曖昧さ回避
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語源
元はパラプレジア(paraplegia)つまり下半身麻痺とオリンピックの造語であったが、時代変遷の中でソウル大会を前に、パラレル(Parallel)つまりオリンピックと「平行する」一大大会として再解釈された経緯がある。
概要
開催起源については諸説あるが、現在第一回大会と評されているのは、1960年の夏季ローマで行われた第9回ストーク・マンデビル大会である。(元となったストーク・マンデビル病院はイギリスの今尚現存する病院)
元はリハビリの一環として「手術よりスポーツ」という理念の下に始まったものである。パラプレジアが語源となったのもストーク・マンデビル大会第一回開催当時には下半身麻痺患者が多く参加したというのが影響している。
発祥国がイギリスのためオリンピックとは違い、開会式の選手入場ではギリシャや難民選手団も開催都市の言語順で入場する。またフェロー諸島とマカオ特別行政区はオリンピックへの単独参加が認められていないが、個別に選手団を結成してパラリンピックに出場している。
第二回大会として日本では東京オリンピックと併せて東京パラリンピックが開催。これを契機に広く障害者スポーツが日本でも知られることになった(ただし開会式に至るまでの経緯などは当時の世情を物語るものであった)
夏季第八回大会のソウル大会において「パラリンピック」という名称が正式化。世界的にこの大会の規模、知名度が拡大した。以降夏季大会はオリンピックと開催地を完全に同一することになる。冬季大会はアルベールビル大会から同開催地となっている。
クラス分け
各競技におけるすべての選手が公平に競い合えることを意図して、種目ごとにクラスが設けられている。障害の度合いに合わせて細かなクラス分けがなされるため、実施種目はオリンピックよりもかなり多い。パリ大会では22競技に対し549もの種目で実施された。
クラス分けは各スポーツの英名の頭文字と数字で示されている。パラ水泳ならSwimmingのSに、障害の度合いを示す数字が並ぶ、という感じ。詳しいクラスの分類についてはパラリンピック公式サイトを見ると良いだろう。障害の区分はや四肢の障がいや欠損、視覚/聴覚障がい、脳性麻痺による知的障がい、更には低身長と様々。
パラリンピック賛歌『未来への賛歌』
オリンピック賛歌同様にパラリンピック賛歌が開会式、閉会式で演奏されるのだがその歴史は比較的浅い。ティエリ・ダニエスが作曲し、1996年に行われたIPC総会で初めて演奏された。大会では同年のアトランタ大会より演奏されるようになり、2001年には英語の歌詞が付けられるようになった。
なおこれ以前にも、1964年の東京大会では立川清登作曲による独自のパラリンピック賛歌が製作、出版されている。
日本での知名度、近年の展開
日本での冬季初開催の1998年長野パラリンピックは、日本で再度パラリンピックを広く認知させた大会となった。前大会(東京)までと違い、広くメディアにも取り上げられた大会であり、長野以降はTVや新聞にもパラリンピックが取り上げられるようになる。
テーマ曲であった「旅立ちの時~Asian Dream Song~」は現在でも合唱曲として親しまれている。恐らく日本でパラリンピックと言えば長野の方が浮かぶ人が多いのではないだろうか。
直近のパリ大会などで言えば、車いすテニスの小田凱人らの活躍が記憶に新しい。日本は金14、銀10、銅17の41個という結果であった。現在では夏季大会4000人以上、冬季大会1000人以上、参加国としては夏季170か国、冬季44か国が参加する一大イベントとなった。
放送権と配信
パラリンピックの放送権はIPCが管理している。オリンピック同様にOBSが国際放送を製作し、各国に放送権を販売する方式。これまで一部競技では国際放送が製作されなかったが、パリ大会では22競技全てを中継することがアナウンスされている。衛星技術の革新によりオリンピック同様に放映権料が高騰しており、昨今の大会では50億円を超えるとも言われている。それでもオリンピックの約9分の1位の値段だが、IOCとの協定や大会スポンサーの支援があるからこそ出来る値段設定と言える。
日本での放送では主にNHKが担当。2018年の平昌大会から4大会の放送権をセットで購入しており、オリンピック同様にNHKプラスでも視聴が可能。民放各局での中継は番組編成や予算の関係上少なく、東京大会からようやく中継が始まったのみにとどまっている。
YouTube公式チャンネルも展開しており、オリンピックに負けじ劣らず動画コンテンツが充実している。特にパリ大会では放送権の安さや認知度をカバーする為に開会式・閉会式を含めた主要イベントは全てライブ配信、アーカイブ対応という点というのがオリンピックには無い強みだろう(こちらは大会終了後順次配信)。
開催地一覧(夏季)
第1回からのパラリンピック開催地。太字の都市はその都市で行われた大会の単独記事がある事を意味する。また、赤字の都市、国はオリンピックと場所が異なることを意味する。
開催年 | 開催都市 | 開催国 | 備考 |
1960年 | ローマ | イタリア | 第9回ストーク・マンデビル競技大会。 初めてオリンピック開催都市で行った。 |
1964年 | 東京 | 日本 | 第13回ストーク・マンデビル競技大会。 日本が本大会で選手団を結成し初参加。 第2部として日本選手を対象とした国内大会を実施。 |
1968年 | テルアビブ | イスラエル | 第17回国際ストーク・マンデビル競技大会。 オリンピックを含め現在唯一の中東開催。 |
1972年 | ハイデルベルグ | ドイツ | 第21回国際ストーク・マンデビル競技大会。 |
1976年 | トロント | カナダ | 正式名称はトロントオリンピアード。 |
1980年 | アーネム | オランダ | 正式名称はオランダ障がい者オリンピアード。 |
1984年 | ニューヨーク | アメリカ | 第7回国際身体障がい者スポーツ大会。 当初イリノイ州で開催予定だったが財政破綻が原因で分裂。 ボッチャ、馬術などの新設で実施種目が大きく増えた。 |
エイルズベリー | イギリス | ||
1988年 | ソウル | 韓国 | パラリンピックが正式名称となる。IOCが直接関わった初の大会。 |
1992年 | バルセロナ | スペイン | |
1996年 | アトランタ | アメリカ | パラリンピック賛歌が初めて演奏された大会。 車いすラグビーが大会種目に加わる。 |
2000年 | シドニー | オーストラリア | 夏季パラリンピックで知的障害種目が新設されるも、バスケットボールで健常者による不正が発覚し一度休止。 |
2004年 | アテネ | ギリシャ | 「スリー・アギトス」の大会シンボルが初めて使用された。 国枝慎吾が車いすテニスで初の金メダルをはじめ、日本勢最多の52個のメダルを獲得。 |
2008年 | 北京 | 中国 | 知的障害種目が一部競技で再開。 IOCがIPCの支援を強化し、組織委員会が統合。 |
2012年 | ロンドン | イギリス | パラリンピック発祥国で初の開催。参加選手が4000人を突破。 チケットが全席完売し、最も成功した大会として知られる。 |
2016年 | リオデジャネイロ | ブラジル | トライアスロン、カヌーがパラスポーツとして初の種目入り。 |
2020→ 2021年 |
東京 | 日本 | 夏季パラリンピック初となる2度目の同一都市開催。新型コロナの流行により1年延期。 大会シンボルが現行のものに変更される。 |
2024年 | パリ | フランス | 同都市初のオリンピックとの2大会開催。大会ロゴが初めてオリンピックと同じものが用いられた。 オリンピックと同じく、出場選手の男女比がほぼ同等になった。 国際放送が全種目で制作されるようになり、YouTube公式チャンネルにて全種目のライブ配信を開始。 |
2028年 | ロサンゼルス | アメリカ | パリ大会に続き同都市初の2大会開催。 パラアーバンスポーツが初採用。パラクライミングが競技に加わる。 |
2032年 | ブリスベン | オーストラリア |
開催地一覧(冬季)
第1回からの開催地。なお、1994年からは夏季オリンピックから2年後の開催となっている。
夏季大会の表と同じく、太字は単独記事がある大会開催都市である。
開催年 | 開催都市 | 開催国 | 備考 |
1976年 | エンシェルツヴィーク | オーストリア | 第1回国際身体障害者冬季競技大会。 日本からは個人資格で深沢定美が参加。 |
1980年 | ヤイロ | アメリカ | 第2回国際身体障害者冬季競技大会。 冬季大会では日本が選手団を結成して初参加。 |
1984年 | インスブルック | ユーゴスラビア | 第3回国際身体障害者冬季競技大会。 |
1988年 | インスブルック | カナダ | 第4回国際身体障害者冬季競技大会。 夏冬通してパラリンピック初の同一都市開催。 |
1992年 | ティーニュ/アルベールビル | フランス | 冬季大会では初めてパラリンピックが正式名称に。 開催時期が4月となった唯一の大会。 旧ソ連がEUN、東西ドイツが統一チームとして参加。 |
1994年 | リレハンメル | ノルウェー | |
1998年 | 長野 | 日本 | 知的障害選手の参加が認められた最初の大会。 |
2002年 | ソルトレークシティ | アメリカ | IOCとIPCが同じ組織委員会となった最初のパラリンピック。 |
2006年 | トリノ | イタリア | 車いすカーリングが競技に加わる。 |
2010年 | バンクーバー | カナダ | 北京大会同様、オリンピック同様の規則を適用した。 |
2014年 | ソチ | ロシア | ソ連崩壊後初の旧ソ連国でのパラリンピック。 YouTube公式チャンネル、NHKで初めて開会式が中継・配信された。 |
2018年 | 平昌 | 韓国 | 日本国内においてNHKがオリンピック同様に放送権を獲得。 スノーボードがパラリンピックで初めて競技に加わる。 |
2022年 | 北京 | 中国 | ウクライナ侵攻を受けロシア、ベラルーシが参加禁止に。 |
2026年 | ミラノ・ コルティナダンペッツォ |
イタリア | |
2030年 | フランスアルプス | フランス | |
2034年 | ソルトレークシティ・ユタ | アメリカ | 冬季パラリンピック初の2度目の同一都市開催。 |
関連大会
- アジアパラ競技大会(公式サイト
)
アジア大会も同様にパラスポーツ部門の大会を実施している。フェスピックを前身としており、2010年からアジア大会と同じ都市で開催されるようになった。一部競技はパラリンピックの予選も兼ねている。 - スペシャルオリンピックス(公式サイト
)
日本では近年に至るまで関係団体の設立も遅れた経緯があり、知名度はやや低いが、パラリンピックのような身障害者が主体ではなく、知的障害者が主に活躍するスポーツ競技である。間違われがちだが、最後にオリンピック「ス」と付くので注意。俗に言うケネディ財団により始められた経緯があり、アメリカでは非常に有名なスポーツ祭典である。
全員表彰(障害度別に競技が分割)であり、ボランティア含めパラリンピックとはまた別の関係にある。『able』という記録映画が有名である。 - デフリンピック(公式サイト
)
聴覚障害者が主体となる競技である。そもそも障害者競技の最初は国際ろう者スポーツ委員会による競技会であり、それが現在においても続いている形である。スペシャルオリンピックス以上に日本の知名度は低く、中々困難に直面しているようである。