久しぶりの「産科診療所から」ですが、産科診療所、病床数が19床以下の分娩施設で働くようになって10年以上になりました。
ある程度経験を摘んだ助産師の働き場所としては、なかなか良いのではないかという思いが強まる反面、このまま産科診療所もなくなって分娩場所が集約化されてしまうのだろうかという不安が強くあります。
時々、私の勤務先と同じ規模の診療所の閉鎖のニュースがあると、その不安はなおさらです。
先日もこんなニュースがありました。
小林で出産できない 唯一の診療所 今月で休診 妊婦市外転院、精神的負担も
2016年11月24日(木)配信 宮崎日日新聞
小林市で唯一、分娩(ぶんべん)を扱う産婦人科の有床診療所が、11月いっぱいで休診することが23日分かった。同市の出生数は年間371人(2014年)。診療所は年150〜250件を扱っていた。今後の妊婦健診や出産は都城、えびの市など全て市外の病院に頼まざるを得ず、子育て世代の負担が重くなる。10年以上休診が続く小林市立病院産婦人科も再開のめどは立っておらず、地域医療への影響が懸念される。
休診するのは、同市南西方で00年に開業した民間の有床診療所(16床)。出産や急患妊婦の受け入れ、子宮がん検診などを行っていた。休診は院長の健康が優れないためで、今月18日以降は外来診療を中止。出産予定の妊婦は市外の病院に移る準備を終えている。
小林市には市立病院(現在の市立病院)に産婦人科があったが、経営効率化を理由に03年4月から休診。09年の病院改築時に産婦人科の再開を目指したが、医師を確保できず断念している。市内での出産は約13年間、この診療所が一手に担ってきた。
診療所で11月に出産予定だった市内の20代女性は、予定日の約3週間前にえびの市の病院に転院し、出産。「自宅から車で30分以上かかり、精神的な負担を大きかった。小林市で子どもを増やすためには、市内で安心して分娩できる病院が必要」と訴える。
休診の影響は大きいため、同市の肥後正弘市長らは16日に県医療薬務課を訪問し、医師確保に向けた情報の共有などを要請。今後は宮崎大医学部を訪れ、同様の要請をするという。肥後市長は「県や医師会、大学などと連携し、産婦人科の再開に向けて構築していきたい」と話している。
県健康増進部によると、県内で分娩を扱う医療機関は、宮崎市や西都・児湯地域まで含めた県央部が16カ所で最多。県北部7カ所、県西部7カ所(休診する診療所を除く)、県西部4カ所。12月から西諸地域で出産できるのは、えびの市内の病院1カ所となる。
私が勤務しているのは南関東にある年間分娩数400件前後の施設ですが、250件ぐらいの分娩数を超えると、ローリスクが主の一次施設といっても本当にさまざまなことが起こる印象があります。
分娩だけでなく、悪阻や切迫流早産の入院が増えますし、緊急帝王切開や母体・新生児搬送数も増えてきます。
分母が増えると当然、起こりうる確率も高くなりますし、妊娠・出産にはこんなこともあるのかということも増えてきます。
おそらく地域の産科医の高齢化をなんとかしよう」と志を持って2000年頃に開業され、その後の産科崩壊といわれた時期にも24時間365日、その地域の安全なお産のために働かれてこられたのだろうと思います。
一つの産科診療所が休診すると、医療機関が多いように見える南関東でさえ、400人の妊婦さんを他の産科施設へ転院させることは他の施設も悲鳴をあげることになります。
皆、妊娠4〜5週で分娩予約が一杯になるぐらい、ギリギリのところなのですから。
また、一つの産科診療所が休診すると、そこで働いていた様々な部署のスタッフ30〜40人ぐらいが仕事を失うことにもなります。
分娩施設でのキャリアを活かせる道も閉ざされるかもしれません。
こういうニュースを聞く度に、産科の先生お一人のお気持ちや健康が続かなくなった時、地域の安全なお産も、あるいは地域の雇用も幻になっていくのだと、明日は我が身の気持ちで産科診療所休診のニュースを読んでいます。
「産科診療所から」まとめはこちら。