概要
半島とは三方を水に囲まれた陸地、要は大陸や大きな島などから突き出た部分である。半分島のようなのでこう呼ばれる。英語でペニンシュラ(peninsula)というが、penとは突き出たものという意味があり、ペ○スと語源は同じである。
東アジア情勢で単に半島と言ったときには朝鮮半島を指す場合もある。
盆地、離島と並んで中央からの文化伝播が遅く、影響を受けにくかったことから伝統的、固有の文化が根付きやすい。また、陸続きなのに隔絶された地のイメージから、旅愁を誘う観光地として人気がある。日本最大の半島は紀伊半島であり、渡島半島、房総半島と続く。ただし、本土から突き出た地形のどこからどこまでを半島と指すかは自明でなく、いずれも面積は確定できない。
日本の半島は火山地形と縁が深いところが多く、温泉に恵まれた半島が目立つ。また漁業以外の産業が少ない、海に近いなどの理由で原発を誘致しているところが多い。
日本国内の半島
- 知床半島(北海道)
世界自然遺産にも指定された自然の楽園。ほぼ全域が険しい山地で、北部が知床国立公園になっている。半島の先端部までに道路はなく、そこへ行くには船で廻るか、ヒグマと戦いつつ歩いて行くしかない。一帯は水産資源が豊富で、コンブ漁や鮭漁が盛ん。対岸が北方領土の国後島。 - 野付半島(北海道)
延長25kmにも及ぶ日本最大の砂嘴。海の中に枯れた林と湿地帯が連なる荒涼とした眺めが広がり、最果て気分を味わうことができる。現在は人は住んでいないが、江戸時代には武家屋敷や遊郭が並ぶ「キラク」という街があった。 - 根室半島(北海道)
本土最東端の地。全体に低い丘が連なる地形で、根室の街のほか、納沙布岬(のさっぷ)がある(野寒布岬《のしゃっぷ》ではない)。JR根室本線の終着駅である根室駅、日本の鉄道最東端の東根室駅もこの半島にある。一帯はカニなどの漁業が盛んだが、北方領土を占拠するロシア国境警備隊と対峙する最前線でもある。 - 絵鞆半島(北海道)
内浦湾東端に突き出た鉤状の半島。この半島に抱かれた白鳥湾がそのまま室蘭港になっている。室蘭市の中心市街地がこの半島の上にあり、先端を絵鞆岬、南端を地球岬という。半島内側の白鳥湾沿いには巨大な製鉄所などが連なるが、地球岬やトッカリショなど半島外側は自然のままの地形が残され、鮮やかなコントラストを見せている。JR北海道の室蘭本線室蘭支線が伸びている。 - 積丹半島(北海道)
小樽の西に突き出る半島。ソーラン節発祥地といわれ、古くは鰊漁で栄え、今日ではタラ漁が盛ん。沿岸は険しい山々が連なり、この半島を周回する国道229号は度々崩落事故に見舞われ、それによるルート変更も行われている。道内唯一の原発、泊原発がある。 - 渡島半島(北海道)
北海道南西部(道南)を占める巨大な半島(日本では紀伊半島に次いで2番目に大きい)。南部で松前半島(松前側)と亀田半島(函館側)に分岐しているが、それぞれ「渡島半島南西部」「渡島半島南東部」として認識されることが多い。北海道にあっては数少ない江戸時代以前からの和人の歴史が息づく地域で、松前は道内唯一の城下町。函館を筆頭に江差や大沼など有名な観光地が多い。昆布生産が盛んで、特に南東部の南茅部でとれる「白口浜真昆布」は高級品として名高い。この半島自体は火山地形ではないが、北海道駒ヶ岳や恵山などの活火山があり、温泉がいたるところにある。対岸の津軽半島との間を北海道新幹線が結び、札幌方面は函館本線で結んでいる。五稜郭駅から木古内までの津軽海峡沿いを並行在来線の道南いさりび鉄道が走る。 - 下北半島(青森県)
その特徴的な形から「マサカリ半島」とも呼ばれる。本州最北端で、対岸の渡島半島に渡る際はスルーされる(一応大間から函館に渡るフェリーもあるが、半島住民以外は青森から青函航路を使うか、津軽半島から青函トンネルを使うことが多い)地域であることから、秘境イメージが高い。国内屈指の霊山にしてイタコでも有名な恐山や海の芸術品「仏ヶ浦」、北限の猿、尻屋崎の寒立馬、本マグロで有名な大間、井上靖の小説でお馴染みの海峡の温泉、下風呂温泉などがあり、見どころが多い。原子力産業を誘致しており、東通に原発があるほか、大間でも原発が建設されている。 - 津軽半島(青森県)
青森県の西側に突き出る半島。半島東部の陸奥湾沿いをJR津軽線・北海道新幹線が通る。ストーブ列車で有名な津軽鉄道が半島中央部を走っている。しじみの名所十三湖、太宰治の生家、階段国道339号線などがある。 - 牡鹿半島(宮城県)
女川はサンマやサバの水揚げ基地として有名。牡蠣の養殖や漁港が多く見られたが、東日本大震災の津波で幾つもの漁港が壊滅的状態に。しかし、磯焼けしていた漁場は海がかき回されたことで元に戻ったとか…。震災前は風光明媚な海岸線が連なっていたが、震災後の復興工事で巨大な防潮堤がそそり立つ風景に変貌した。女川に原発があるが、津波の被害は免れた。石巻線が石巻と女川の間を結ぶ。 - 男鹿半島(秋田県)
日本海と八郎潟に囲まれ、南北が砂州で本州と繋がった半島。寒風山、火山湖の一ノ目潟などの特徴的な火山地形を有する。信仰の地としてなまはげなどの特別な文化が根付いている。しょっつるに欠かせないはたはた漁の本場。奥羽本線から分岐した男鹿線が秋田方面と男鹿駅との間を結んでいる。 - 房総半島(千葉県)
日本で3番目に大きな半島(紀伊半島、渡島半島に次ぐ)で、鴨川、館山、勝浦などマリンリゾートや南国気分を味わえる首都圏近郊の行楽地として人気がある。北部は丘が連なり、南部は低めの山地(丘陵)になっている。半島内側(東京湾側)はJR東日本の内房線、外側(太平洋側)は外房線で東京方面と結ばれる。江戸時代以前からの捕鯨などの漁業文化が息づき、洞窟の壁を刳り抜いて作られた仏像「磨崖仏」などの宗教遺産も多い。対岸の三浦半島との間にフェリーを運航している。東京から近い割に自動車アクセスに難があったが、東京湾アクアラインと館山自動車道の開通で劇的に便利になった。しかしこの影響で房総特急が大幅に削減され、鉄道アクセスが不便になってしまった。2020年、この半島の地層に由来する地質年代が「チバニアン」と名付けられた。 - 三浦半島(神奈川県)
神奈川県の南東、房総半島の対岸に突き出た半島。半島東側は軍港・横須賀で、先端にはマグロ漁の盛んな漁師町三崎(三浦市)がある。西側の相模湾側は葉山別邸などの葉山や逗子など湘南に属する。大船経由でJR横須賀線、金沢八景経由で京急本線・逗子線・久里浜線が走る。チャッキラコなど固有の文化はこの地にもある。三浦市では大根やスイカなど温暖な気候を利用した野菜栽培が盛ん。 - 能登半島(石川県)
石川県北部を占める日本海側最大の半島。加賀地方とはJR西日本の七尾線で結ばれ、のと鉄道七尾線に乗り継げる。観光スポットとしては朝市や輪島塗や千枚田などで有名な輪島や最果ての地、珠洲、加賀屋旅館で有名な和倉温泉などがある。志賀に原発がある。 - 伊豆半島(静岡県)
元々は太平洋に浮かぶ火山島で、フィリピン海プレートに乗ってはるか南方から移動、本州と合体し半島となった。熱海、伊東、下田、修善寺、土肥、湯ヶ島、湯ヶ野などめぼしい温泉地が20以上集中する。山腹には天城山地が縦断し、天城越えで有名な浄蓮の滝がある。天城山麓は国内屈指のワサビ名産地。半島東側は熱海駅からJR東日本伊東線が伸び、伊東駅で接続する伊豆急行線に乗り継いで伊豆急下田駅までの間を結んでいる。半島西側は伊豆箱根鉄道駿豆線が三島駅から修善寺までの間を結ぶ。 - 知多半島(愛知県)
尾張南部の折れ曲がった半島。東は知多湾・三河湾に挟まれている。江戸時代には尾州廻船が幅を利かせ、事実上日本の海運を牛耳っていた。また、醸造が盛んで、米酢はこの知多から始まり、日本の寿司文化を華やかにさせた。名古屋近郊で、名鉄河和線・知多新線・常滑線とJR東海武豊線が半島の南北を結んでいるため人口は多く、またセントレアがある。国内一のイチジクの名産地でもある。 - 渥美半島(愛知県)
伊勢湾を挟んで志摩半島と向かい合う細長い半島。先端部は唱歌『椰子の実』で知られる伊良湖岬。温暖な気候を利用した花卉、野菜、果樹栽培が盛んで、特にメロンが有名。豊橋鉄道渥美線が新豊橋駅から田原市の三河田原駅までを結んでいる。 - 丹後半島(京都府)
カニと丹後縮緬、天橋立、伊根の舟屋などが有名な京都府北部にある半島。 - 紀伊半島(和歌山県、奈良県、三重県など)
日本最大の半島。狭義では中央構造線以南を指すが、和歌山県の大半と奈良県南部、三重県中南部を含む。本州から付き出ている部分を指す広義の紀伊半島には奈良県と和歌山県の全域と大阪府南部も含まれる。紀伊山地と霊場と参詣道という世界文化遺産があり、高野山に熊野三山といった日本仏教の聖地、修験の道大峯に吉野、伊勢神宮などがある。地形が険しく多雨地帯であるため森林率が高く、また、古くは林業でも栄えたため山奥にも古くからの集落が多数ある。梅の名産地であり、国内の梅の90%以上はこの紀伊半島で作られる。海岸沿いをJR紀勢本線が結んでいる。 - 志摩半島(三重県)
紀伊半島の東に突き出した半島。周辺は豊かな漁場で知られ、海女漁が盛ん。気候温暖なリゾート地・真珠の名産地としても知られる。近鉄志摩線が賢島駅まで結んでいる。 - 島根半島(島根県)
日本海と宍道湖・中海に囲まれた半島。美保関灯台が先端に位置する。美保神社が鎮座し、戎信仰が厚い神奈備の地。ここにも島根原発がある。 - 高縄半島(愛媛県)
愛媛県の北部に突き出た半島。先端部にタオルや焼き鳥の化身バリーさんで有名な今治市があり、ここからしまなみ海道を通って本州に接続している。 - 佐田岬半島(愛媛県)
愛媛県からひょろっと突き出た長さ40kmの半島。かつては本土でありながら交通を船に頼る「陸の孤島」であったが、現在は半島を縦貫する国道197号(佐田岬メロディーライン)により先端部の三崎まで1時間かからずアプローチできる。三崎港からは大分県佐賀関港との間に国道九四フェリー(国道197号の海上区間)が運航している。みかんや清見の栽培が盛ん。ここにも伊方原発が。 - 企救半島(福岡県)
北九州市の東北部に位置する。狭い関門海峡を挟んで下関市に接しているため、あまり半島という意識はされていない。レトロな町並みで有名な門司などがあり、橋や海底トンネルで彦島(下関市)・本州につながっている。対岸の下関市も本州から突き出した地形であるが、こちらは半島として認識はされていない。 - 若松半島(福岡県)
北九州市の中心部に位置する半島。市街地化が進んでいて、洞海湾の埋め立てにより企救半島以上に半島だと認識されづらいが、これもれっきとした自然の半島である。筑豊本線が通っている。 - 国東半島(大分県)
周防灘に丸く突き出した半島。半島自体が標高721mの両子山をはじめとする両子火山群の噴出物で形成された火山地形である。古くから「六郷満山」という仏教文化が根付いた信仰の地。基部には全国八幡の総本社である宇佐神宮が鎮座する。 - 東松浦半島(佐賀県・長崎県)
伊万里湾と玄界灘に挟まれた半島。先端部の呼子は朝市とイカ焼売で有名。ここにも玄海原発がある。また、玄界灘の強風を利用して、風力発電の風車も多く見られる。 - 北松浦半島(長崎県)
佐世保市と伊万里市を基部に北西に突き出た半島。九州有数の漁港、松浦港があり、先端部からは平戸大橋を伝って平戸島につながっている。 - 西彼杵半島(長崎県)
長崎市からにゅっと北部に突き出た半島。この半島のおかげで大村湾はまるで湖のような超閉鎖性水域になっている。温暖な気候を利用したみかん栽培が盛ん。なお、この半島と対になる東彼杵半島という半島はないが、大村湾を挟んだ対岸に東彼杵郡・東彼杵町という地名はある。 - 長崎半島(長崎県)
長崎市を基部に、南西に伸びている半島。先端部に野母崎がある。国内随一のびわ産地であり、茂木地区はこの基部にある。 - 島原半島(長崎県)
雲仙岳の噴出物によって作られた半島。古くは島として独立していたらしい。そうめん、すいか、じゃがいもなどが名産。島原鉄道が島原港駅までの間を結び、ここから大牟田・熊本方面への船が出ている。 - 宇土半島(熊本県)
八代平野からにゅっと突き出た半島。熊本県から天草諸島への入り口となっている。一帯は柑橘類栽培が盛んで、デコポン発祥地として知られる。JR三角線が半島を縦断している。 - 大隅半島(鹿児島県)
鹿児島県の東部に位置する半島。本土最南端の佐多岬があるのはこっちだが、薩摩半島に比べ見どころには乏しく、地元の人曰く何もない場所だとか。内之浦は種子島と並ぶロケット発射基地がある町として有名。桜島は島だったが、大正時代の噴火でこの半島と陸続きになった。鉄道はかつては大隅線が鹿屋を通り東西を結んでいたが、今は宮崎県方面と志布志駅を結ぶ日南線しかない。これは鹿児島市方面には垂水からフェリーで行くルートの方が近道であったからだという。 - 薩摩半島(鹿児島県)
鹿児島県の西部を占める半島。先端には百名山で名高い開聞岳や長崎鼻、指宿温泉、坊津、吹上浜など見どころが多い。一帯は西日本一の茶どころとなっており、特攻基地や麓の武家屋敷で有名な知覧は知覧茶でも名高い。モノレールを除く普通鉄道では日本最南端を走る指宿枕崎線が枕崎との間を結んでいる。 - 本部半島(沖縄県)
沖縄半島北部(やんばる)にある半島。険しい山が連なり平地が少ないが、亜熱帯性の豊かな自然に恵まれている。ジンベエザメの泳ぐ沖縄美ら海水族館や、古宇利島、世界遺産の今帰仁城跡などの観光地で有名。
記事のある半島の一覧
日本の半島
日本国外の半島
- インドシナ半島(ベトナム・カンボジア)
- カムチャッカ半島(ロシア)
- マレー半島(マレーシア・シンガポール)
- アナトリア半島(トルコ共和国)
- アラビア半島(サウジアラビア/アラブ首長国連邦/カタール/オマーン王国/イエメン共和国)
- ソマリア半島(ソマリア)
- バルカン半島(ギリシャ・セルビアほか)
- イタリア半島(イタリア)
- イベリア半島(スペイン・ポルトガル)
- ブルターニュ半島(フランス)
- コーンウォル半島(イギリス)
- ペロポネソス半島(ギリシャ)
- ユトランド半島(スウェーデン・デンマーク)
- スカンジナビア半島(ノルウェー、スウェーデン)
- クリミア半島(ロシア連邦(実効支配)/ウクライナ(領有権主張))
- フロリダ半島(アメリカ合衆国)
- ラブラドル半島(カナダ)
- カリフォルニア半島(メキシコ)
- ユカタン半島(メキシコ)
- 朝鮮半島(大韓民国/朝鮮民主主義人民共和国)
- 雷州半島(中華人民共和国)