MONO NO AWARE 『ザ・ビュッフェ』
「食」をテーマにした5thアルバム、と聞いた時点で味見したくなる食いしんぼうだが、試食してみたら期待以上に美味だった。4人編成のバンドの可能性を極限まで突き詰めたような変幻自在のアンサンブルは、ポスト・ロックにインディー・ロック、ときにMPBにアフリカン・ルンバまで思わせるサイケデリックな感触を湛えて快楽至極。歌詞とヴォーカルも諧謔に満ち、「松屋あの世店でやっと会えた君と飯を食う」( “同釜” )になんやねんと思っていたら「いつまでもこうしてあなたといたいわ/じゃあもう漕がなくてもいいかな」「カザミドリ一回は飛んでみろ」( “風の向きが変わって” )で噴き出した。食事中には聴かないほうがいい。個人的に好きなのは “もうけもん” “忘れる” あたりだが、全曲すばらしい。2024年有数のアルバムだと思う。
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Kohei Shimizu 『Hypervoid』
2023年3月にsooogood!から改名して以来、Mashinomiとのコラボレーションで連続リリースしてきた配信シングル曲をまとめ、新作も4曲、うちコラボ2曲を収録。Mashinomiも優れたシンガーソングライターだが、今回は歌姫に専念している。よほどウマが合ったのだろうし、それも納得の快作だ。エレクトロニックをベースに、ファンク、ヒップホップ、ドラムンベース、ジャズなど多種多様なリズムが洪水のように押し寄せ、3分未満の曲ばかりであっという間に終わってしまう。まさにハイパーポップ……と思ったら、本人いわく再解釈だそうだ。Mashinomiのヴォーカルもウィスパーにエフェクト全開で、彼が提示する主題にふさわしく遠慮会釈なしのカワイイ大解放。ラストの “Cornflower” で聴かせるShimizu自身の歌声も魅力いっぱいだ。
XG “WOKE UP”
たまたまMVを見て「かっこよすぎて笑う」という体験を久しぶりにした。メイクもスタイリングも、CGがやかましい(いい意味で)演出も、歌詞の内容に沿っているのかも一貫したストーリーがあるのかもよくわからないが、とにかく最高に威勢がよくて爽快だし、英語のラップは発音もデリヴァリーも文句なし。Coconaが髪にバリカンを入れて坊主になるシーンの気合入りまくった表情にはうっとりしてしまう。素でおしゃべりする様子は普通にかわいらしいのだが、逆に言うと演じているからこそここまで徹底できる……と思えば、アイドル・グループという東アジア独自に発展した芸能フォーマットのひとつの到達点と言えるかもしれない。K-POPに学び、5年かけて彼女たちを育成したプロジェクト「XGALX」の運営はエイベックス。やるね。