MIDI(ミディ、Musical Instrument Digital Interface)は、電子楽器のデータ規格の一種。
また、MIDI規格に準規した機器(MIDI楽器、MIDI音源)やデスクトップミュージック(DTM)のことを指してMIDIということもある。
概要
日本のMIDI規格協議会(JMSC、現在の社団法人音楽電子事業協会(AMEI))と国際団体のMIDI Manufacturers Association (MMA) により制定された、電子楽器の演奏データを機器間でデジタル転送するための規格である。物理的なインターフェース、通信プロトコル、データ形式、ファイルフォーマットなどからなる。
1981年に計6社によって規格案が整理され、初版のスペックができあがった。その後、3年を経て協会(MMA: MIDI Manufacturers Association)も設立。
また MIDIの1ファイル形式である、Standard MIDI File (SMF)についても、MIDI初案から10年後の1991年、「MIDIファイルの推奨例」として協会が正式に推奨する運びとなった。
GM(General MIDI)
MIDIは「○番の音色を●番の音階で鳴らす」といった演奏情報の集まりなので、音源が変わると全く違う音色で演奏されてしまう恐れがある。このために行われた音源の標準化で生まれたのがGMである。
SMF(Standard MIDI File)
PC上で扱われる「.mid」、「.midi」の拡張子のファイルはSMF(Standard MIDI File)と呼ばれ、音階や発音タイミングなどのデータの羅列(シーケンス)である。これを時系列順に出力するのが「MIDIシーケンサー」(PC上のメディアプレーヤーも「再生専用のMIDIシーケンサー」とみなせる)、MIDI信号を受け取って実際に発音するのが「MIDI音源」である。これらの関係は「楽譜」、「奏者」、「楽器」の関係と言えるだろう。
SMFはいわばデジタルの楽譜に過ぎず、鳴らすべき音の波形などは個々のパソコンが搭載している(もしくは接続されている)MIDI音源にゆだねられる。ゆえにMIDIによる演奏は、
- SMFは音楽ファイルとしては非常にファイルサイズが軽い。
- 再生に用いるMIDI音源によって音が変わる。
- プレイヤー次第では加工しつつの再生も可能。(移調やテンポの変更はカラオケでおなじみの機能だろう)
という特徴を持つ。当然ながら、MIDIファイルを作成した者のMIDI音源と、視聴する側のMIDI音源の機種が違えば、最悪のケースでは演奏が破綻してしまうこともある。MIDIデータはあくまで「どう演奏するのか」を記録したもので、どのように演奏されるかは再生側の環境に左右される。かつてMIDIデータがやり取りされていた全盛期においては、「SC-88Proより上位の音源で聴いてください」などの注意書きが多く見られた。
MIDIに疎い者からは「MIDIは音がしょぼい」といった意見が散見されるが、データの不出来によるものか再生環境の貧弱さによるものかの判断が付いていない為であろう。近年のパソコンはOSに標準搭載のソフトウェアMIDI音源(MSGS、QuickTime Music等)を用いるのが常態化しているが、これらは実用上最低限の波形・機能しか備えず、工夫を凝らしたMIDIデータに対する再現性に難があることを念頭に置かなければならない。
一方でMP3などのPCM音声は「どう演奏されたか」を記録したものであるため、製作側と視聴側との環境の差で音質の劣化は発生しうるものの、内容が破綻することは起こらない。ちなみにニコニコ動画もMIDIデータの配信機能は盛り込まれておらず、MIDI演奏の動画はすべてMP3やAAC等のPCM音声によるもの(演奏結果を録音したもの)である。
代表的なソフトウェアMIDI音源
Microsoft GS Wavetable SW Synth (MSGS) / Microsoft Synthesizer
何となく興味を持ってMIDIファイルを再生してみた初心者をがっかりさせる事に定評があるWindows内蔵MIDI音源ことMSGS。ゲイツシンセとも呼ばれる。音色は微妙、エフェクトはほぼ無効と散々だが、Roland社製品だけあって音色間のバランスなどはしっかりしており、とりあえずは聞けるけど、本当にとりあえず聞けるだけという代物。MIDIドライバーとして機能してくれるので使い勝手は悪くないのだが。Microsoft SynthesizerはMSGSとほぼ同一の音源のDirectX版。フリーゲームなどでMP3やMIDIが見当たらないのに何かしら音が鳴ってるとしたら、おそらく正体はこれ。また、MSGSの音源名 (= MIDI デバイス名) は Windows Vista 以降、 「Microsoft GS Wavetable Synth」 に変更されている。
QuickTime
アップル社のメディアプレイヤーに付属のMIDI音源。WindowsユーザーでもiTunesなどをインストールした時にMIDIファイルの再生がこちらに指定されている事もあるかも。音質はMicrosoft Synthesizerよりはましな程度。何よりMIDIドライバーなどとして機能してくれないので、QuickTimeの再生を想定したMIDIが作りにくく、制作側からはスルー状態。
YAMAHA MidRadio Player
YAMAHA社がフリーで提供しているメディアプレイヤーの内蔵MIDI音源。カラオケ用に音色が調整されているようだが、 Roland VSC-88Pro や後述する YAMAHA S-YXG50 用に作られた音源もそこそこきれいに再生してくれて、現在入手可能なMIDI音源としては入手の手軽さと性能のバランスが最良とのこと。聞き専門ならとりあえずインストールしても差し支えない。もっとも、こいつもYAMAHA社製品に対してVSTiとして機能する以外は、MIDIシーケンサーなどから直接呼び出せないため、作り手からは微妙な存在。ちなみに、現在公開されている最新バージョン(7.2.1)と旧バージョン(6.0.0)とでは、内蔵MIDI音源の音色が違う。バージョン7.2.1では、カラオケサービス「パソカラホーダイ」や歌本サービス「ネットで歌本」向けに音色が変更されている。
※DLLファイルに非公式パッチを当てることで、他社製品でもVSTiとして一応は使用可能。
YAMAHA S-YXG50
YAMAHA社がかつて提供していたソフトウェアMIDI音源。YAMAHA社製のチップを積んだサウンドボードの付属品などとして大量に出回っていたため、これを用いてMIDI制作を行う人は多く、Roland VSC-88Pro とともにMIDI黄金期を築き上げた。残念な事に配布・サポートともに終了…したはずだが、実は未だにWindows Updateに転がっていたりする(もっとも、Windowsの仕様変更によりVista以降のWindowsでは動作しない)。MP3の台頭前はゲームミュージックなどもMIDIで演奏されており、その際のMIDI音源として指定される事も多かった。
他:インターネットにおけるMIDIファイルの歴史
インターネット上でのMIDIファイルの扱われ方としては、その容量の軽さやデータ自体の製作の手軽さから、家庭用インターネットの回線速度の平均がまだ早くなかった頃には最もスタンダードな音楽ファイルであった。ウェブサイトでBGMとして使用されたケースも少なからずあった。
さまざまな楽曲が各所で製作され、専門に扱う公開サイトなども多数存在したが、そういった楽曲の中には、転載が繰り返され、製作者不明のまま出回った物も多数存在した。
また他方では、有名な既存楽曲を打ち込み、原曲作者に非許諾なまま公開しているサイトも数多く存在したが、これらの場合もまた、無断転載の果てに製作者不明のまま出回ることが多かった。
~これより下は、既存楽曲の打ち込みデータをMIDI形式で非許諾公開していたサイトのその後について書かれています~
2000年8月にJASRACとNMRC(ネットワーク音楽著作権連絡協議会)はインターネット上での音楽利用に関する著作物使用料について合意に至り、JASRAC管理楽曲については、個人サイトでの非商用の配信であっても使用料が発生することになった。例えば、配信する曲数が10曲までの場合は年額1万円の支払いが必要になる。[1]もちろんMIDIファイルの公開も例外ではなかった(著作権の消滅した曲やJASRACに管理を任せていない自作曲などは関係ない)。
CD等で流通している音楽については大抵の場合JASRACが著作権を管理しているので、JASRACが著作権利用許諾と著作権料の徴収にあたることになった。このことにより、JASRACによる圧力と勘違いされてしまった。
ゲーム音楽については、多くの曲がJASRACに信託されていないため、ゲーム会社(または作曲者)の許諾が必要となる。実際は、JASRACのように監視を行うセクションが存在しないので放任状態となっている。
これを機に、MIDIファイルを公開していたサイトの多くは閉鎖かMIDIページの削除を余儀なくされた。
一昔前までは大量に存在していたMIDIサイトだが、現在まで残っているのはほぼ少数。
現在ではインターネット回線の高速化に伴って大容量データの送受信が容易になったため、MIDIファイルとしての配布はせず、製作者自身が最適と考えているMIDI音源で再生されたものをMP3などオーディオデータ化して配布することが主流となっている。
また、現在ではIEを除く主要ブラウザがWindows Media Playerプラグインの対応を打ち切っており、ウェブサイト上でMIDIを直接再生できなくなっている。このため、インターネット上でのMIDIは時代の移り変わりとともに使い勝手が悪いものとなってしまった。
MIDI検定
MIDI検定とは、MIDIの規格内容を認識し、活用できる能力を問う日本の検定試験で、一般社団法人音楽電子事業協会が主催している。検定試験ではパソコン、音源、音楽、楽器などMIDIに関連する内容が出題され、中でも1級、2級は音楽製作現場において実務レベルの人材を対象としている。1級から4級まであり、1級と2級はデータを作成する実技試験が含まれる。
関連動画
関連コミュニティ
関連項目・外部リンク
- 音楽関連用語の一覧
- MIDI音源
- DTM
- MIDIアニメ
- 東方MIDI
- シーケンサー
- synthesia
- 電子情報技術産業協会(JEITA)による平成8年度「電子化文書の動向に関する調査報告書」(アーカイブ)