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HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

高利少売の行き詰まり。

2019-12-25 05:50:11 | Weblog
 自力再建を目指していた「IDC大塚家具」(以下大塚家具)が家電量販店「ヤマダ電機」の傘下に入ることになった。ヤマダ電機が第三者割当増資43億円を負担するのだが、高級家具を販売してその地位を築いた大塚家具と、家電を1円でも安く売ってのし上がったヤマダ電機は、培った経営観も育んだ企業文化も違う。果たして、シナジー効果を発揮できて、本当にウィンウィンの関係になれるのだろうか。

 大塚家具のかぐや姫こと、久美子社長は今年2月にヤマダ電機と業務提携している。これにより、ヤマダ電機の店舗に商品を供給し、共同展開することで協業を進めてきた。だが、それで大塚家具の業績が回復しそうな兆しは一向に見えない。久美子社長としては、今回の増資受け入れで当面の資金繰りに目処を立て、何とか経営を建て直しを図る狙いだろうが、業績回復は厳しいとの見方が多数を占める。

 筆者は過去に仕事で家具・インテリア企業の販促を担当し、商品やお客、市場を細かく見てきた。また、広大な売場や幅広い品揃え、きめ細かいサービスを提供する「ディスティネーションストア」の家具店版に接したこともある。個人的には自ら事務所のデスクやシェルフ、カップボードをデザインしたので、家具産地・大川のメーカーと懇意になった。もちろん、大塚家具ではコンシェルジュに売場を案内してもらったこともある。今回はいろんな経験則から、同社が再建する上での課題を考えてみたい。

 ことの発端は、久美子社長と創業者で父親の勝久氏との経営をめぐる確執。「お父さんのやり方は時代遅れだわ」と、 勝久氏が築いた会員制の販売スタイルに疑問を呈したのだ。同社長は「中価格帯の商品」を増やして品揃えを拡充し、「富裕層以外」にも顧客を広げる改革を断行した。しかし、国内ではすでにニトリやイケアなど、製造小売り業の家具店が台頭。中価格帯の商材では競争力を持てず、結果として販売不振に陥ったと言われる。

 大塚家具が凋落した原因は、そんな単純なものではない。そもそも同社とニトリやイケアは直接は競合しない。だから、原因はもっと他にある。いちばん大きいのは、同社の不振以前から起こっている家具業界を取り巻く環境変化だ。1970年代までは消費者が家具を購入するのは、婚礼や転居が主流だった。しかも、家具は一生ものという意識が強く、そこそこ高額の商品が売れるため、「高荒利」が取れて「少売」でも家具店は商売が成り立ってきたのである。

 ところが、80年代以降、核家族化が進んで新婚夫婦がマンションなどの集合住宅で生活するケースが増え、スペースの関係から婚礼家具へのニーズが加速度的に減少した。さらに進学や就職でアパートや寮住まいとなれば、家具を置ける余裕はない。必要とされるのは、せいぜい家族でテーブルセットやベッド、子供机、単身でキャビネットや椅子くらい。タンスや食器棚へのニーズは一気に落ちていったのである。

 80年代後半くらいまでは、どんな地方都市でもフルアイテムを揃える大型の家具店が路面展開していた。しかし、90年代には消費者側のライフスタイルの変化で一気にマーケットが縮小し、撤退を余儀なくされていった。一部は郊外展開の安売り業態として生き残ってはいるが、メーカー仕入れの薄利では多店舗化などできるはずもない。昨今は毎年のように起こる地震や風水害で被災する家庭が多いことから、買い替え需要で何とかもっている状況だ。

 90年代に台頭したのは、高感度な生活雑貨や食器、キッチングッズ、ラグなどを主力に、家具はあくまで補完という「インテリアショップ」だ。消費者のライフスタイル変化にいち早く対応して業態を構築。回転のいい雑貨類を販売して売上げを稼ぎ、家具は高級品というより、センスの良さを打ち出す。北欧やイタリアなどのキャビネット、ソファや椅子などに絞り込むものだ。しかも、出店場所は路面ではなくビルイン。都市部の百貨店やテナントビル、郊外のショッピンモールで、抜群の集客力に支えられた。



 代表的な店舗は、バイヤーセレクトのCDまで販売する「アクタス」、フレンチスタイルを提案する「F.O.B COOP」、英国人のインテリアデザイナーが開業した「ザ・コンランショップ」。一方で、徹底して虚飾を排したシンプルなライフスタイルをコンセプトに衣料から生活雑貨、家電、食品、そして家具までをフルラインナップする「無印良品」も人気を集めた。その後、「タイムレスコンフォート」「ダブルデイ」などの新業態が続々と登場している。

 これらのショップでは、「雑貨を購入しようとしたら、お洒落な家具があったので、思わず衝動買いしてしまった」という意外性のある購買動向を生み出した。端から家具を大々的に売るのが目的ではないが、結果として購入に結びつく。それは家具が主ではなく、従にしたことで可能になったわけだ。バイヤーが商品を高感度なものに絞り込めるため、お客への訴求力、インパクトが増して、衝動買いを誘うのである。

 こうした手法は高級家具に特化し、会員制を敷いて「目的買いの顧客」を相手にする大塚家具とは対極にある。久美子社長が旧態依然のビジネスモデルから抜け出したのは間違いではないが、それは単にプライスラインを中・低価格帯に、商品を自由に見られるスタイルにシフトしただけ。家具以外への商品のカテゴリーの拡大に踏み込まなかったのは、やはり片手落ちと言わざるを得ない。

 2016年度の決算レポート(http://www.idc-otsuka.jp/company/ir/tanshin/h-29/h29-2-10_1.pdf)によると、大塚家具の都市部にある路面店は来店客数は増えているが、購買率が落ちている。お客に「ジャスト・ルッキング」を許したことで、成約にこぎつけられなくなっているのだ。逆に郊外の大型店は来店者数が半分に減少している。こちらはターゲット設定やエリア戦略でニトリやイケア、無印良品との競合で勝てなかったこともあるが、商品のカテゴリーをインテリアや雑貨にまで広げられなったこともあるだろう。

高コスト構造にメスを

 マスメディアはニトリやイケアが大塚家具を凌駕したような論調だが、これは正しくない。両社がお客を集めるのはインテリアや生活雑貨が充実し、日用品としての需要に支えられている点だ。さらにニトリが売れるのは、災害続きの日本で「また被災するかもしれないから、高い家具やインテリアじゃなくてもいいや」という顧客の心理変化もあると思う。一方で、「都市生活者ではドライバーを持つ人が少ない。組み立て家具のイケアは敬遠されている」という業界誌の編集長の話からすれば、棲み分けはできているのではないか。

 大塚家具の最大の課題は、「高コスト構造」にある。直営店は関東エリアが有明、銀座、新宿、横浜港みらい、南船橋にアウトレット2店の7店舗。東海エリアが1店舗。関西エリアが5店舗。北海道、九州(福岡)に各1店舗と、計15店舗になる。すべて都市部の一等地またはそれに準ずるエリアにあり、莫大な売場スペースを要する特性から、固定費である店舗賃料のコスト負担は相当額に及ぶはずだ。

 それに対し、大塚家具の売上高は業界の環境変化と競合他社の台頭で、2007年12月期の約727億円から18年12月期には約373億円と、ほぼ半減した。しかも、お家騒動で路線変更して以降、16年12月期から3期連続で大幅な赤字を出している。16年が▲45億円、17年が▲72億円、18年が▲32億円とすべて純損失だ。19年第1四半期決算を見ても▲14億円と、損失が収まる気配は一向に見えない。

 この間、久美子社長は資金繰りに奔走したようだが、銀行からの借り入れを拒まれたために資本増強に動いている。だが、ハイランドの第三者割当増資の一部が中止されるなど、思うようにはいっていない。一応、不採算店の撤退や大型店の縮小を行い、賃料などの固定費を削減したものの、ドラスティックなリストラには二の足を踏んでいる。逆に赤字という傷口を広げ出血を増やす結果を招いたのは、経営者としての判断ミス以外の何ものでもない。

 店舗は人口が多い関東と関西の都市部に集中する。これは高コスト体質を改めるには真逆だ。人口分布上は関東、関西には富裕層も多く住むと考えられるが、都心回帰と少子化で今後どこまで高級家具が必要とされるかは未知数。決算報告にあった「(都市部の路面店は)来店客数は増えているが、購買率が落ちている」ことを見ても、家具をいちばん必要とする30代〜40代が大塚家具の品揃えでは満足しきれていないことを物語る。

 一方で、一戸建ての家屋に住み、今後も家具へのニーズが高いと見られるのは、地方居住者の方だ。提携店(山梨、埼玉、広島、宮崎、群馬)はあるにしても、くまなく網羅する展開ではない。地方居住者が必ずしも高級家具を購入するとは言えないが、少なくともアプローチは必要だろう。地方で販売拠点をフリースタンディングを含めて拡充した方が広い売場の確保や品揃えの充実(雑貨やインテリアにも)が可能になるので、市場攻略には期待がもてる。なおさら賃料コストを抑えられる点でも、店舗配置の見直しは必須だ。郊外展開すれば大塚家具のブランドイメージが崩れるというのなら、業態名を変更すればいいだけ。この期において、「大塚家具のブランドを守る」どうのと言ってはいられないはずだ。

 2017年3月に発表した経営ビジョン(http://www.idc-otsuka.jp/company/ir/tanshin/h-29/h29-3-10_3.pdf)では、 営業面の回復策として「商品とサービスのオムニチャネル化」「ウェブ、店頭、自宅でシームレスに商品・情報・サービスを提供」を掲げた。これはEC対象商品を拡大し、3DやAR(拡張現実)アプリによって自宅での検討をサポート、WEB申込みによる訪問提案・採寸サービスを行うものだ。

 これも時代には合致しているように見えるが、家具という高額な買い物に対し、バーチャルな売り方がどこまで通用するかはわからない。むしろ、地方居住者が家具を購入するなら、車で気軽に行ける店舗で現物を見たいはずだから、リアル店舗は不可欠になる。都市部は高額な家賃が経営の重しになることを考えれば、在庫は最低限に絞り込み、スタッフが前出のアプリをダウンロードしたタブレット端末を携行して、コンサルティングセールスする方がいい。

 大塚家具のビジネスモデルは、高級家具を会員制でコンサルティングセールスするものだ。商業の世界で言われる「高級品を売るには、販売力が要る(優秀なセールスタッフや売れる仕組みづくり)」を地で行く手法である。端から荒利が高い商品を扱うのだから、販売点数が少なく高コスト構造でも、商売は成り立ってきた。しかし、このモデルは高級品が売れず、販売力が落ちれば、一気に崩壊する。同社はそこに陥ったのである。今の時代、家具ビジネスにおいて高利少売がどこまで通用するのかと言えば、全く不透明と言わざるを得ない。

 家具やインテリアを取り巻く環境変化は著しい。ヤマダ電機傘下入りの記者会見で、同席した山田昇会長は「荒利が高いんですよ。売上高が10%も伸びれば、来期(2021年4月期)にはたちまち黒字になる」と語った。Amazonエフェクトの影響をもろに受けている同社は、住宅リフォームや家具などを扱う新業態「家電住まいる館」を100店舗以上展開している。会見からは、大塚家具を事実上買収したことで家具事業を強化できる思惑もあると見て取れる。だが、あくまでたらればの話で、実現する保証は何もない。

 筆者が家電住まいる館に並ぶインテリアや雑貨類を見る限りでは、100円ショップの商品に毛の生えたレベルで、 中価格帯の商品を拡充した大塚家具とは言え、親和性は感じられない。ヤマダ電機は「バング&オルフセン」のような高級家電を扱っているわけではないが、インテリアや雑貨類も大塚家具に合わせるなら感度面は別にしても、アクタスやコンランショップ級のグレードがないと釣り合わない。所詮、安売り電器屋の感性では、この程度が限界なのかと思ってしまう。その証拠に大塚家具はヤマダ電機の約20店舗に商品を供給しているが、売上げ面で相乗効果がもたらされていない。やはり、ヤマダ電機の売場では、大塚家具の商品が生きないのである。

 今回の傘下入りでも、久美子社長は経営者を続けるが、成果が上がらなければその座から引きづり降ろされる可能性もある。当人もそれは十分に承知の上だから、さらなる出資先を募って自分のシンパ企業を増やし、ヤマダ電機の持ち合い比率を下げることも考えられる。しかし、肝心なのは、本業の業績回復に取り組むことだ。

 いつの時代でも言われるが、経営者に求められる資質は、計数管理と感性とクリエイティビティ。左脳では算盤をはじき、右脳ではセンスと創造力を発揮して事業を進める。果たして人も羨む一橋大出の元バンカーにそうした資質が備わっているのだろうか。
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危惧される没個性。

2019-12-18 04:32:29 | Weblog
 11月末、ルイ・ヴィトンはじめ、クリスチャン・ディオールやセリーヌ、時計・ジュエリー、酒類、コスメのブランドを傘下にもつ「LVMH(モアヘネシールイヴィトン)」が米国ニューヨークの「ティファニー」を買収した。買収額は1株当たり135ドル換算で、総額162億ドル、日本円で約1兆7496億ドルに相当する高額案件になる。

 時を同じくして、グッチやイヴ・サンローラン、ステラ・マッカートニーなどを擁する「ケリング(旧PPR/ピノープランタンルドゥート)」も、仏発祥の「モンクレール」買収について協議中と、米国のブルームバーグが伝えた。市場関係者によれば、モンクレールの時価総額は100億ユーロ(約1兆2000億円)。ケリングはこれに35%〜40%のプレミアを乗せた135億ユーロ〜140億ユーロで取引する公算が高いという。

  業界ではLVMHやケリングようなグローバルブランドを多数抱える企業グループを「ファッションコングロマリット」と呼ぶ。他にはカルティエやクロエ、ダンヒル、モンブランなどの「リシュモン」がある。一介のアパレルブランドが成長し、知名度や商品開発力、潤沢な資金を持つようになると、ビジネスのセオリーとして事業領域をバッグ、ジュエリーや時計、香水などに拡大する。

 ただ、方法論として、同じブランド名でカテゴリーを広げるには時間と投資が必要になる。服を作っているデザイナーがバッグやジュエリーまではこなせないので、専門のスタッフや工場を確保しなければならない。だが、ゼロから生産体制を作り上げたとしても、必ずしも成功する保証はない。ならば、株式を上場しているブランド企業や銀行筋から持ち込まれる案件について、カネの力で手中に収めた方が手っ取り早いのである。そうした傾向は以前からあるので、今回の買収劇も別に驚きはしない。

 もちろん、ブランドを大きく育てるには、デザイナーの力が不可欠だ。しかし、そうした金の卵を生むデザイナーは独立し、ブランドを去っていくこともあり得る。また、同じブランドだけでは顧客に飽きられてしまう。経営者として、一つのブランドやカテゴリーに頼っていればいるほど、痛い目に合うリスクは高くなる。そうした危機感は常に経営者の頭をよぎるので、どうしても多くのブランドを抱え、アイテムを広げたくなるのだ。

 今回のティファニー買収劇で、LVMHのベルナール・アルノーCEOは、「世界のジュエリー界で比類なき伝統と唯一の地位を誇るティファニーをLVMHファミリーに迎えることができて光栄です」とのコメントを出した。LVMHがそれまで保有していたジュエリーブランドは、「ショーメ」や「ブルガリ」などだが、カテゴリー別の売上げでわずか4%と低迷していた。世界的な知名度をもつティファニーを手に入れたのは、一にも二にも宝飾部門の強化が念頭にあるのは言うまでもない。

 世界のファッション市場を俯瞰すると、ラグジュアリーブランドは一時期、中国富裕層が購入して潤ったものの、経済の減速傾向から先行きは不透明だ。その下のブリッジやモデレートのラインは、中間層が没落した影響をもろに受けている。ローワーミドル層は下のボリュームラインに取り込まれ、逆にアッパーミドル層は上のラグジュアリーには手が出ず、ファッションから別の市場へと消費を移している。そもそも、この層向けのブランドが少ないこともあるが、マーケットを押さえきれていないこともあるだろう。

 コングロマリットとしては、傘下に持つブランド企業のポートフォリオを最適化する意味で、グループ全体の売上げバランスを図らなければならない。プレステージラインのラグジュアリー一辺倒ではなく、ブリッジやモデレートなブランドを拡充し、アッパーミドル層の市場を掘り起こす戦略が求められる。そこでLVMHは、ジュエリーでは価格的にモデレートのラインをもつティファニーに目を付けたのである。


アッパーミドル攻略のために





 ティファニーは、過去に「オープンパート」のネックレスや「三色三連リング」といったOL1年生がボーナスでも買えるアイテムを大ヒットさせた。また、2006年には建築家のフランク・ゲーリーを起用したジュエリーコレクションを発表。有機的な曲線のブレスレットや魚からインスパイアしたネックレスなど売り出している。これらは、コンサバでゴージャスかつブリリアントな欧州ジュエリーにはないシンプルでモダンなデザイン。まさにティファニーの真骨頂を発揮した商品群だ。

 さる12月6日には、ニューヨークのティファニー本店の東隣にあったナイキタウン跡にメンズ向けのポップアップストアを開業した。店内はティファニーブルー統一され、バイクの展示、ビリヤードやバスケットゴール、カフェなども同色でカラリング。高級ジュエリーとは異質の空間演出で、まずは男性客を呼び込む狙いと見える。もっとも、後日には上層階がすべてティファニーのフロアになるというが。

 一方、ジャパン社は今年4月、東京原宿のキャットストリートに「ティファニー@キャットストリート」をオープンした。場所柄から若者を意識した業態で、6層に分かれた店内には、好きなチャームを選び、お客がiPadで書いたメッセージを刻印できるコーナーや、ジュエリーを自由に手に取って試着ができるスタジオ、オリジナルのドーナツを楽しめるカフェも併設。こちらは日本法人独自、世界初の試みで、若者市場を掘り起こす試金石になる業態だ。

 ラグジュアリーブランドのショーメやブルガリが自社でブリッジやモデレートな商品を企画しても、上手くいかないだろう(ブルガリは過去にチープな時計を販売しているが)。それなら、現にそうしたマーケットを攻略しているティファニーに任せればいいのである。逆にティファニーのマーケティング力や商品開発のノウハウをショーメやブルガリに生かして、ラグジュアリーをテコ入れする施策は十分に考えられる。ビジネスに目ざといベルナール・アルノーCEOなら、その点をじっくり注視していてもおかしくない。

 むしろ筆者が懸念するのは、コングロマリットが売上げ追求や効率重視に走るあまり、売れ筋右に倣えの「全天候型経営」になることだ。一人のデザイナーがディレクターとしてブランディングに関わるすべてをコントロールするだけなら、ブランドの垣根を超えてビジネスに携わることはできる。だが、どんなに有能なデザイナーでも、引き出しをいくつも持っているわけではない。世界観を大事にすればするほど、ファーカスは狭まって来る。

 せいぜい、バリエーションは素材、企画、生産などのすべてにおいて最上級のコストと手間をかけるファーストラインと、それらに対してスペックダウンを図るセカンドラインくらい。一人の人間がまるっきり違ったデザインを創り出すのは至難の業だ。1994年にグッチのディレクターに起用されたトム・フォードはその見事な実績が評価され、2000年にはイヴ・サンローランのプレタポルテライン、「リヴ・ゴーシュ」のディレクターに就任した。



 その時、メディアは「グッチとは違ったスタイルでブランドを構築した」と評価した。しかし、筆者はコレクションに登場したアイテムのディテールデザイン、色のトーン、素材使いを見る限り、グッチとかなり似通った部分があるとの印象を受けた。例えば、トム・フォードが携わった2001年のリヴ・ゴーシュ・オムでは、スーツやジャケットを中心としたコレクションを発表したが、太めのラペルやビルトアップ、コンケーブドといったショルダーラインは、グッチ時代にも採用されていたからだ。

 これには少なからず両ブランドを傘下に置く当時のPPRグループの影響があったと思う。トム・フォードはグッチ在任中でさえ細部までに関わっていたわけではなく、彼の考えをカタチにできる黒子がいたからこそ可能だったと言われる。当然、責任者が存在するのに黒子が勝手にデザインできるわけがない。だから、アイテムは相似形になっていく。結局、トム・フォードは2004年、両ブランドのディレクターを辞任。同時に2ブランドのクリエイティブディレクションを行うのは難しかったと思う。

 上場コングロマリットの経営者は、短期で収益アップを望む投資家の要求に応えるために、売れる商品を生み出せるデザイナーをブランド横断で起用する傾向がある。しかし、デザインが似たり寄ったりになり、没個性に陥ってしまうおそれは否めない。現状、LVMH傘下のショーメやブルガリ、ティファニーにはそれぞれデザイナー、MDの責任者がいるはずだから、グループ内でデザインが似通って来るとは考えにくい。

 ただ、ティファニーがLVMHの傘下入りでさらに売上げを伸ばしていけば、デザイナーが他のブランドのディレクションにも起用される可能性は十分にあり得る。その場合、デザイン表現の相似化、没個性化が危惧されるのだ。一方で、ティファニーのデザイナーがブルガリの商品企画に参画した場合、どんなデザインのセカンドラインが生まれるか。それはそれで見てみたい気もするが…

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費用倒れの可能性?

2019-12-11 04:20:29 | Weblog
 2019年の流行語大賞が決まった。年間大賞には、ラグビー日本代表チームがスローガンに掲げた「ONE TEAM(ワンチーム)」が選ばれた。あの盛り上がりを見れば、順当なところだろう。トップ10には、災害に対する安全確保のために鉄道各社が実施した「計画運休」、消費税率のアップに伴う経過措置として導入された「軽減税率」などがランク入りした。

 先日のコラムにも書いたキャッシュレス決済も、「◯◯ペイ」としてトップ10入りしている。そこで、すこし前の日経新聞の記事(11月24日付)が気になったので、再度読み返してみた。「エコノフォーカス」というシリーズで、キャッシュレス決済が「ポイント還元で普及に弾み」「痛税感薄める」という見出しである。

 記事は冒頭で、米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)の教授らによる分析を取り上げている。「プロバスケットボールの試合のチケットをオークションで買う時、クレジット払いの人は現金払いの人の2倍の入札金額を提示したーー」と、米国人はキャッシュレスであれば、消費が大きくなるという見解だ。これにはある程度納得できる反面、そもそも米国はカード社会だから、端から現金よりクレジットの方が使用金額は高いことも考えられる。

 米国のオークションの詳細はわからないが、クレジット払いを選択する理由として、詐欺などのトラブル発生後の処理が簡単なことも要因としてあると思う。それに人気があるバスケットボールのチケットなら、落札額が高くなるのは事前に推察できる。当然、入札者はクレジットで分割払いが利くのなら、落札する額が相当な額に及ぶのも辞さないはず。キャッシュレスだから高額な買い物をするというより、購入対象の商品にもよりけりではないだろうか。

 一方、日本人が現金払いを選んできたのは、「節約志向」と密接に絡むとも、記事は書いている。総合研究開発機構の調査で、現金払いを選ぶ理由を聞いたところ、「現金以外はお金を使っている感覚がなく使いすぎてしまう」との回答が6割を占めて最多だったという。これは節約志向だけではないだろう。バブル時代に抱えた多額のローンを払えずに自己破産が増えた教訓から、消費者が「身の丈にあった買い物」を学習した結果もあるのではないか。

 さらに平成不況で中間層が完全に没落し、消費者の大半は収入が増えず可処分所得が減っている。だから、節約志向より消費にまわすほどの余裕がない人が多いのだ。日々の生活に追われている人にとっては、現金だろうとクレジットだろうと、生活必需品以外の商品がなかなか購入できない。老後の年金や医療のことも頭の中をよぎるだろうし、貯蓄にまわすのは当然で、節約志向とは別次元の理由もあると思う。

 結局、消費税の10%引き上げは少子高齢で社会保障費が膨れ上がる中、財源確保のためが表向きの理由だった。しかし、増税は消費者の購買心理に影響を与え、せっかくの景気を腰折れさせるとも限らない。だから、苦肉の策として軽減税率が導入された。また、食品については税率8%のままだから、そこまで生活が厳しくなったと実感する消費者は多くないと思う。

 まあ、国としては税収を増やさないといけない。そのためには、増税による消費の冷え込みを和らげる政策が不可欠になる。それが「キャッシュレスによるポイント還元」なわけだ。財務省や経済産業省が冒頭のMITの分析を参考したかどうかはわからないが、現金決済じゃないと本当に痛税感が薄められるかは懐疑的だ。消費者が買い物する時、税率8%より10%の方が暗算しやすいので、高額な買い物になるほど現金だろうと、キャッシュレスだろうと痛税感はあるはずだ。


日本のキャッシュレスは少額決済


 むしろ、日本では、キャッシュレス決済のスマートフォンやFelica(ICカード)は、小銭支払いに代わる少額決済が主流と見るのが妥当と思う。それでいくらぐらい消費が増えたかについては、経済産業省が11月12日に発表した調査結果から類推できる。1日あたりのポイント還元額は「11億円強」に達するそうで、これを参考に計算してみよう。還元率はコンビニなどFC店が2%、中小の店舗が5%。もちろん、手続きが面倒で参加していない商店もある。

 キャッシュレスの利用者の日々の買い物は、コンビニなどが圧倒的に多いと思うので、これを6億円と見ると消費額は300億円。残りの5億円が中小店舗とすると、同100億円。合計で400億円となる。日本人の全員がキャッシュレス決済をするわけではない。仮に6割とすると、総人口を約1億2600万人として7560万人。単純計算すれば、1人当たり1日530円を消費した計算になる。

 これはポイント還元以前とそれほど変わらないのではないか。日本は中国のように何十万円もの買い物でもスマホ決済するのとは、キャッシュレスの環境が異なる。消費者にポイントを還元するにしても、1日500円程度の買い物では、個人消費を喚起したとは思えない。だが、消費が冷え込んだ風にも見えないから、経産省としては一応、胸をなでおろしたのではないか。

 一方で、来年6月までのポイント還元キャンペーン期間に必要となる総事業費は、当初の見込みより3000億円程度多い7000億円規模に膨らむと言われる。政府は追加の予算を確保する方針のようだが、これでは税収を増やすどころか、税金を使いまくっている感じがする。結局、ポイント還元による消費冷え込みの緩和や中小商店への支援が霞んで、キャッシュレス決済を定着させるための税金投入だったのではないかと言われても仕方ない。


マイナポイントの実効性は?

 来年はオリンピックイヤーだ。消費者に与える景況感は少なからず良くなるだろう。終了後にその反動が予測されることから、政府は9月から「マイナンバーカード」を活用して、キャッシュレス決済を行う人に対し、「25%の還元」を行うことを検討しているという。

 これはFelicaや◯◯Payなど、事前にチャージした金額に最大25%分の「マイナポイント」が上乗せされ、ショッピングで使えるもの。例えば、Suicaに2万円のチャージすると、2万5000円分の買い物ができるというイメージだ。利用者の範囲、ポイント還元率、利用可能店舗など、これから詳細が決定するとのことだが、還元の手法は地方自治体が実施している「プレミア商品券」に似ている。

 ただ、プレミア商品券は対象が低所得者と子育て世帯。しかも、低所得者は市区町村に申請し、郵便局などで購入しなければならない。共同通信が10月21日と23日に行った調査では、申請率が最も高かったのは青森市で44.3%。これに対し東京の新宿区と渋谷区は14.8%と全国最低。全国平均では30%程度だろうか。申請が低い理由としては、「低所得者にとっては購入費の工面が難しい」や「手続きの面倒くさい」などの声が多かったという。https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201910/CK2019102802000149.html

 プレミア商品券でもこの状況である。端から所得が少ない人は、5000円分お得に買い物ができるといっても、元手となる2万円にすら窮しているのだ。マイナンバーカードの発行率は14%程度と高くないため、マイナポイントも「カードを取得させる」「マイキーIDの設定」が目的なのは明らか。カードは役所に出向かなくてもいろんな申請ができたり、確定申告にも利用できる。しかし、手続きすればポイントがもらえるわけではないのだから、どこまで利用者が増えるかは全くの不透明だ。

 人手不足で人件費が上昇し、食品など原材料費も値上がりしているが、生活必需品について店頭での値上がり感は薄い。消費税が上がっても半年1年のスパンで見れば、影響はそれほどないと思う。おかしな言い方かもしれないが、デフレ禍は依然として底堅いような気がする。だから、一般庶民があの価格帯で通常の買い物しかしなければ、個人消費が増えるとは思えない。高額商品が売れなければ、税収を増えやすとまではいかないようだ。

 また、低所得者や年金暮らしの高齢者にスマホ決済の普及は厳しいと思う。日々の買い物は生活必需品、日用品だろうから、せいぜい行きつけのスーパーで勧められるEdyやFelicaではないか。だとすれば、チャージ限度額は2万円程度だから、使ってもたかが知れている。全国的に有機ELや4Kのテレビなんかへの買い替え需要が進まない限り、節約志向モードからの脱却は難しいのかもしれない。

 果たしてキャッシュレス決済がどこまで普及し、本当に消費者の通税感を薄めて、財布の紐を緩めるのか。買い物時の支払い方法よりも、消費者が高額でも欲しくなる商品、サービスを企業側がいかに提供するかの方が先決ではないかと思うのだが。果たして…


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地方に欲しい業態。

2019-12-04 04:28:53 | Weblog
 11月22日、新生・渋谷パルコがグランドオープンをはたした。閉店する前はテナント集積がぐちゃぐちゃで、上層階は秋葉系を持ってきただけの末期状態。歩率家賃で稼ぐのだから四の五の言ってられないのはわかるが、お客が遠のき始めていたのも事実(公園通りを上がるほど、どこもそうなのだが)。ファッション&カルチャーの発信基地と言えど、完全に軸がブレていたのである。

 あれから3年と3カ月の歳月をかけ、渋谷パルコは生まれ変わった。もう一度、原点を見つめ直し、「世界に冠たる渋谷に相応しい聖地とは」に立ち返った。もちろん、選り抜かれ、集められたテナントは有名無名を問わず、パルコのフィルターを通せば、価値や魅力を幾重にも打ち出せる可能性がある。

 渋谷でしか通用しないもの、全国に広がるもの、逆に地方から請われ東京でブレイクするものと、いろいろあるだろう。10月の出張時には最終工事中で内覧はできなかったが、オープン前後からいろんな情報が漏れ伝わってきている。業界系メディアは識者のルポを掲載し、「世界に唯一無二のストリートファッションとサブカルチャー…」「渋谷の核となり、新しい楽しさを」などと、高く評価する。

 個人的にはメディア情報に触れるとわくわくするが、実際に見てみると「こんなものか」と落胆することも少なくない。20代から渋谷や青山、原宿に出現する数々の新業態に触れてきたので、感覚面で成熟してしまったこともあるだろう。ただ、ファッションやカルチャーに対する飢えが無くなったのかと言えば、そんなことはない。だから、なおさら渋谷パルコには期待するし、どうしても他のテナントビルと対比してしまう。


面倒な手洗いを受付け

 もっとも、筆者が新生パルコで、まず関心をもったのはファッションでも、カルチャーでもない。4階のFASHION APARTMENTゾーンにオープンしたスニーカーの洗濯専門店「Licue&Sneakers(リクエアンドスニーカーズ)」。同店は100%水洗いクリーニングのLicueなどを展開する「アピッシュ」の運営で、スニーカー専門の業態は「日本初」という。

 システムは一般のクリーニング店とほぼ同じ。洗濯したいスニーカーを同店に持ち込むと、専門スタッフが状態を確認し、汚れの程度や素材、靴の形に合わせて洗い方を提案してくれる。利用者はどの方法にするかを選択すれば、後は出来上がり次第、店頭で受け取るだけ。

 昨今、スニーカーはレアなタイプが出回り、コレクター垂涎のアイテムも少なくない。一方、足になじむものはずっと履いていたい意識が働く。しかし、スニーカーは汚れるし、傷む。だから、何とか汚れを落としたいのがユーザーの思いだ。以前は雑誌が手入れ方法を紹介していたが、自分で洗えるものは「キャンバス」と「合成皮革」に限られる。




 筆者はキャンバスのスニーカーをずっと自分で手洗いしている。洗い方は靴ひもとインナーソールを外し、乾いたブラシで土や埃を落とす。大きめの洗面器に水を張り、そこにスニーカーを浸して十分に水をしみ込ませる。専用の洗剤(ズックリンなど)は使わず、まずはブラシだけでアッパーやソールの汚れを落とす。次にブラシに洗剤をたっぷり付けて、全体をごしごし洗う。靴ひもやインナーソールも同じだ。汚れがたまりやすい内側やコバ、ソールの窪みは特に丁寧に洗う。

 あとは汚れが残っていないかをチェックし、流水で十分にすすぐ。乾燥はじっくり時間をかけて陰干しする。 You Tubeなどでアップされている「重曹」は、まだ使ったことがない。合成皮革のスニーカーも同じ要領で行けるが、型くずれしやすいので、乾燥時にはシューキーパーを使えばいい。今は100円ショップにも売っている。着なくなったTシャツをウエスにして詰めてもいい。水気を吸ってくれるので一石二鳥だ。

 この夏も、adidasの「STAN SMITH OG PRIMEKNIT」を2足ローテーションで履いた。アッパーが白のメッシュ系素材で汚れが入り込みやすいので、秋口に上記の要領で水洗いした。筆者は大学生の頃から手洗いしているので何ともないが、これが面倒だという人は少なくないと思う。Licue&Sneakersの登場は、そういう人にとって朗報ではないか。

 こちらの洗濯方法は、コインランドリーにある業務用の洗濯機を使用する。水洗いでは、シリコンで作られた特殊なスポンジをドラム内に隙間なく詰めて行われる。通常のスポンジよりも重くて硬いため、スニーカーとの摩擦面が増え、汚れをさらに落とせるのだそうだ。コインランドリーに限らず家庭用のドラム式洗濯機もかなり進化し、大概の汚れはキレイに落とせる。スニーカーのクリーニングでも如何なく力を発揮してくれるわけだ。

 また、洗剤は素材に合わせたものを使用するので、生地を痛める心配もないとか。洗濯後はオゾン発生の乾燥機で殺菌・防臭までしてくれるという。最もベーシックな機械洗いと乾燥だけで、料金は1足700円(税別)というから実に手頃。これなら利用する人も多いはずだ。

 スニーカーは今やビジネスマンの通勤靴に奨励されるほど、オフィシャルにも浸透した。だから、クリーニングへの需要は相当あると思う。渋谷にあるからとか、パルコのテナントだからではなく、地方の商業施設でも成り立つ業態かもしれない。パルコでの業況が全国に伝わり次第、地方のデベロッパーからも引き合いがあるのではないか。


地方にあるのは普及ブランド

 そこで考えたいのが、地方の商業開発において、本当に求められるテナントとは何かである。地方都市はどこも中心市街の地盤沈下で商業の低迷が著しい。民間だけでの再開発は難しいので、自治体の手助けを得て公共施設や文化ホールなどと複合化したり、老朽化したインフラの再生と抱き合わせたりする。また、郊外のショッピングセンターに客足を奪われているため、バスターミナルを整備して公共交通の利便性をアップさせることで、中心部にお客を集める施策も取られている。

 しかし、商業の要となる肝心なコンテンツ、テナントはどうなのだろうか。ほとんどの商品がネットで購入できるようになった今、わざわざ行くだけの価値あるものがリーシングされているかには疑問符がつく。ローカルメディアは取材も分析もせず、デベロッパーのリリースを鵜呑みにして「九州初上陸」だの、「福岡初登場」だのと冠を付ける。だが、どれもすでにあるテイストばかりだ。

 フレンチトーストやタピオカといった外食のように一時的なブームとなるものは除き、地方ではお客をピンポイントで呼べる業態が開発できていないこともある。時代がどう変わっていくか、企画開発の能力、クリエイティビティやマーケティング、生産背景などの機能を持たない地方都市では、既存業態を誘致して小売りやサービスで勝負するしかない。だから、地域商業全体の魅力を発信するにしても、新規オープンの施設と既存の商店街や百貨店とが連携し、買い回ってもらうのが精一杯なのである。

 しかし、お客にとって店舗が扱う商品やサービスに価値がなければ、行く気にはならないのも事実だ。「商店街に人出が増した」「公共交通の利用者が増えた」と言ったところで、本当にどれほどの経済効果が生まれているかは、そこで商売を営む店舗の売上げを見てみないと何とも言えない。なのにメディアに登場するコメンテーターは、「回遊性」だの、「賑わいの持続」だのと、マーケットを直視していない言道を平気で吐く。

 地方都市の店舗が東京と根本的に違うのは、マス化した「普及ブランド」しか扱っていないないことだ。新規出店するアパレル、雑貨、飲食のどれをとっても、すでに有り触れたものばかり。ピンポイントで集客できる力はない。だから、インターネットに食われているのである。確実な来店動機を生む業態がない限り、無責任なコメンテーターが言う回遊性や賑わい持続性、まして経済効果は全くの未知数。隣県の地方都市も同じような施策やリーシングを行うわけだから、人口の減少を考えると競争で優位に立てるわけがない。

 その意味で、 新生・渋谷パルコがこれから育て、インキュベートしていくテナントの中で、地方都市でも必要とされる業態のヒントをいかに見つけていくか。再開発事業、商業開発に当たる人間は、業態の動向を逐一観察していくことが必須だが、果たしてそんな感性を持ち合わせているのだろうか。

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