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2024-12-10

いちごをひとり占めしたかった子供時代

子供のころ、私は妹と何でも奪い合うようにして食べていた。

別にしかったわけではないけれど、美味しいものっていうのはやっぱり人気なもんで、おかずでもお肉からすぐになくなる。

いちごや桃や、メロンスイカの甘いところなんかの果物特に戦争のようだった。

両親は最初少しだけ食べては「あとは2人で食べていいよ」と私と妹に譲ってくれた。

大人になるとこんなに美味しい果物も少し食べたら満足するのかな?もっと食べたくならないのかな?私は妹と分けることすら本当は嫌なのに…と不思議だった。

大人になり一人暮らしをするようになってから節約のために果物なんてほとんど食べなくなった。

毎日自炊をしてお弁当職場に持参していたけど自分一人のために果物を買うことはなかった。

結婚してからは夫が好きな果物をたまに買っては一緒に食べるようになった。

そこでようやく私は果物が好きだったんだと思い出すくらい、そういや一人のときには食べていなかった。

あんなにひとり占めしたかったのに、大人果物を食べないことが不思議だったのに、いつの間にか私もそういう大人になっていた。

久しぶりに食べた果物は美味しくて、食べるうちに子ども時代餓鬼が起きたように夫相手でも遠慮なくバクバク食べた。

出産してからもそんな感じの生活が続いていたけど、子どもも1歳を過ぎると色々なものが食べられるようになってくる。

離乳食バナナりんごニコニコして食べる子どもの顔を見るうちに、スーパーへ行く度果物コーナーをウロウロしては何かを買うようになっていた。

クリスマス前のこの時期はいちごがたくさん並ぶけど全部高い。

1パック600円とかする。

そんなある日私は見切り品で300円のいちごを見つけた。

もちろんそれを即座にカゴに入れて買って帰った。

そのいちご見切り品だけあって一部を取り除く必要があったけど大部分は食べられた。

子どもに与えるとニコニコ食べてくれた。

そしてそのまま1パック子どもが丸々食べてしまったのだけど、何にも惜しくなかった自分に驚いた。

夏の巨峰なんか私は皮を剥くだけ剥いて、それを子どもが全部食べてしまってもちっとも惜しくなかった。

その時初めていつも両親が少ししか果物を食べなかった理由がわかった気がした。

子ども最近私達にも分けてくれようとするようになったけど、その目が「本当は自分が食べたいんだけど…」と言っているので笑ってしまい「ありがとうね、でも全部食べていいよ」と言ってしまう。

本当にちっとも惜しくないのが不思議だ。夫相手なら全然惜しいし、全力で争うのに。

そういえば孫が産まれからうちの両親はパワーアップした。

春先に実家に帰ると4パックとか6パックとかのいちごが買ってあって、それぞれ違う種類で食べ比べできるようになっていた。

子どもは目を輝かせ夢中でひたすら色んないちごを食べていた。

それだけあると私も両親もみんなで食べてもいちごお腹がいっぱいになるほどだった。

子どもが産まれからというもの自分の子を飢えさせない、美味しいものを食べさせたいという本能?が私にもあったことに驚いた。

けどそれは備わっていたんじゃなくて両親から学習していたんだ。

「2人で食べていいよ」と言ってくれる両親の顔を見ながら。

いつか私も私もスーパーで全種類のいちごを買い占める日が来るのだろうか。

孫だけでなく私の子どもにもお腹いっぱいいちごを食べさせてやれるように。

今は300円のいちごを1パック丸々あげるくらいしかできないけど。

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