新東京──ギターレスで魅せる、バンドサウンドの新たな可能性
数多くいるアーティストのなかから編集部がグッときたアーティストを取り上げる新企画〈OTOTOY Search〉。早耳リスナーへ今後さらなる活躍が期待できるアーティストを紹介していた連載〈OTOTOYの「早く時代がついてこい!」〉をバージョンアップし、ショートレヴューとインタヴューで若手アーティストをご紹介していきます。第6回は、現役大学生にして会社を設立し、セルフプロデュースをするバンド、新東京。テレビ番組『関ジャム 完全燃SHOW』で紹介されるなど、注目されている彼らに迫ります。
REVIEW
文 : 梶野有希
2021年4月に結成された、現役大学生によるバンド、新東京。メンバーは4人でギターは不在。と、聞くと、つい先日「ギターソロ」の必要性についてSNS上で熱い議論が交わされていたことを思い出す。「ギターソロはあまり聴かない」と主張する者のなかには、イントロや間奏でエレキギターが鳴るとスキップする傾向があるとのこと。たしかに近年のヒットチャートには、ギター・ロックよりも、シンセサイザーやストリングスを多く用いた邦楽がランクインしていることが多く、バンドの新譜を聴いていても、ギターとプラスアルファの要素が増えている傾向がある。
だからといって、ギターレスバンド、新東京の楽曲はシンセやストリングスを多用しているというわけではない。4人の音色がそれぞれ際立つ上に、個々のフレーズセンスがストレートに伝わる、シンプルな楽曲構成となっている。つまり、”ギターレス”というバンド形態は、時代にあわせた音楽性ではなく、彼らなりの音楽を追求した結果なのだ。ライヴでもその信念が変わることはなく、4人の生音のみで勝負している姿が印象に強く残った。結成1年目、くわえてライヴ経験は数回しかないバンドが、洗練されたスタイリッシュなライヴをどんな場所でも作り上げていた。個々のスキルが高いだけでなく、バンド全体の演奏に柔軟性がある証拠だろう。
この“ギターレス”というスタイルは、個性にもハンデにもなりそうだが、新東京の場合は、間違いなく個性である。流動的なフレーズでインパクトを与えつつ全体を引っ張っていくという、本来ならばリードギターが担う役割は、キーボードとドラムがしっかりと担っている。またグルーヴを支えているのは、ドラムはいうまでもなく、ベースの配分もかなり大きい。既存の楽器が持つイメージを崩しながらも、それぞれのパートの秘めた魅力を模索しながら前進するという個性が新東京にはあるのだ。
さて冒頭でメンバーは「現役大学生」と紹介したが、彼らは現在、バンド活動に集中するため休学中らしい。新東京のリーダーである、田中利幸(key)が新東京合同会社を設立し、ほぼセルフプロデュースで活動していくというのだ。その強固な覚悟の結果だろうか。新東京の初シングル「Cynical City」は、テレビ番組『関ジャム 完全燃SHOW』で紹介されたほか、Spotifyでの再生回数は約18万回を記録するなど、彼らの代表作となった。さらにNulbarichやiri、AAAMYYYらが出演するフェス〈TOKYO M.A.P.S〉への出演を果たすほか、TOKIO TOKYOで7月に開催される初ワンマンは40分でソールドアウトしたという。止まらぬ勢いを見せている新東京への期待は募るばかりだ。