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このアルバムがリリースされる頃には、大いに騒がれているはず! その騒がれる理由は今作を何回も聞くうちに分かってくる。「ハタチ? 関係ないっしょ!」「 チャラチャラしてる? 関係ないっしょ! これが俺のスタイルだ」「これが、俺のプロップスなんだよ」今ジャパニーズ・ヒップ・ホップは面白い。決して古い価値観に捕われず、各々のヒップ・ホップを信じている。更にシーンを盛り上げる起爆剤となるであろうRAU DEFは要チェックだ。Punpee、S.L.A.C.K.、SEEDAもそのセンスとスキルを認めた若干20歳のRAU DEFに、キャリアがスタートするにあたっての心境と過去に何があったかを聞くためにインタビューを行った。と同時に、今乗りに乗ってるヒップ・ホップ職人Punpee氏からコメントを頂いた。RAU DEFがシーンに現れた事に期待せずにはいられない。
RAU DEF / ESCALATE
アルバムの中心はPunpee(PSG)が様々なスタイルのビートで彩る。中でもリード曲の「DREAM SKY」はドラマティックなネタ使いに、タイトなドラムブレイクが確実にB-BOY必殺の一曲。HISTORICと競演した「RAC BANG」などを自らプロデュースし、新境地を開拓している。またKREVA氏によるトラック・メイカーの一般募集企画で最終選考まで残ったビート・メイカー PuB KENが参加。またSEEDA氏にトラック提供の経験もあるNAKKIDや、練馬ザファッカーやD.O氏のプロデュースでも知られるJASHWON。福岡親不孝通りから同世代のラッパー、POCKYも参加。 さらにビート提供に加え、客演でも参加したS.L.A.C.K.の楽曲も聴き逃せない。 NICEな客演との相性の良さを感じられる。
客演アーティスト & プロデューサー : Punpee、HISTORIC、PuB KEN、NAKKID、ZAKK、S.L.A.C.K.、POCKY、STUTS、JASHWON
Punpee氏のコメントが到着しました!
「首を振れるRAPを次々と投下するRAUには秘密がある。でもそれは、徐々に噂が広まるのを待つ事にしよう。ハタチで1st ALBUMなんて羨ましいやつ! でもSKILL一つがそれを実現させたのです。DEFEEZY GET BUISYYYYY!!!!!!」
—Punpee(PSG)
「超感覚的」。その日本語ラップ的価値。
「超感覚的」と称される彼、RAU DEFのラップを、稚拙かつ端的に言い表してみよう。「あっちっぽい」。そうゆう事だ。感覚的なのだから、言葉で論理的に説明しても仕方ない。それだけ書いて筆を置きたいのだが、それだけでは彼をクローズ・アップしきれていないので、彼のスゴさを、わざわざヒップ・ホップ・シーンに触れつつ、説明してみたい。 PSGの「M.O.S.I」の Remixの1ヴァース… このたった16小節でデビューに至り、ヘッズの興味を集めたRAU DEF。日々、凌ぎを削り合っている多くのラッパー達からすれば、夢のような話じゃないだろうか。このスッパ抜きは、PSGによるものなのか。いや、それだけではない。 日本とアメリカのラップは、それぞれに異なった特徴を持つ。単純に言うならば、前者が人に伝えるラップで、後者が人を踊らせるラップ。あくまで主流の傾向から言うと、だ。でも、日本語ラップ・オンリーのイベントに行ってみてほしい。腰揺らすセクシーな女の子なんぞ皆無で、ゆらゆらしたヤロウばかりだし、あながちハズレてないと自負する。(色気がなくとも、筆者は大好きだが! )つまり、日本語ラップの魅力は、リリックとワン・ループに込める、ある種「男気」に近いモノではないだろうか。
その中からRAU DEFのように、重い言葉を響かせるのではなく、フロウでラップを魅せるキャラが登場すれば、そりゃ目立つに決まってるだろう。彼はメッセージを伝えたくて、ライムするんじゃない。リズムを感じてほしいから、ライムしているんだ。若干ハタチといえど、キャリアのスタートが早かっただけに挫折や迷いも経験し、それ故にシーンに対するリスペクトと抱負も大きい。彼のキャリア第一歩となる肉声を読め!
インタビュー & 文 : 斎井 直史
何がイケてるとかって、最初はわからないじゃないですか?
——僕が最初に知ったのがPSG「M.O.S.I 〜もっとMCが増えたならREMIX〜」だったのですが、 どんな経緯で参加が決まったのですか?
RAU DEF(以下R) : 今、RAC A SET(ラッカセット)っていうクルーやってて、相方のHISTORIC(ヒストリック)って奴がすごいミーハーだから、「Punpeeやべえ。超絡みてぇ」とかいいまくってて。ちょうどそんな時にパン君(Punpee)が「ニートはじめました。」とかいって、ブログに連絡先を載せてたんすよ。それに携帯で、いたずらメール送りまくって(笑)。
——それがいつ頃なんですか?
R : メールしまくってた後、直接会ったのは去年のB-Boy Parkの時ですね。俺はMC Battleで出てて、パン君はS.L.A.C.Kのライヴで来てて。パン君とはイヴェントとか前から被ったりしてて、俺は面識あったんで、会ったときに「変なメール送ってすんません」ってパン君に声かけたんですよ。そしたらパン君も「知ってるよー、RAU DEFでしょー? 」って覚えててくれてて。あと、S.L.A.C.K.君がSEEDA君とDJ ISSOさんのMix CD『Concreat Green 9』でフック・アップされた俺の曲聴いて、評価してくれてたみたいで。そんな感じで「アルバム特典のRemixやるから、一緒にどう? 」って声かけてもらった感じです。
——それがFile Recordsとの接点に?
R : そうっすね。Fileの方がM.O.S.I Remixを聴いて、すぐにパン君に「こいつ誰? すぐ紹介してほしいんだけど」って聞いてくれて。
——ちなみにラップとの出会いは?
R : Ruff Ryders全盛期の2002年とかっすね。兄貴みたいな従兄弟がいるんですけど、そいつがDJ目指してレコード買ってきて、それをよく聴いてたんですよ。それで、EveとかDMX、The Loxとかヤバいなーと思ってんです。ちょうどその頃に、キングギドラが『最終兵器』出して、「これしかないな! 」みたいな。それが中一とかですね。でも、ホントの最初はB-BOYのルックスがラップへ繋がってましたね。これ音楽なの? っていう状態だけど、バスケ・シャツ着たり、でっけぇティンバー・ランド履いたりして、図太い感じがカッコいいしヒップ・ホップだと思ってたんですよね(笑)。
——それにしても、いきなりRuff Rydersは早熟ですね(笑)。
R : まず情報が無いから、周りの影響が大きいっすよね。Ruff Rydersの前とかだとEMINEMの『THE EMINEM SHOW』とかかな。あと、並行して日本語ラップも聴いてて、MACCHOやBUDDAH BRANDとか。全てを一括りにしてましたね。何がイケてるとかって、最初はわからないじゃないですか! しかもあの頃って、ラップのCDがお店にあまり無い状況だし。渋谷とかも、黒人に騙されて洋服買わされたりする怖いイメージだったし(笑)。
——多くの人が経験しますよね(笑)。それから、ラップを始めたキッカケとかあったんですか?
R : ジブさん(Zeebra)ですよね。「SUPATECH」とか聴いて、「これから楽しい時代が始まる! 」って思ったけど… 今ビミョーじゃないっすか。日本もむこうも、2000年前半がヤバかったかなって思いますね。全然クラブ行ける年じゃなかったけど、盛り上がってる話は聞いてたので。それで、次第にラップしたくなってきたんですけど、ラップの仕方とか解らないじゃないですか。周りにラッパーなんていないし。そんな感じで中学が終わったけど、高校の彼女の兄貴が偶然DJやってて、紹介してもらって「ラップしたいんだ! 」って頼みこんでクラブに出させてもらえたんですよ。それが、高一の夏とかかなぁ。
「たいして聴かれねぇし、意味ねぇな 」って思えて。
——ちなみに千葉のどこ出身なんですか?
R : 実家は市川なんですけど、今は東京の江戸川区に住んでます。市川とか、昔クラブがあったみたいなんですけど、今はもう無くって。それで千葉とか柏とか、たまに都内のクラブでライヴしてましたね。
——高校の時から?
R : そうなんすけど…次第に「意味ねーな」って思えてたんすよね。
——ライヴしてもって事ですか?
R : ライヴとかすげーやっても、ダメだって思えてきたのが高3くらいっすね。だって、結局は有名な人が来ないと盛り上がらないじゃないですか。ましてや平日とか、昼のイヴェントなんて見る人いないのにライヴしても、しょーもないなって思えて。で、一旦ライヴ休憩して曲作る事にしたんですよ。仲間もいたんですけど、俺はメイン・ストリームでやりたい一方、みんなは泥臭くやっていきたいって感じで、結局どんどん仲間も減ってくるし。そうなると行動力も落ちるじゃないですか。そんな時にHISTORICとやって、それ送ったら運良くSEEDA君のCCG(MixCD『Concreat Green』シリーズ)に拾われたっすね。そんな流れですね。
——いきなり!? その「運良く」っていうのをもう少し詳しく教えてください。
R : HISTORICと一緒にやる前にも、実はソロで送ってて。だけど、オケ(トラック)がオリジナルじゃなかったのと、「FrieNd Chicken」って曲でSEEDA君へのディス(※ディス・リスペクトの略)と思われて見送られちゃって。確かにあれ、ディス・シットだから勘ぐられても仕方ないんですけどね(笑)。そんなエピソードを「SUPER RAPPER」でOKしてもらった時に、DJ ISSOさんから教えてもらいましたね(笑)。
——それが高3の頃?
R : そうっすね。そのあと、インストと、仲間が作ってくれたオリジナル・トラックでデモCD作ったんですよ。「FrieNd Chicken」や「SUPER RAPPER」を混ぜて。だけど、結局またライヴしてた時と一緒で、「たいして聴かれねぇし、意味ねぇな 」って思えて。イベントだって、スキルが無くて呼ばれないなら当然だけど、なんで俺らが金払ってライヴしなきゃなのか、わかんなかった。そこを見極めて客集めるのが、オーガナイザーなんじゃないのかよって。そんな悩みを持ってて、結構絶望感に溢れてたんですよ。それで一応、就職とかしたんですけど... やっぱりヒップ・ホップに戻りたくなったんです。にも関わらず、全然曲つくる気が起きなくて…。そこで当時、2008年くらいなんですけど、バトルが盛り上がってきた時だから、手っ取り早く名前売るのにはバトルだなって。そう思ってバトル出たんですけど、全然結果出せなくって、「もう俺ダメだ… 」と思った。それで、ラスト・チャンスと決めて、B-Boy Parkのアンダー・20のバトルに出たんですよね。それでB-Boy Parkに行ったのが去年の話。
——じゃあ続けてみてよかったですね。
R : いや、続けてよかったというより、B-Boy Parkがあってよかったですよね。それがあったから、パン君と出会うこともできた。ちょうどメール送りまくってた時期と重なってたのも有り難いですね。
——なるほど。それからはPunpeeから手厚いバック・アップを受けてますが、ラッパーから見て彼はどんな人なんですか?
R : パン君は…ヒップ・ホップとか、ラップとか以前に、もう音楽家ですよね。多分、器用に何でも出来ちゃう人なんすよ。結構なジーニアスっすよねぇ…。
——Punpeeの弟、S.L.A.C.K.も参加してますが、彼はどうでしたか?
R : S.L.A.C.K.君とは一緒にレコーディングしたんですけど、もう発声から違うんですよ。スタジオの人も「S.L.A.C.K..はちげぇんだよ」って言ってたんですけど、そんなの言われなくても分かるくらい。「Yo」って言っただけで、グルーヴが生まれちゃうし、常にマイ・ペースだし。なんかもう、そもそもが違うかなって(笑)。あの兄弟に共通してるのは、探究心がヤバイって事ですね。
>>>インタビュー後半に続きます!
探究心に関しては譲らねぇよ!
現在シーンで最もアルバムを期待されているSQUAH SQUADが遂にファースト・アルバムをリリース! VITO / LOOTAの2MCが視点・表現・フローとすべてが今までにない斬新なラップ・スタイルを展開し、DineroがUSとの時差のないサウンドをプロデュース。今作は国内屈指のHIP HOPプロデューサー・チーム、Gunsmithから318とFlammableをエグゼクティブ・プロデューサーに迎え、同じくGunsmithの JIGGとdee.c、盟友であり埼玉を代表するグループのドルネコマンション、若手でもズバ抜けたSkillを持つYELLOW DIAMOND CREWのBRGK(バラガキ)等が参加。
DJ DOGGことDJ PERROによる待望の作品となる初のラップアルバム。音楽制作におけるフィルターとしての意味、同時に空気、煙をクリーンにするものや、濾過する役割であったり、フィルターを通すと、全く違うものが出てくるという意味から派生した今作は自身制作のトラックにフィルターというエフェクトを通し、さらにMCというフィルターを通して生まれた。
RAU DEF profile
一体今までどれだけのラッパーが新世代と呼ばれて来ただろう。小難しい理屈はどうでもいい、これぞ超感覚的HIPHOP。ラウデフ、ラウ、ラウ君、ラウちゃん、DEFEEZY、デフデフ君など、様々なあだ名があるがとにかくRAU DEFがフロウすると、誰もがその気持ち良さに身を任せる。フレッシュでいて普遍的、フリーキーかつスタンダードなスタイルを既に確立し、今後最も注目を集める存在となるだろう。09年に発表されたSEEDA & DJ ISSO「CONCRETE GREEN 9」や、PSGの特典音源「M.O.S.I Remix」等でその才能を遺憾なく発揮し、遂にデビューアルバム「ESCALATE」が完成。休む事なく驚異的なスピードで楽曲を量産中。また、盟友 HISTORICと共にRAC A SET(ラッカセット)としても活動しており、そちらの動きにも注目。