前の話かもしれないが、いしいひさいちは画業50年を迎えるギャグ4コマ漫画家だ。

50年ナンセンスギャグを描いてきた70歳が、いま新たにこんな素晴らしい漫画が描けることに、また目頭が熱くなる。背筋が伸びる思いだ。

決して"らしくない漫画を描いている"のではない。

いしいの持つ独特のユーモア、毒、深い知見。

気持ちのいい描線や、密度のある背景。

愛おしいキャラクターたち、ファドという音楽郷里玉野市故郷で起きた連絡船事故

私には計りようもないあらゆるものへの思い。

"漫画の完成に10年かかった"とHPにあったが、10年どころではない。

いしいという天才が50年間描き続けたからこそ生み出せた傑作だろうと感じる。


4コマ誌の廃刊の続く今、この漫画はかつて4コマ漫画旗手であったいしいが再び投じた新たな火だと感じる。

ファドという音楽は、ポルトガル語で"宿命"を意味するそうだ。

いしいひさいちを知る人にも知らない人にも、今この漫画を読んで欲しい。

  • 京王線の芦花公園駅と何か関係あるんだろうか?

  • こういうやつらに百合として消費されて最悪

  • 紹介をありがとう。   とりあえず、「ROCA」と「スクラップスチック それがどうした1」を買ってみた。 いしいひさいちを買うのは「女(わたし)には向かない職業」以来、久々かも。 二...

  • 週刊テレビ広辞苑の人か。有名になったね。

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